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2014年10月23日 (木)

図書館を評価するモノサシと埼玉県7市の図書館比較 -8

広域利用の上尾市、さいたま市、桶川市、伊奈町、蓮田市のデータ。おまけに草加市と川口市
 
2016/8 絵文字の削除と文短縮化。
 
既出(前記事等)もあるが、まとめた。 データは各市の図書館要覧か市統計によるが、不明な値も多く、埼玉県図書館協会の統計(H25、内容はH24,年度)も引用。草加市は上尾市と人口規模が似ているため、川口市は駅前に大型図書館があるために採用。
 
 データの転記ミスがあればご容赦願いたい。読み易さを考慮して一部は表示形式を変えた。 貸出統計に限定し、閲覧スペースや椅子、机の数は把握していない。終了時刻、休みの有無、立地アクセス性は末尾の別表に少しふれた。
 
個人的には、勉強できるスペースと時間は貸出と並んで図書館の重要な使命と思う。自宅に学習環境を持てない人に、場と時間を提供できるのは図書館しかないはず。社会人や中・高校生が入り混じって学習している光景こそ図書館ならではの美学と思う。
 
各要覧は前年度の値であるから実質表記で「H25」と書いた。「H25/4/1~H26/3/31」の意味。金額値は予算額であり一般に翌年度の値。
 
    上尾市 さいたま市 桶川市 伊奈町 蓮田市 (草加市) (川口市)
内容の対象年度   H25 H25 H24 H25 H25 H24 H24
人口 ①   228,176 1,255,743 75,447 43,897 62,948 243,978 581,170
人口日付   26/4/1 26/4/1 25/4/1 26/4/1 26/4/1 25/4/1 25/4/1
登録者数(名目) ②   106,457 626,048 42,018 23,849 43,762 163,856 275,916
実質登録者数U ③ 37,260 237,353 14,706 8,347 15,317 57,350 90,598
実質登録率  ④ ③/① (16%) 19% (19%) (19%) (24%) (23%) 16%
(名目登録率)  ②/① 44% 50% 56% 54% 70% 67% 47%
蔵書数(千冊) ⑤   589 3,583 228 131 253 609 1,237
貸出数(千冊) ⑥   1,346 10,185 346 243 426 1,350 3,439
貸出利用人数(千人) ⑦   418 2,810 115 58 98 ×統計無し 1,070
蔵書回転率 ⑧ ⑥/⑤ 2.3 2.8 1.5 1.9 1.7 2.2 2.8
利用者回転率 ⑨ ⑦/⑤ 0.7 0.8 0.5 0.4 0.4   0.9
一人当たり冊数 ⑪ ⑥/③ 36.1 42.9 23.5 29.1 27.8 23.5 38.0
人口一人当たり貸出数 ⑫ ⑥/① 5.9 8.1 4.6 5.5 6.8 5.5 5.9
人口一人当たり蔵書数 ⑬ ⑤/① 2.6 2.9 3.0 3.0 4.0 2.5 2.1
貸出人口回転率 ⑭ ⑦/① 1.8 2.2 1.5 1.3 1.6   1.8
一人当り利用回数R ⑮ ⑦/③ 11.2回 11.8回 7.9回 7.0回 6.4回   11.8回
一回当たり貸出数B ⑯ ⑥/⑦ 3.2 3.6 3.0 4.2 4.3   3.2
不明書籍と被害額⑰              

行政コスト関係
  上尾  さいたま 桶川 伊奈 蓮田 草加 川口
図書資料費(千円) ⑱   37,936 216,142   10,343   31,247 131,377
人口一人当たり資料費 ⑲ ⑰/① 166円 172円   236円   128円 226円
図書館費(千円) ⑳ 372,246 2,634,264 106,085 66,112 76,502 183,819 682,873
一冊当たり貸出コスト 21 ⑲/⑦ 277円 259円 307円 273円 180円 136円 199円
人口一人当たり図書館費 22 参考 1,631円 2,098円 1,406円 1,506 1,215円 753円 1,175円
その他  
図書館の数   9 24 3 1+移動 1 1 9
延床面積m2   4,696 36,366 1,378 808 3,028 4,800 16,439
単位面積当たり貸出数 23 ⑥/面 287 280 251 300 141 281 209
要覧のWeb開示とレベル   ×困ります ○内容優る ×無いかも ×ないよ △統計有る ○もう一歩 ◎内容優る
来館者数(千人) a 693 7,104 115 未測定 223 639 2,145
来館者人口回転率 a/① 3.0 5.7 1.5   3.5 2.6  
総予約冊数(千冊)   193 2,607       統計無 586
内、Web予約比率   68% 77%         85%
 
