色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年。少し退屈なサスペンス風小説かも
村上春樹の本を初めて読んだ。不思議な長いタイトルの本だった
文章みたいな長いタイトルが不思議だったけれど、少し読み進めると「色彩を持たない」とか「多崎つくる」(ひらがな名)、「巡礼の年」などの言葉の意味が分かってくる。
もっと抽象的な深さを予想をしていたけれど、人名に色を冠したり、自縛からの謎解きの旅を巡礼と模したのだと思うと、即物的な感じもする。
修辞が多くて読むのが退屈するのかなと、勝手な思い込みを抱いていたけど、思ったほどではない。 心の内面をああでもないこうでもない、というか都会的な言葉で形容する文章が多い。これが村上春樹の特徴なのだろうか。
でも総じて、読みやすかった本だ。あまり難解な言葉遣いは無い。
(サイコ)サスペンス的なあるいはミステリーというべきなのか、そんな設定になっていたので、少し興味を持ちながらつまりは退屈することなく読むことはできる。でもさすがに本格的サスペンス小説ではないから、さしてドキドキするわけではない。
物語の核心となる原因は意外な理由だったけれど、その背景に関しては記述が少ないため物足りなくもあった。 特に途中に出てくる死神話しとの接点がもの足りない。
個人的には全ての行為は主人公の中に隠れた二重人格的な側面に帰結があるのかと、期待していた・・・
村上春樹の本は初めて読んだ。ベストセラー作家ということで有名だけれど、けっこう性的描写も多いなー、と意外な発見だった。
今の時代背景の描写も多く地名やモノもリアルなのだけれど、人物にリアリティを感じるわけではなく、つまりは色彩が有ろうが無かろうが「人の匂い」がない。むしろ妄想に付き合うような話だったと思う。
色彩が無いのではなく、現実の人間が放つ匂いがないのだ。つまり人間臭さ。それは著者の感性に合わないのだろうけれど、「匂いを持たない多崎つくると、彼の妄想の旅」と形容するのは皮肉すぎるかもしれないな・・・
二度読みたいという本ではなかった。図書館のお勧めコーナーに置いてあったけれど、なんとなく著者のネームバリューで売れた本のような気がする。
先日読んだ、同じ村上でも村上龍の「55歳のハローライフ」のほうが小説として巧みで面白い。
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