合格者数だけ開示する高校は粉飾決算みたいだね
(1) 名目と実質の二つの数字の乖離
(2) 親のスネを削る複数受験の流行
(3) 是正されない理由は何だろう
(4) 誰のための開示か
(5)その他 高校のWEBページタイトルの嘘と年表現について
例えば2014年春、埼玉県のU高校では早稲田大学へ136人 (延べ人数) 合格し、39人が進学です。三分の一。双璧をなすK高校では124名合格ですが進学数は開示されていません。 これから分かるように、「合格者数」とはあまり意味を持たない数字です。
(1) 名目と実質の二つの数字の乖離
高校における大学への進路実績は重要です。高校のアウトプット(成果)の一つであり、高校受験生(中学生)や親が注視する有力な材料です。しかし、多くの高校はホームページで名目の合格者数のみを公表しています。
本当は大学への「進学者数」も開示すべきです。進学数は内部資料として校内では開示されており、問い合わせれば答えてくれるかもしれません。 ところで公開している大学合格者数の値は、その縦合計を見ればわかるように在籍人数をはるかに超えるものです。
進学校ともなれば三年生400人の高校が800件、1,000件の合格数をたたき出すのは珍しくありません。
膨れ上がった数字を我校の受験戦争における「戦果」です、とばかりに告知することに何の意味があるのでしょうか。あるとすれば、ただ一つ。
『良く見せたい』 という下心!?
実態よりも良く見せることを企業では粉飾といいます。データの読み手をミスリードさせるために、「教育者」としてはなんとも不誠実であり、作為的です。合格数と進学数の両方を併記して初めて、正しい報告になります。
ようは「正直であれ」と言いたい。なにせ高校の校長さんですから・・・
(2) 親のスネを削る複数受験の流行
現役受験生と浪人生(過年度生)は別建て表示ですが、浪人生の合格数も実人数を超す値になりがちです(まして現浪区別無しの場合は要注意)。 難関大学志向の強い高校ほど二つの数字の乖離が激しくなります。
その原因は多分・・・
①一人で複数大学を受験して複数合格する。現役合格を重視する高校(女子高?)は、多く受けさせる進路指導をしてないだろうか。これは大学/高校の暗黙のWin-Win関係の成果かもしれない。※
③一つの大学でも複数学部に合格できる仕組み(大学側の受験商法)も合格数を増やす。
④合格数には一般入試以外の推薦やAO入試も含まれる。
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※
親は迷惑この上ない敗者だ。
大学側の受験商法による全学シケン、学部シケン、地域シケンとか、果ては複数学部出願にいたっては何(学部)を学びたいのかではなく、入学できさえすればいい、という安易さを助長していると思う。無垢な子供が騙され、「合格可能性が高まる」「皆がそうする」とか「志望校を書く行が9行あるから」というわけ分からない理由等で平均5~7校口位は受けるみたいだ。
まるで夜店のクジを、当たりが出るまでねだる子供と同じ。
しかし一口35000円+交通費は高額クジ!。たまったモノじゃない。 そもそも厳冬の朝、都市圏の満員電車を乗り継ぎ三校目まで受けたらヘトヘトになり、「アァモウ行くのイヤ!#&8\%’LD#$…」。「せっかく払ったんだから行って来い・・・」という家庭劇が繰り広げられる。願わくば、一人三回まで受験可、それを超す分は入学後にバイトで返済、というルールを提案したい・・・
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ようするに合格者数とは高校側の進路指導や本人の能天気なお試し受験、見栄、家計の余裕度、大学側の受験マーケティング策(日程含む)と受験料、そして決定的なのは入学歩留まりを考慮して多めに合格者数を出す、等々で決まる『恣意的』なカズなのです。
反して、進学実績は操作できない唯一の数字です。
進学校ほど私立大学受験での乖離度が大きく、MARCHレベルで100人受かって10人しか入学しないという例は珍しくないようです。大学から見て、入学者数÷合格者数を入学歩留まり率と呼びます。 第一志望ではない合格者が多いと歩留まりが低くなります。これは階層社会である限り仕方ないし、私大経営の難しさでもあり、リスクとうま味の分岐点でしょう。
ならば学生から見た反対の指標、1-入学歩留まり率を「袖振り率」と名付けてみよう(いい名前でしょう。ネーミング著作者はワタシデス)。
ところで冒頭の数字は
埼玉県立浦和高校の例(国立優先なので極端な数字)ですが、他にも浦和一女、春日部高校等は合格数と進学数の両方を開示しています。正直な姿勢だと感心しますが、自信の表れとか進学上位高だから両数開示、というわけでもなさそうです・・・。
(蛇足ながら同校のデータを見て、浪人生が出す実績は果たして高校の成果と言えるのだろうか。予備校に通っていたら一浪は1/2人、二浪は1/3人に換算評価するのが正しいと思うのですが・・・
)。
いずれにしても、せめて公立高校は県の高校教育指導課が一律に「正直な数字」の開示を指導すべきです。「我が校は進路指導に熱心です」と言いながら、正味の進学実績を報告しないのは自己矛盾です。
私立高校だって助成金と言う名の税金を受けとる以上は正直開示が義務です。そうすれば、「有名大学○○名合格」なんて駅前の塾みたいな品の無い広報が少しは減るでしょう。
(3) 是正されない理由は何だろう
当事者が悪習を改めない表向きの理由は何だろう。
想像するに「他校がやっている」、「長年の慣習」、「二浪三浪の生徒との連絡はとれないから」等々、つまりは「やらないで済む理由」が上げられます。最近なら「個人名の特定の恐れがあります」が常套句でしょうか。
或いは「かえって受験競争を煽る」と言わないだろうか(水ぶくれした合格数の方が扇動的ですが)。まさかとは思うけど、「下位高校さんが不利になるから・・・」という理由なら護送船団方式です。
(4) 誰のための開示か
言うまでもないけど進学実績のみが高校のアウトプットではありません。しかし、それを声高に言う高校でも次の指標を公表していません (実際は何処も公表してないかも・・・
)。
卒業三年生の皆勤者数と皆勤率(皆勤者数÷卒業生数)を開示してはいかがか。卒業式で名前を呼ばれて表彰されるアレです。
皆勤率とは、健康で、楽しく、真面目に、三年間通えたことを示す数字だと思います。その値の高低は学校と生徒の関係性の強さを三年間かけて醸成したものであり、非常に重い意味を持つと思います。 中学生にとって学校選びの良い判断材料になるでしょう。
様々な角度から実態を正しく伝え、社会の視線にさらされることは学校運営の自律という点でも役立つはずです。しかし、開示に消極的な人はいつもマイナス材料を探そうとするものです・・・
(5)その他 高校のWEBページタイトルの嘘と年表現について
①高校の進路実績とか進学実績というタイトルは正しくない。合格数のみはたんなる受験実績であるから嘘タイトル。進路とか進学というなら正味の進学人数を表示すべきですが、それができないならせめてタイトル位直しなさい、という指摘です。
こんな悪習が治らないのは単なる言葉の間違いではなく、自己矛盾を抱えていることの表れでしょう。
②「平成25年度の進学実績・・・」という場合は平成26年春の進学実績を示します。年度主義の表現ですが、日常的に分かりやすい「平成26年春…」というタイトルもあります。前者の例は右横に ( 2014/4/10 集計)と書いておくと見る人の勘違いが減ります。
開示データは3年ぽっちではなく最低5年間は開示すべきでしょう。長い時系列の方が学校の姿勢が見えますし、そもそも紙と違ってWebのスペースに限界はありません。
2015/6 アクセス多いため見出し追加と一部修正
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