 
②登録者数(名目)
 実質的な登録者数を開示しているのはさいたま市と川口市であるから、他市は名目数字として扱った。
 
③実質登録者数 U
 年1回以上借りた人という定義の人数である。実利用者数とも言う。図書館の広域利用性からして近隣市町村の人が含まれる。 実質登録者数はさいたま市では名目比0.38となるから、それよりやや低めの0.35を他市に乗じて推計した(同市は図書館利用の優良都市であるため)。
 
④登録率=実質登録者数÷人口
 推計値は( )付きとした。名目登録者数での登録率は下段。大事なのは名目値と実質値の大きなかい離があるから、名目ベース(あるいは人口)で図書館の実態を云々することは間違いを通り越して、愚かとも言える。
 
 上尾市は名目44%→実質推計16%に落ちる!。信じがたいが、YA層の登録率の高さと貸出数の乖離等(下記事)を見ればうなづける。 つまり23万人いても、一年に一回図書館で借りる人は2割以下。これを酷いとは言えない、他市も似たり寄ったりである。
 図書環境に優れるさいたま市でさえ2割に届かず、駅前大図書館を擁する川口市でも16%である。
 
 
 
⑤蔵書数・・・冊数表示にした 
 本や雑誌、CD等の総数のこと。単位は「点数」が適切だがここでは冊数とした。約59万冊、毎年微増傾向にあり本館が57%所有。現在の図書館は広域利用形態へと進化し、広域4市1町の蔵書合計は480万冊と巨大図書館である。
IT化が進み、図書情報を市の図書検索システムや外部(アマゾン等)を使って事前に得られやすいため、1館で大量に持つという発想は古いと思う。
 
⑥貸出数
 年間の貸出冊数のこと。次の利用人数と共に重要である。多いほど良いが他の項目対比で見る必要もある。
 
⑦貸出利用人数
 年間の総利用者数である。418千人。一人で二回借りれば2とカウントする。個人的には冊数よりもこの人数を重視したい。人口より少ないと、あまり本を読まない市民という事になる…
 
⑧蔵書回転率=貸出利用数÷蔵書数
 図書館の利用度合いを示す代表的指標。2.3回。全蔵書が一年間で2.3回外へ貸し出され戻ってきたという意味。経営の棚卸資産回転率と同じ概念。経営では分母の棚卸資産を少なくすることを目指すが、図書館ではそうはいかない。
 
 人気本を置き、不人気本を除籍すれば蔵書回転率は向上する。しかし年に一回しか借りられなくても希少な本があるのが公共図書館である。分子の貸出利用数の増加を通してのみ回転率を向上させる。時系列での向上が大切だが、年0.1上げるだけでも大変であり、テコでも動かない値だ。
 
 下表を見ると、蔵書回転率は豊かさのバロメーターかもしれない。
参考  市の合計   町村の合計  埼玉県全体   政令都市平均 
 蔵書数(千冊)  19,552 2,568 22,121 2,260
貸出数(千冊) 38,701 3,136 41,837 6,145
蔵書回転率 2.0 1.2 1.9 2.7
 引用: 埼玉県データは埼玉県図書館協会統計(H25)、政令市はさいたま市図書館要覧(H26)
 
⑨利用者回転率=貸出利用者数÷蔵書数
0.7。蔵書1冊に対して何人が借りたか(人気度)を示すオリジナルな指標。⑧と並び蔵書の利用度を表す。 事例-6を参照
 
⑪一人当たり貸出数=貸出利用冊数÷実質登録人数
本を借りる人は年間何冊借りているのかを示す。年36冊/人、月3冊。実質登録者数で計算する。これより図書館利用者とはリピーターなのだという事がよく分かる。
 
