九州大学 IMAQ-3回目の経営シミュレーション 講評
2007/7/21-22 実施の九州大学知財本部主催の経営シミュレーション(ビジネスゲーム)セミナーのご参加者へ
二日間の研修、お疲れ様でした。最後は熱心な株主総会となりました。やや荒れそうな雰囲気の会社もあったり、異議なし連発の前近代的「シャンシャン総会」もあったりで、学生の方には世の縮図をご覧になれましたね(笑い)。でも、時間が足りなくて、お話しすることができませんでしたので、このブログで少し補いたいと思います。
このブログの更新は正月以来という情けなさ。ちなみに毎日更新するのは坂本さんのブログ。そちらもどうぞ。研修風景が思い出されることでしょう。経営シュミレーションセミナー(初日編)
●全体について
中間では2社赤字、3社黒字、年間では全社が黒字でした。とにかく最後は良い業績で終りましたね。これは研修のシナリオからしたら上ぶれした例です。全社黒字は珍しい方ですが中身は散々でしたね(笑)。その理由は、下記の個別コメントでお楽しみに。
それから、今年はプレゼンの内容がよかったです。体裁とかではなく、教訓抽出の中身そのものです。書き方や口頭発表そのものはやや稚拙ですから、いろいろな機会のたびに各人が研鑽されてください。
●HITEM
売上は二番手グループ。デスクトップ集中戦略により、規模拡大を追う。下期から第三工場稼動して750台のキャパシティを誇るが、そこまで売れたためしなし。
R&D投資は伝統的になし。とてもハイテク業界に身をおく企業とは思えず、競争放棄。そのためか低価販売に依存し、当期利益率は1%台。つまりは100円売って1円の儲けに終始するも、そんなことにお構い無しの様子。材料在庫が0と「こんな製品でも何とか売れる」が役員人の自慢話。
生産力依存型企業であるがその割に合理化努力を怠る。低コスト追求もせず、売価上げもできなく、たたただ値段で勝負に陥る薄利の経営。積みあがるのは在庫の山。生産担当役員は在庫の下敷きになり労災申請か?。
この手の企業はマーケティング力も弱く、広宣は多く投入するも、頼みのセールス部隊は10名のまま、途中増員するもすぐに辞められる始末。ちなみにオレも辞めたいともらす役員もいたとか・・・。主戦場として大阪に出店するは、価格敏感な土地柄としては最適でも、1年前のモデルを新製品と吹聴しながら、ただただ安売りのチラシを撒き続けた、というイメージしかでない。
下期、鄭社長が借入申請において『元でカシテクレ』と言ったとか言わなかったかが、怪情報で流れる。総会では、楽天的にも4ライン目増設とアナウンスするが出席者は「開いた口がふさがらない」。衰退市場で差別化を怠りながら、熱病のように増設に走るは「自殺行為」との評がもっぱらだ。トヨタ看板方式で材料在庫ゼロを吹聴するが、手元のカネも27万円しかない。来期の手形決済が6千万弱が落せるかの瀬戸際なのに・・・遠い夢ばかり見る
鄭社長の「故郷に錦の御旗を飾る」は夢の夢か。
かような楽天的社風は、同社が業界の中で一番よい役員室を与えられた、という事情もあながち否定できまい。黒いソファーに身をうずめ、他の役員と同じ資料を持ちたがり、白黒よりもカラー印刷を好む。気分は大企業の重役なのだ!!
