教育委員会の工事の杭は児童に届かず、構想計算に偽装があった?
追記2019/10 最新統計グラフ クリックで拡大。
関心のある点や★記事からどうぞ。
● 14までは初期の記事です。この目次の下にあります
サブタイトルは今風に書くと↑の感じですが、主タイトルはスミマセン・・・
ツリです。
年末だからと言って、反対理由が煩悩の数は多すぎです。100引いて8つにします・・・
もちろん素人のたわごとですから、そのつもりで…。
上尾市中央図書館の上平建設計画に反対運動が起きています。その理由は、『上尾市民は本を読まないから』というわけではありませんよ・・・
不便な立地、35億円という建設費の大きさ、お役所言葉の「総合的決定」という立地選定の不透明さ、利用者数の多い公共施設なのに企画段階で市民の声を吸い上げなかったこと、複合施設化するなど計画がテキトーか作為的か変転している、等に集約されそうです。
ただブログ主は別の視点からも異論を述べますが、その前に・・・
昔から環境衛生施設(ゴミ焼却場や火葬場)の建設には近隣住民の反対があり、最近は保育園や障がい者施設まで対象になっています。迷惑扱いされた施設建設と住民との間の紛争を「施設コンフリクト」と言うようです。
図書館がその対象になることは無かったのに、1995年以降では反対例が増えてきたようです。今年はツタヤ図書館の問題が各地でニュースになりました。
図書館整備の反対が増えた背景には「事業の優先度」や「事業の効果」を争点とする例もあり、住民の「
納税者意識」の顕在化とも考えられるようです。総じてカネの問題が多いですが、中には『
建設予定地が首長の利権に関わる土地であった』という時代錯誤の例もあったらしいです・・・
。 詳しくは上記サイトへ。
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下1番以外は過去記事に書いたことをまとめたものです。
1.上平への移転により中央小学校や上尾小学校の児童利用が激減
元の
基本構想案では移転後の現本館については何も言及していません。つまり白紙ですが、実は各小学校には放課後の児童の移動制限があります。学校や学年ごとに異なります。
中央小学校の1-4年生が子供だけで、学区外の上平へ行くことは禁止されます。高学年でも帰宅時間は冬季は16:30と限られます。
つまり構想段階で、文教政策者として予見できる負の影響について対策を併記すべきなのです。
「移転に伴う弊害を解消し、上尾地区に児童図書館を新設して小学児童への図書サービスを担保する」と。
構想案は上尾市教育委員会が作っており、その下に小学校校長がいて、校長の裁量で先のルールがあります。組織的に機能していると言えるのでしょうか?。
構想案に「上平新図書館建設」と「上町地区での児童図書館機能の設置」をペアで入れなければなりません。
文教のプロならば初めから二施設を提案したでしょう。構想案に綴られた「赤ちゃんからお年寄りまで・・・寄り添い・・・」という美文が空々しいです。 かような構想案の瑕疵にも拘らず、文教担当者も議会もチェックできずに賛成多数で可決されたのではないですか?
