映画 忘れられた人々 (どうしようもない貧困と罪悪の行方)
忘れられた人々 ルイス・ブニュエル監督。1950年。
なんとなくタイトルが好みだったので、図書館で借りてきた、全く知らないモノクロ映画。
メキシコのスラム街を舞台にした物語。冒頭でいくつかのメッセージがある。
「この映画は事実に基づき、登場人物も実在する」。
「この映画は事実を見せるため、楽観的には制作されず」。
そして「問題の解決には社会の進歩に委ねられている」の一文が出たとき、現在の日本の政治や社会のありようをいわれているような気を一瞬覚えて、本編へと見入った。
両親すら分からない不良。間引なのだろうか、父に置き去りにされた幼い少年。
「少年院(映画では感化院とあったが・・・)へ行ってしまえ」と言わんかなの母親。
その母からどんなに疎まれても母の愛情を渇望する不良少年。
盲人や不具者への襲撃。かっぱらい。
喧嘩と殺人。情欲。動物虐待。飲んだくれの父。復讐。恐怖と沈黙。弱者ながらの欲望。
重苦しい内容、ちっとも良い方向へ流れない。救いようがないくらいの話だ。
そんな甘い話になる訳ない。これが現実だと、言わんばかり。
しいて上げれば、感化院の所長の「あの子には信頼と愛情が必要だ」、「子供よりも貧乏を閉じ込められたなら」という言葉。
所長はペドロを信頼し、大金の50ペソを渡して、門の外へタバコを買いに行かせた。そこから、更生の道が開けるのかと思いきや、いやそう期待したのだが、これでもか、これでもか、という奈落の現実へと展開する。
あらためて冒頭のメッセージが重くのしかかる。
貧困が諸悪の根源といえば、それまでだが、どうもそうではないように見えた。
時代背景が違つても現代社会とかぶる所が多い。人間の暗部をあぶり出しているからだろうと思う。
小説にしていたら、もっと凄いインパクトを与えたのではないだろうか、とも思う。
忘れられない映画を観た。
ネットで検索するとこの監督はユニークで鋭い作品を作っているようだ。
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