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2014年11月 3日 (月)

累犯障害者、誰も書かない、知らなかった世界を書いた衝撃の本…山本譲司著

ここまで悲惨な境遇があるのか、と息をのむルポルタージュ

 
この夏の神戸の小学生の痛ましい事件に関してネットを回っていたら、犯人が知的障害者らしい(真偽は不明)ことでたどり着いた本。随分と前の本なのに、全く知らなかった。
 
Photo_2 小説かと思って借りたら、とんでもなかった。久しぶりに、衝撃的な感想を受けた。
まず作者の名前に引っかかっていた。本を読んで、アアあの、とおぼろげながらも思い出した。最近も政治と金の話題が再燃しているけれど、著者の山本譲司氏は秘書給与事件で服役し、今は作家になっていた。
 
小説でもこのテーマを書くのは及び腰になりそうだ。だから人々の目に触れることがない、閉ざされた世界を見たような気分になる。
 
レッサーパンダ帽子殺人事件についての内容は衝撃的だった。事件そのものではなく、犯人の生い立ちに驚く。   
犯人Yは知的障害者だった。それが分かるとマスコミは記事にしなくなったらしい。
 
 
父親はパチンコに明け暮れ、母がパートで働いて家計を支えた。Yは父親から暴行を受けていた。小学校と中学校は普通学校に通ったが成績はオール1(特別学級の方が良かったように思えるが)、頻繁にいじめにあい家に閉じこもりがちになる。高等養護学校へ進むが三年時、母の病死後は、家出や放蕩を繰り返す(父を避けるためのようだ)。
 
卒業後に就職するが、職場でもいじめにあい長続きはしなかった。
その後、軽犯罪等を犯すが知的障害のため保護観察対象になる。しかし観察と言っても形式的なもののようだ。この当たりが大きな問題のように思えた・・・。
 
父親と妹と三人暮らしが続くが、Yは時々放浪生活を繰り返していたとある。
 
妹は小さいころから家事を手伝い、母が亡き中学卒業後には進学することはできず、働いて家計を支えた。信じがたいことだが、21歳の若さでがんを発病しながらも働き、その収入に金銭感覚のない父親が寄生していたとある。
 
一家には障がい者手帳も無く、年金や医療費免除も生活保護も受けていない。制度すら知らずにいた。
 皮肉にもYの殺人事件を契機に、一家に転機が訪れる。支援グループの力で福祉の対象となり、父親も58歳にして初めて知的障害であったことが判明。つまり妹は小さいころから父と兄二人の障害者の生活を支えていたことになる。
 
「生きてきて楽しいと思ったことは一度もない」と語る余命いくばくもない彼女の夢は「病院では死にたくない、最後に一人暮らしがしてみたい」というものだった。
そんな彼女を共生舎という支援グループの人々が必死で支えた様が書いてある。ボランティア達と共に映画、花火大会、文化祭、ディズニーランドや温泉等々、日本中あちこちにでかけた。
 
「初めて本心から笑顔を見せた」ばかりか「もう少し生きてみたい」と望むようになったと支援者が語る。そんな彼女には、事件前に兄からの金を無心する電話を断ったことが引き金になったのでは、という悔恨がある。そして人生の最後に光が差し伸べられたことも、事件が契機になっていることへの(被害者への)負い目を感じていたとある。
このような過酷な境遇を背負って生きながら、なんと美しい心根を持っていたのかと敬服する。半年ほどして、希望通り一人暮らしの体験をしながら、皆に見守れて短い人生を終えた。
 
偶然のように殺された19歳の女学生、そして困窮した家族を支えたYの妹、二人の女性の死は悲しいことだが、その背景は障がい者への福祉の手が及ばないことにある。
 
本書には、健常な生活をしていると信じられないような他の事件や事例もたくさん取り上げられており、刑務所が唯一のセーフティネットになっている実態がある。福祉行政の不備と非難するのは簡単だが、根幹は自分もそうなのだが、社会が見て見ぬふりをしていることにあるように思えてならない。
 
この事件をネット検索すると、匿名を良いことに忌まわしいことを平気で書く人が多い(?)ことに暗澹とするが、Yの妹のケースにあるような行政よりもフットワークに優れた実名の市民ボランティア達が現実に活動しており、救われる気がした。
 
 
丁寧なルポルタージュの作品だと思う。山本氏の活動にも敬意を表したい。
 
 

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