なお、本館における小学生の利用度は高いです(
図書館白書へ)。また建設費35億円には新児童(図書)館の追加費用、現本館の解体費用は含まないでしょう。資産価値の高い本館跡地への
腹案は何ですか?。本当はそこまで広げてこそ構想能力であり、本物の「総合的」ではありませんか?。
ところで施設コンフリクトの問題では環境アセスメントが行われることがあります。この図書館建設にも影響評価をすべきですが、なぜしないのですか・・・
2.そもそも図書館を作れという市民ニーズは少数派
現本館が混みあう時は少なく、すいているのが実情です(
10番目にデータ)。 しかし
上尾市図書館のWebサイトには現本館の
満足度90%でも、「求める本がない」、「読書スペースが無い」と言われているから建てるのです、としています。
少数意見を建設の正当化に引用しています。本案が市民の多数の要望ではないことを白状しています。少数意見は排除されがちですが、自分の政策に利用するのは民主主義ではなくご都合主義です。
さらに現本館の建替案では、建設中は長期閉館となり不便をかけるという、建替えをしない理由を書いています。これは、上平完成後は50年間不便をかけ続ける、という自己矛盾です (回避策は5番へ)。
・・・ 企業では社長に就任した人は、在任中に大きな事を成したくなるものです。特に経営がまま順調な場合は。その結果が『
投資の誘惑』に駆られます。いわんや結果責任を負わない行政トップや役人はノーリスクですから、公共投資=「
功名心」の誘惑に陥りやすいかもしれません、と思います・・・
3.日本人の読書離れは進んでいる、上尾市民も
近年、図書館を作ることが自治体で流行っており、本屋や著作者から商売敵だというニュースを目にしました(書店は年500軒廃業です)。グラフは最新ではないがクリックで拡大。
スマホや電子書籍、少子高齢化、さらに文化庁調査での一番の理由「忙しくて余裕ない」という現実と相まって
読書需要の減少は必然です(
上尾市人口推移へ)。
ようするに総需要が減っている中で、コア利用者である子供・女性・高齢者が交通弱者であることを知りながら、郊外に大型館を建てるというのは、動機が市民のためではないことを物語ります。
休日賑わい平日閑散施設となりかねません。悪天日は自転車利用者も減ります。受験勉強に使う中高生にも不便。それらの解消にバス便を増発すれば赤字を増やします。
4.数値目標の無い無責任な公共事業だから
建設費35億円の公共事業ですが効果については抽象的です。床面積や 蔵書数、駐車台数などの資産の数字(カネで買える)はあっても、例えば2015年比でいつまでに何千人利用者を増やすのか、何万冊貸出増を図るのかという目標数字はありません。賛成派は、目標と根拠を示して政策的合理性を明らかにすべきです。
目標が無いと結果の評価はできません。責任が曖昧になります。緊張感に欠けた公共事業とそこに群がる人々が日本の財政悪化を積上げてきたという繰り返しです・・・
構想案を作った教育委員、行政責任者、賛成議員のお名前を図書館要覧に明記して後世に伝えて下さい。成功したら功績として末永く賞賛されて欲しいからです。失敗してもリスクも背負わないから異存はないはず。
5.上尾市の競争力ある街づくり、という構想力がない
人口減少時代では他市からの人口流入(
転入増)を図る、つまり魅力度を競った『住民の奪い合い』です。 コンパクトシティという市中心部への人口集中がトレンドですから、立地に優れた
上尾駅前図書館なら集客と社会人教育(夕方から勉強したい勤め人)にプラスです。利用人数や蔵書回転率はグンと上がるでしょう。
駅前案はこちら
将来に危機感をもつ自治体なら、公共施設を賃貸物件に入居させることに抵抗はありませんが、上尾市は「資産の自前化」に拘ります。「公的・教育施設は賃貸になじまない」という見解は、それ以上深い考察を出していませんから、たんに取り巻き幹部の『トップに寄り添う』方便なのでしょう。
若い市職員や他市行政マンに聞いても時代遅れの発想です。いまどき賃貸入居例など珍しくありませんし、既に図書館オペレーションは自前(正職員)ではなく賃貸(指定管理者)ではありませんか。矛盾してます。
なお、否定されている現本館の
建替案も、建設中の本館無しの不便さをどの程度まで我慢できるかを考えれば良い、という見方もあります(
書庫のアマゾン化も緊急手段)。
6.35億円も使うなら優先度として見劣りする
上記2と3で需要減ですから新図書館は不要です。既存の上町本館や駅前館の高稼働化が先です(7と8参照)。しいて北上尾駅前分館(受渡し特化も可)の新設や児童図書館または校内図書室の充実くらいです。
