行政統計の見かけの数字と実質数字の違いは行政能力差なのか-3
図書館の利用統計で意味があるのは一年間に一回以上借りた人数です
何かヘンだなー、と思いつつも、公表数字を使って書いたのが前記事。上尾市図書館システムに登録してある登録者106,000人という数字。これ自体は期末のストック情報として間違いではないだろう。
しかし、この数を鵜呑みにしてはいけないのだ。とんでもないマチガイが発生する。
さいたま市の図書館要覧を見て、そのもやもやがスッキリした。共に2013年度(平成25年度)。登録率=登録者数÷人口
上尾市 | さいたま市 | |
---|---|---|
人口 | 228,176 | 1,255,743 |
登録者数 | 106,457 | 237,353 |
登録率 | 47% | 19% |
登録者一人当り貸出数 | 13 | 43 |
上尾市の5.5倍の人口をもつさいたま市の登録者が23万人しかいないわけがない・・・
実は、さいたま市の図書館要覧では、実登録者数と称し「登録利用者中で年度内に一回以上利用した人」と定義している。
これが正しく実態を表す人数であることはいうまでもない。見かけの登録者数などはカード発行の累計枚数に過ぎない。一年に一度も図書館へ行かない人が多く含まれているはずだ。
たとえると、企業の在庫管理において死蔵品・退蔵品までも含めて在庫高評価する粉飾決算に近いものである。
● 市民利用率=年1回以上利用した人数÷人口
名目的なカード登録率よりも、実態を表す数字を使うほうが図書館運営の確かな指標になる。
実利用者数こそ有意な数字であり、そこから導かれる「一人当たり何冊借りた」という数字も意味がある。
とにかく、実質利用者数の向上こそが図書館行政の一番の目的だと思うから、この数字を公表することを願いたい。
どうせコンピュータ処理しているのだから、この程度の統計数字を出せないわけではないはずだが・・・。さいたま市の例に倣うと、実質の登録率は20%前後に激減するのだろうか・・・
実はこのような齟齬は上尾市に限ったことではない。広域利用対象となる周辺市町の図書館統計をみても、判で押したように名目登録人数のようである。桶川市に至っては登録率56%に達する。
ほっておけば、名目登録人数は人口を超えてしまう性質のものなのに…
行政統計におけるこの違いは、単純に政令都市であるさいたま市と中小市町村の行政能力の差である、とい言うのは容易だけれど、根本はそうではないような気がする。
そもそも図書館要覧はほとんど読まれないだろう。小学生が研究課題に使うかもしれないが・・・。だから細部に分析したり多大な統計をとっても費用対効果がしれている。
作る方は、前年資料の上書きで済ませていないか。(複数年を読んで見つけた)間違いや不正確な表現があるのは、作成責任である管理職も中身の精査をしていない証拠と感じてしまう。
そして図書館行政に外部から関わる(これも[名目]みたいだが・・・)、協議会メンバー表を見れば小学校校長やPTA・子供会などの面々が並びそのキャリアは狭く偏っている。まさに教育委員会という内輪の集団では意を異にする者は少ないだろう。
かくして、毎年、前年資料に上書き作成し、製本し、関係者に配布し、バインダーに閉じられ、書庫の片隅に格納される。読まれない蔵書がまた一冊増えた・・・
その意味でも、上尾市は図書館要覧をpdfでWeb開示すべきなのだ。
読まない関係者よりも、不特定多数の市民の目にさらされる機会を持たせることに意味があり、行政に心地よい緊張感が生まれるだろう。
追記 10/19
さいたま市の登録者数が判明。埼玉県図書館協会の統計によりH24年度で626千人。多分これは名目と思われ、人口登録率は50%になる。一年ずれるが実登録者数÷上記名目値では38%。 つまり甘く見て歩留まり4割。
ようするに名目登録者数の内、実際に本借りた人は4割という意味。
辛めで「1/3」。 これを他市に適用するわけだ。だいぶ減るね…
これじゃー粉飾だよー、と言われないためにも早く開示しなさい・・・
(この登録率については、記事-8へ)
前記事: 上尾市図書館の利用者数の推移と登録率-2
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