⑫人口一人当たり貸出数
⑬人口一人当たり蔵書数
「人口一人当たり○○」という表現は行政が広報的に多用する表現。他市との比較に使われやすいが、参考程度にした。分子と分母の関連性が希薄だと思うから。
 
⑭貸出人口回転率=貸出利用人数÷人口
値が1は、全市民が1回借りたことを意味する。1.8回となった。図書館の人口利用度(浸透度)を示すかな、と思って作ったオリジナル指標。他市との比較に使えるかと思ったが良くわからない・・・。
 
⑮一人当たり利用回数(R)=貸出利用人数÷実質登録人数
 利用者が一年に何回借りに来ているかを示す。11.2回。月に1回来ている感じ。
 
⑯一回当たり貸出数(B)=貸出数÷貸出利用人数
 一回借りる時の平均冊数。3.2冊。児童は多く、大人は少ないはず。
  (注) U×R×B =貸出数になる ・・・(別記事: 貸出数のURB 3要素
   R×Bは⑪(年間冊数/人)と同じである。 
 
⑰不明・毀損書籍数と被害額、延滞率等
 盗難や毀損して利用できなくなった損害のこと。先日、横浜市で毎年19,000点不明というニュースが出ていた。コンピュータ管理しているから棚卸で分かるはず。数量だけでなく、購入額での損失額も開示することで被害額という具体性をおびる。その街の民度を物語るが、さすがに何処も開示していない・・・
 (追記 上尾市H26年度中の不明資料数1,000冊超す/第二次図書館計画より)
 
 他に、返却遅れの延滞率も必要だ。図書館運営側の管理指標になるだろう。
 
●行政コスト関係
 
⑱図書資料費(千円)
 本や資料等の購入予算額。上尾市は37百万円台で推移。市により費用定義がやや異なるようだ。
 
⑲一人当たり資料費(円)=図書資料費÷人口
 市民一人当たりの本の購入代金。このような金額÷人口は、⑫⑬のようによくある表現だが違和感がある。 答えが少額になるから負担感を希薄化し、政治・行政に「マァその程度ならイイカ」という「お任せ」を生みやすい (例 政党交付金250円)。
赤ん坊は本を買わないし高齢者もあまり買わない。納税者数または世帯数で割った方がリアルだろう。
 
⑲図書館費(千円)
 上尾市の例は人件費や減価償却費を含むが、他市はよく分からない。
 
21 一冊当たり貸出コスト=図書館費÷貸出利用数 
 本一冊貸すための公的費用を示す。280円。 「無料のサービスなどあり得ない」ということを示すのが本指標の意味。
 図書館費には図書購入費も含むが、ほぼ固定費的であるため、貸出数が増えるほど1冊当たりコストは低下しコストパフォーマンス(CP)が向上する。
 貸し手(行政)はCP向上に努めるために時系列でこの指標を使い、借り手(市民)はレンタル代金が280円/冊、という意外と思い税負担を知る必要がある。
 
22 人口一人当たり図書館費
 図書館費が各市とも同じ基準ではなさそうなので参考にもならない。 
  
●その他の指標
 
さいたま市は浦和に元々図書館が多く、そこに合併効果で積みあがったと思う(関連: 末尾の日経記事)。 面積は、新しい施設ほど滞在型の広い作りで、会議室やPC環境などの多目的スペースが含まれるため、数字だけでの比較はムリ。
 
23 単位面積当たり貸出数
 
小売業の「坪当たり売上高」に相当するが、上記の問題があり参考値とする。とはいえ、上尾市と川口市を比べると一人当りの指標では遜色ないのに、面積効率に差がある。川口市の巨大新館が閲覧スペースを広くとっていることが伺える。ないモノをねだっても仕方ない、当市民は狭いながらも良く借りていると言えよう。
 