今後は、バッタダイレクト社との取引枠の拡大交渉が不可欠だろう。バッタ社の下請けとして安住の道を探るもよし。R&D投資の遅れを他社(サティ)に支援を求めるか(多分断られる、社風があわないもん)。第三ラインの売却、等が喫緊の課題であろう。オーテックとの合併交渉では主導権は取れない。役員のリストラも不可欠・・・。
経営の教訓、「役員の椅子は堅い方がイイ」。
●SATY WAVE
売上と利益は業界最下位。良く言えば堅実経営、悪く言えば消極経営。上期は高価販売により収益性高いが、在庫増が重荷。下期は在庫圧縮を最重要課題として、操業短縮による生産調整、低価格販売による販売台数の増加へと転じる。
伝統的に支出抑制型の経営を追求する。縮小市場ではローコストオペレーションは不可欠として、典型はコストダウンに強く数度の成功を収め、社長は「合理化の鬼」と社内で呼ばれる。R&D投資には積極的で低コスト品を高価格で売るを追及する。しかしながら、セールス増強なし、マスコミ業界の裏を知る役員の助言か?広宣もゼロ。上期の在庫調整に手間取り、生産と販売のバランスが崩れ、機会損失膨大。
資金繰り苦しいものの、金融機関に頭を下げるを良しとせず、自己資金にたより大切な玉(製品)をOEMで流し、機会損失の元を作る。温厚な同社は、HITEMとオーテックというなりふり鎌わない規模拡大型プレイヤーの波に埋もれそうだ。社名の由来はここにありか?・・・
今後、マーケティング力を再構築すれば、現在二番手であるMIT社(ただの借金漬け会社)を凌駕するは時間の問題。また規模拡大を目指す社風ではないから、デスク1ライン売却、ノートPC参入により、デスク市場を保険としながら新市場に参入するのも堅実経営にそった戦略であろう。それにはなんといても、経営陣によりガッツが欲しい。
経営の教訓 「理屈よりも商売ショウバイ」
●オーテック
デスクトップ集中、R&D投資先行でレベル3製品投入。生産3ライン750台体制を誇示。しかしながらトータルでは100円で1円の儲けに終る。名古屋地区に強み。セールス部隊も12名と最多。広宣も怠らず。R&D投資は熱病的に2単位400万円を継続投入しつつ他社の追随を許さずは見事。最新のレベル3は小型化されたデザインのため、同社社長が小脇に抱えるとノートPCのように見えるとか・・・
(かつてHPはR&Dが売上高比10%以下になるようでは「ハイテク業界において競争放棄である」と明言した事がある。)
レベル3の商品を210で売るために、高い限界利益率を確保し、最終月は13%の経常利益率を達成する。しかしながら台数は伸び悩み在庫は積みあがる。現在の販売力と総需要からしたら500台体制が最適であるが、750体制を維持する方策が見えない。
現在の総需要2000台と推定、各社のDESK供給力は2500台。バッタダイレクト社の買い付け数量上限は150×4で600台(今後は縮小見込み)。かろうじて均衡保つが、各社生産設備がフル稼働することはもはやあり得ない。需給は崩れた(よくある話し)。各社は設備稼働率欲しさに、低価販売突入は必死と見る。
それに対抗する差別化戦略が功を奏するものの、量産効果のみに依存してコストダウンに甘い。より低コスト化を追求して合理化投資が課題である。現市場で価格競争を仕掛けて、ライバルのHITEM社を駆逐し、衰退市場で寡占化してDESKの覇者となるのか、ノートPC市場に参入するかが分岐点となろう。
経営の教訓 「二回やれば学習効果が出る」
●MIT
一言でいえば、業界秩序(運営)を乱した会社。ほんと、まいった(笑)。初日は昨年の参加者波多江さんの飛び入りもあったが、功を奏したのか、こんな会社にしたのか知らないけれど・・・
売上トップ、利益は二番手。利益の太宗は8、9月のノートPCの販売が功を奏する。E―コンと同じく下期7月よりノートPC発売するも、1台47万円という山師的価格にて惨敗。下期の女子大生社長が借金をつぎ込んで広宣で「宝飾型ノートPC」と打つが浸透せず。あわてて値下げするも直販台数は伸びず、OEMに依存しての利益。
同社はDESKラインも温存してのノートPC参入のため、設備も大きく、その運転資金も多大。ゆえに借入依存。古参役員からは社長の椅子を約束に、若き社長は金融筋へ通う羽目に。しかも会社からの距離が近い事を良い事に、人目はばからず日参。当初は腕をとられて無理やり署名させられたが、借り癖がついてからは迷うことなく署名。「こんにな簡単に借りらるなんて!!」と言ったかは定かではないが、実家宅、母方実家まで無断で担保に入れる気前の良さ。当月1000万借りて、当月600万返すのをみて、何を思う?
