空を飛ぶ夢をもう一度、イッセー尾形が熱演するも小説のがイイね
「55歳からのハローライフ」NHKテレビの放送順は悠々自適層、中間層、困窮層の順だったが、一番心に染みるのは「空を飛ぶ夢をもう一度」かな
イッセー尾形は主人公・因藤茂雄を好演していた。腰痛持ちの仕草、それが適切なのかは分からないけれど工夫していたようだ。
もう一人の重要人物、中学時代の友人・福田貞夫役の火野正平は悪くは無いけれど、きれいに手入れされた髭が目立つだけに違和感あった。なぜ無精ひげにしなかったのだろうか。
ちょうど、テレビを見る前に村上龍の原作「55歳からのハローライフ」の本話をもう一度読み直してみた。
過剰な形容詞や比喩も少なくシンプルな文体で、話し言葉も饒舌ではない。全体にリアルだから、取材もしっかりやって書いていると思う。読み易い。
読みどころは、経済的に困窮している主人公が腰痛をこらえながらも、死に瀕した友人を抱えて、無理やり山谷を脱出するシーンであり、タクシーと高速バスを乗り継ぎながら別れた母の元へ連れて行く道中の様にあると思う。 リアルな描写からは周囲の冷たい視線と悪臭が漂うばかりである。
原作と違うと感じたのは、因頭の妻は冷たくキツイ性格に演じられていること。原作では、友人を送った後、夜遅く帰宅して一切を妻に話したら、遅い夕食を作りながら「いいことをしたね」とほほ笑んだとある。
経済的に余裕のない家庭ながらも良き夫婦として描かれており、他の作品の設定とは異なる。この状況で夫婦関係まで冷たいようでは、逃げ場がないが、この点はテレビ作品の方は、むしろリアルにしたという事なのだろうか。
毎度の如く、前作の主人公が登場した。今回の登場シーンは予想を外れた。チョイ役ではなくトラベルヘルパーの小林薫が演じたのはバスの中での意味のある役柄だった。たぶん、失恋の後に故郷へ向かう旅のさなか、という設定かな。やりすぎ感あるので、個人的には無用な演出と感じる。前にも書いたけど、偶然なのか必然なのかまで掘り下げたら凄いとおもうけれどね。
村上龍は「あとがき」にこう記している。
・・・五人の主人公は、「悠々自適層」「中間層」「困窮層」、それらを代表する人物を設定した。だが、全ての層に共通することもある。それは、その人物がそれまでの人生で、誰と、どんな信頼関係を築いてきたかということだ。・・・
最後に思う。
できれば、今回の「空を飛ぶ夢をもう一度」は原作を二回に分けてドラマ化してほしかったな。もう少し二人の心のうちをゆっくり丁寧に描いても良かったように思う。
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