« 友だち幻想でよみがえる記憶 | トップページ | コミュニケーションの阻害語について想うこと »

2017年8月21日 (月)

友だち幻想の普遍性で今の時代を考える

同調性と共存性

 著者の菅野氏は「人と人とのつながり」の常識を根本から見直したいという動機で書いたという。「メール即レスや既読スルー」のストレスに見られる友人関係に傷つきやすい中高生やその親への温かいアドバイスである。現場の大学生達の話だけでなく自らの子供の例も織り交ぜるなど、読者への親近感も伝わる。

 しかし本書の良さは世代を超えた普遍性にあると思う。

 まずは「日本人の親しさを求める方法が、いまだにムラ社会の伝統的方法を引きずり、現代に合わない」とし、「同質性を前提とする共同体作法から脱却せよ」と説く。「群れる」ことで不安から逃れる、という無意識行動が同調圧力を生んでいると警告する。

この現象は同質集団の学校で起きやすく、お互いが消耗するような友達作りから抜けるために、まずは距離感に敏感になることを勧める。

痛快なのは、「一年生になったら友達100人できるかな」という考え方を是とする日本の教育自体が子供への圧力となり、「みんな仲良くは幻想」だと喝破する。伝統や規律を重視する教育者とは大違い。

だから、無理に仲良くなる必要はない、気の合わない人でも、互いに傷つけずに、同じ空間と時間を共有できるような作法を身に付けよと諭す。どんなに親しくても他者だと意識したうえでの信頼感が大切であり、それが同調性に対する共存性だという。

やや物足りなかったこと。

一貫するのは人との距離が密接である必要はない、距離を取れというもの。しかしその人間関係論ならば導入部として「ヤマアラシのジレンマ」の方が分かりやすいはず。この寓話は一ページで説明ができ、子供でも理解できるから入れて欲しかったと思う。距離をとることが罪でも敵対でもないということを双方に理解させるために。

  さらに普遍性を求めるべく拡大解釈して振り返った。

 最近は、大震災や中韓との対立、オリンピックなどで、愛国性とか絆を重視することが同調圧力のように増えていると思う。一面では美しい面もあるが、それが高じると個人より全体の価値観を強いる雰囲気を作り出し窮屈になる。

 世界に蔓延しつつある移民排斥、○○ファースト、愛国主義のような現象は同調圧力の究極に見える。

 つまりは一般論として否定しにくいような理念を声高に叫ぶことで知らず知らずに群れを作らせ、それを利己的に利用しようとする人がいる。また、そのような人がやたらとルールを作りたがる事も、本書の「ルールのミニマム性」から想起した。

興奮しやすい今の世相を対人関係の理論から冷静に眺めることができる良い本だと思う。今は亡き著者としては想定外の読まれ方かもしれないが…

最近知ったが、Jリーグの村井チェアマンは応援の在り方でこう語ったという。

「スタジアムには郷土愛やチーム愛があふれている。だが、強い同質性や絆の裏側に、差別の芽が潜んでいるという自覚が必要だ」

« 友だち幻想でよみがえる記憶 | トップページ | コミュニケーションの阻害語について想うこと »

本・読書感想等」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 友だち幻想でよみがえる記憶 | トップページ | コミュニケーションの阻害語について想うこと »

かまちょ図書館

  • はるかさん
    上尾市民として市政とりわけ図書館問題を熱く語っています。ぜひ飛んでください。 かまってちょうだいの意ね。
無料ブログはココログ