法学出とは言うものの、何処の大学やら。去年はうららチャン、今年はともよチャンでした(講師の独り言)。
盗難にあうも好決算にて帳消し(しかしその後保険にも入らず、脇の甘さも温存)。二名増員するも退職者でて11名では二商品の販売戦線は手薄がち。
6ヶ月中4回借り入れ、ほとんどが運転資金のために露と消える。そもそもはDESK温存によるノートPC設備投資が資金繰りを狂わす。DESK1ライン売却が喫緊の課題。
R&D投資ゼロのため製品競争力も無く、DESKは低価販売に頼るのみ、169千円でも215台しか売れない。現金欲しさに、OEMに頼るがそれでも在庫は積みあがる。ノートPCも直販よりもOEM依存体質。回収条件も30%が同社の標準値。その結果、もらった手形は直に割引に出す、これぞ「自転車操業」の日々。
P/Lなどは見かけの業績にすぎず、生産力の半分程度しか直販できていない同社の将来には暗雲が垂れ込める。
B/Sの左を見よ。期末在庫65百万円は巨額。その処分に相当てを焼く事だろう。それでもフル生産を続けて仕掛品は1億円(DESK500、ノート200)だ。続いて、B/Sの右側を見よ。買掛金一億が控えるではないか。この支払到来の時までに棚卸資産が換金されているだろうか?。直販による換金であれば低価販売になろう、OEMもしかりだ。後、数ヶ月の命運かもしれない。「同社にクリスマスは来ない・・・・ドロボーがまたやって来る」。というのがその筋の噂である・・・
思い切ってDESK2ライン売却という大リストラ計画に着手、ノートPCでのR&D投資開始。ここに至らせた役員の早期退陣(互いに見合う顔と顔)、固定客作りの店舗投資が不可欠となろう。在庫処分の助言にはSATYとの業務提携も一考か?
ちなみに、融資行は同社が倒れると不良債権化するので、地獄まで付き合わざるを得ない。トホホ・・・、そこまで読んでか、同社と銀行は一蓮托生の運命へ。
経営の教訓 「一度借りると借り癖がつく」、「借りた金は返さなくてもいい」、「二兎を追うものは一兎もえず」・・・好きなのをお一つどうぞ
●E-コンピュータ
売上は二番手なるも利益でダントツ。初の配当も実施。業界のリーダー企業となる。
粗利37%は高価格品の成果。営業利益率は10%を超すと優良企業だが、その上を行く数字を達成。同社の今日までは起承転結の歴史である。何よりも、リスク覚悟でDESK2ラインを早々に売却してノートPC市場へ進出したことが功を奏した。売却により大きな特損を上期に計上し、一時は危ぶまれたが、ノートPCの収益で大きく埋め合わせる。R&D投資も積極で、来月にはレベル3を投入で年末商戦に備え十分だ。ライバル不在の中での独占的な発売になる。粗利率54%はまるでインテルと同じ。
初配当5000円、来期納税は2200万円なり。もう少し、ゆっくりと配当や準備金など、いわゆる剰余金の処分について学習したかったですね。でも専門的になるので関心のある方はテキストをご覧下さい。
オーテックまたはSATYのノートPCへの参入を常に警戒せよ。R&D投資で徹底的な差別化と各地に店舗投資で固定客つくりと信用を確立せよ。九州地区にも再参入して販売の安定化を要検討。常にマーケットの変化に気を配り、市場調査を怠るな。愚かな二番手よりも、賢い三番手に注意せよ。
非の打ち所がない同社だが、ほころびがあるとすれば、それは役員の慢心から生まれるだろう。
経営の教訓 「リスクとリターンは紙一重」、「計算ずくでリスクを冒せ」
長くなりましたが、いかがでしょうか。経験した人しか分からない内容ですし、「笑うこと」もできませんね。では皆様ごきげんよう。貴重な二日間となれば幸いです。
ホームページ作ったら私の経営シミュレーション(ビジネスゲーム)研修とリンクしましょうね。
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