70歳死亡法案可決、姨捨山を想起するタイトルの割に平板なホームドラマ
「70歳死亡法案、可決」 垣谷 美雨(幻冬舎)、は凄いタイトルだ
だから手に取ってしまった人も多いのじゃないかと思う。
帯には介護疲れした嫁の「2年後、やっとお義母さんが死んでくれる」とある。最近似たようなフレーズを見たばかり。「母の遺産」では「ママ、いったいいつになったら死んでくれるの」というがあった。
世の中残酷になったもんだ・・・

この本は、少子高齢化の解決策として荒唐無稽な法案を前提に、ある一家の物語として描かれている。
しかし登場人物があまりにもステレタイプである。 我儘し放題の姑、従順な嫁と無責任な夫、引きこもりの息子、遺産にしか関心のない身内等々。
凄くシリアスなテーマなのだけれど、タイトルの荒唐無稽さのまま中身までもがコメディドラマみたいな感じに仕上がっているのは残念。介護のことが書かれているけれど、リアリティが全くない。
老親の面倒に窮する果てに死を問うことは、姨捨山伝説や楢山節考などでつまり昔からあるわけだけれど、どちらにも滑稽さはない。辛い話だけれどヒューマニズムに溢れている。
姨捨山伝説を現代版にしたつもりじゃないと思うけれど、本書から受ける軽さは何だろうか。まさか、重くしたら二番煎じで読まれない、軽くしないと今日の問題が共有化されないという事なのだろうか。 毒づくくらいの風刺でこの問題を問うならましだけれど、既視感のあるようなホームドラマでは萎えてしまう。
先日読んだ、「介護現場は、なぜ辛いのか」の本のがよっぽど良い。
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