単純に、「面積÷人口」の上尾市を1とした倍率は、1.4、 0.9、 0.9、 2.3、 1、1.9 と並ぶ。
 
Web予約比率=Web予約冊数÷全予約冊数
 
Web予約には館内端末OPACも含むが、外部Webが圧倒的数を占める。思ったより高い比率であり、絶対数はまだまだ伸びると思う。川口市のWeb予約数43万冊は、蓮田市の全数を超え、さいたま市では貸出数の26%が予約である。
 
Web
 
図書館が、書庫=倉庫、窓口=受取場所 という機能に変りつつある。図書館のAmazon化である。
 
 
●駅前大型図書館と分館のアクセス性
 
 マクロでは東京一極集中化しているが、郊外都市では中心市街地(関東は基本的に駅前)への社会資本と人口の集積傾向が強い。コンパクトシティ構想といわれる。
 
 アクセスの良い場所の図書館は閉館時刻を遅くして社会人層に応えられる。休日回数も減らさざるを得ない。結果、利用者が増えて稼働率が高く、投資効果に優れるのだろう。文教に限らず、潜在的ニーズが高ければ、箱モノ投資でも歓迎されることになる。
だが、利便性が高いことの裏返しは目的外利用者が増えるのも悩み。ということか知らないが、予約席制もある。
 
 反面、広くサービスをと言う公共視点では、分館による地域アクセス性も大切。交通費までかけて中心部の図書館へ行く、というのは辛い。特に子供は通いにくい。人口分布やエリアの広さを考慮した分館が必要だと思うので、分館の多い上尾の現状は悪くないと思う。新図書館よりも北上尾駅前分館があってもよいと思う。
 
2 
●その他の比較と要覧への感想
 
  上尾市 さいたま市 桶川市 伊奈町 蓮田市 (草加市) (川口市)
駅前大型館の有無 東口
駅前館
さいたま中央図書館

賃貸ではなく市所有施設(三フロアー使用分)
駅西口図書館     草加市中央図書館 中央図書館
面積m2 242 
0席
立ち食いそば屋か 
5,800
    
352席、マックよりでかい 
608

34席
    4,800

 131席
6,940

480席
学校だよ
立地 駅歩10秒
駅東口のコムナーレ8階 桶川マイン     ハーモネスプラザB棟、駅歩1分 キュポ・ラの5・6階
特徴 駅前は20時
本館は19時

貸出数無制限
月が全館休み
本館は場所と時刻条件付きで飲食可(超珍し)

にも寛容
平日21時
休館2回/月

利便性高く混む


児童返却器に涙
他2館とは違う休館日     火曜が休

1館のみの大鑑巨砲主義か?

分館なくて皆、平気なの?
休み1回/月
社会人席や予約席方式、長時間滞在型等革新的。
児童貸出機も人気
             
             
要覧等を見た感想 紙の要覧内容はまずまずだが、実質登録者を把握してない。
時系列グラフがあるのは良いが、始点0値以外のグラフは疑問(波の省略必要)


誰も見ないとはいえ、Web化してないことに失望
合併後5館増が有利に働く。データ集計に優るが、グラフ無しは伝える気が感じられない。

登録者を年1回利用者として実態反映は良い。
政令20市内の多くの指標で上位にランクし、総合的には1位。横浜市より上

だが利用冊数は前年比▲3.4%!。登録率と利用冊数は数年来低下傾向にあるのだ

運営目標設定あるのは優れるが、それは当年度の目標であり、結果データは前年度だから、対比できず画竜点睛を欠く。
また差異に対する総括も必要。
H10-19年までの市データブックによると、
利用者数はH12に137千人でピーク後は低減続き、19年は▲15%。

貸出数はピーク比▲9%。蔵書数はH18まで増加も、H19に▲6%
H26教育要覧
p32
以前から減少続くが、23年比で、利用者数▲17%、貸出数▲14%と大幅減。


人口減が始まっているように見える…
H25年版要覧より

貸出数は低減傾向にある。利用人数の統計無しは致命的。

登録人数が多いのは名目数字かも?
グラフを入れて時系列推移を見せている。
利用者数を年一回以上利用者と定義。
データ集計も精緻。

時系列グラフの多用は良いが、凡例省略グラフは見にくい。

目標設定が見当たらない 
 
 

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