ポーターの5つの競争要因とビジネスゲームの経営モデル
新しいモノばかり追い求める人は、ポーターの競争戦略はもはや古典的と言うが、決してそうではないと思う。現代の産業構造にも適応できるし、普遍性も高くて分かりやすいものだと思う。
ここではポーターの5つの競争要因を、経営シミュレーション(ビジネスゲーム)モデルでどのように活用できるかについて簡単に述べてみる。例はパソコン製造販売業モデルのPCMakerである。
①競合業者間の敵対関係
これは競合会社数によって作られる。会社数はコースつまり研修日数とレベルにより異なるが、例えば三社程度では競合度は非常に薄くなり、6社くらいだと市場のバッティングが頻発して激しくなる。つまりは似たような規模のライバルが多いと競争は激しくなる。また同じ業界なので固定費や在庫構造も似ている。固定費が高いと価格競争が起きやすい。
②新規参入の脅威
当該業界に外部から企業が参入する問題である。例えば、カメラ市場が銀塩のアナログからデジタルに替わって電子機器メーカーが参入したように技術革新が参入障壁を下げる例がある。最近では自動車の自動運転技術にグーグルが先陣を切って参入した例がある。 しかし、産業の変遷や衰退をテーマにするビジネスゲームモデルはあまり聞いたことが無い。
正当な「新規参入の脅威」機能ではないが、PCMakerを例にすると、デスクトップPC市場とノートPC市場の二つがあり、片方のみを扱う創業段階から、他のもう一つの市場へ参入するには設備投資という大きな資金障壁を設けている。それを自己資金で調達するか外部資金とするかは大きな経営判断になる。
③代替製品(サービス)の脅威
これについても古今のビジネスゲームモデルでは採用されていないと思う。例えば現実のパソコン市場を例にすれば、デスクトップPC市場に対して、ノートPCは代替え製品として地位を伸ばしてきた。ただし完全に置き換えるわけではない。今日ではノートPCに対してタブレットが代替的な位置にあるが、メーカーからすれば生産技術的には転用できるのでデスクトップPCからノートPCへの変化と同じく補完的あるいは新市場と言う位置づけになる。むしろ、スマートフォンでPCの多くの機能を代用させる動きは「代替え製品の脅威」となりうるだろう。
④売り手の交渉力
売り手とはサプライヤーのこと。パソコン市場ではインテルCPUやマイクロソフトOSの支配力が強く、その基幹部品がコストに占める比率が高く、付加価値が小さい商材となっているために薄利なビジネスである。そのために先進国では殆ど製造していない。
これを背景にしてPCMakerでは部材の仕入量が大口購入を促す仕組みにしてロット別に設定されている。つまりサプライヤーの立場を強くしてある。コスト面からは小ロット生産では不利になる。なお他のモデル(COST)ではサプライヤーを選べる。
⑤買い手の交渉力
顧客と自社との関係である。交渉力の弱い客とは個人の消費者、交渉力の強いのは法人客である。つまりゲームモデルにおいても二つの客層がいることが望ましいが、これはマーケットの定義上かなり難しいことになる。PCMakerでは全て法人客だが、自由競争市場の客層とOEMという解放的ではない顧客企業を存在させている。後者のOEM顧客は交渉力が強い設定にしてある。
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