35億円も使うなら、本よりも子供です。
駅近にある程度の規模の託児施設(賃貸か自前)を作ることで、転入人口の増加も期待できます。子育て支援、子供人口増加につながる政策はミクロとマクロのニーズにも合い、他世代よりも優先的であってよいでしょう。
他にも、市民にメリットをもたらす代替案があれば、既出した準備費の損失化は理解されると思います(民間なら株主代表訴訟レベルですが)。
7.蔵書数より椅子の数を気にする時代へ
高齢化や非正規雇用、単身者の増加はとても深刻です。せめて誰でも無条件で訪れることができる図書館には、社会的居場所としての空間を提供しても良いと思います。
現本館の事務スペースを減らしたり、開架率低下も目をつぶり(閉架でも端末検索できる)、リニューアルして座席や机スペースの拡大で学習や居場所型施設を目指すことです。
公務員は法で守られた終身雇用ですが、競争社会で生活する市民が抱える不安にも思いをはせるべきです。「市民に寄り添う」とはこの様なことであって欲しいものです。
8.まずは現本館の改善案で乗り切ろう
現本館の改善点は多々あります。Wifiネット環境の導入。休館日を減らして稼働日を増やす。本館と駅前館の休館日をずらす。
図書館利用の定量的目標をたてる。貸出統計のあり方を改善する(例、年一回以上利用者を利用登録者として把握する。延滞件数、盗難や破損件数の把握)。
市民寄贈文庫として市民からの寄贈を積極的に喚起する。蔵書スペース確保のために空き公共施設を活用(外部書庫化)する。ネット予約を充実し、受け取り場所機能を強化する。他市図書館とネット上で相互乗り入れをする、などなどです。
9.国の予算に換算すると5兆6千億円の図書館…12/23追加
「一部権力者と取り巻き」だけで採用した新国立競技場は3,000億円で、高すぎると非難されて廃止されました。
上尾市の一般会計比では35億円÷600億円なので、国の予算約96兆円に置き換えると、新図書館は56,000億円というトンデモ巨額です。
でもザハ案並みに逆換算すると、たった2億円弱です。つまり、国民が異議を唱えたのは金額の多寡だけでなく、税の在り様です。
というわけで、
2016年2月7日の上尾市市長選挙の争点になれば健全ですね。でも、賛成派と反対派による『上尾市図書館戦争』なら、
まだ18禁ですね・・・
2016/1/15 以下を追加。
10. 来館人数が減少している不都合な真実
2014年度/H26 |
来館人数 |
一日平均 |
前年比 |
2012年比 |
本館 |
439,239 |
1,454 |
-4% |
-8% |
駅前館 |
90,102 |
298 |
-4% |
-11% |
大石 |
96,138 |
318 |
-2% |
-15% |
合計 |
625,479
|
2,071
|
-4%
|
-10%
|
増減人数
|
|
|
-23,992 |
-67,048 |
稼働日数
|
302日 |
|
303日 |
302日 |
一日何人以上の来客がノルマか、それに悪戦苦闘するのが民業です。ローソンは平均800人。それ位の客がこないと経営的に合格しません(711はもっと多い)。ということで、本館はコンビニの二倍弱1454人ですが、果たして多いのでしょうか。
連日賑わう上尾中央病院は1800人(外来患者数)、駅前の711は超優良風なので軽く千人超すでしょう。
図書館には閲覧や学習などの目的で訪れる人も多いです。入口では電子カウンターにより測っています。精度は分かりませんが、稼働率をみる指標になります。
2013年と比べて三館とも来館人数が減っているのは深刻。全体で-4%、稼働日が1日少ない影響を除いても約10日分の減少です。二年前比なら10%減少です。
本館の最高は8月で5万人、最少は2月の2.9万人(蔵書点検月です)と繁閑の差がありますが、仮に8月をフル稼働状態とみなせば年72%稼働率と推定されます。まだ余裕あります。
貸出数や人数の推移は、第3番の折れ線グラフにあります。
●ようするに利用(需要)が低迷しているのに、高額な大型新設備(供給)をアクセスの悪い郊外に作る理由はありません。足元の利用低迷は何が原因なのかを解明してその改善策をたてる方が優先されます。
2016/1/17 追加 (図はクリックで拡大)。
11. 政策の合理性を疑う不都合な真実
●左の円グラフは、市人口に対する利用者の内訳です。利用カード登録している人は人口の半分(赤+青)、カードを持たない未登録者(緑)も11万人います。
登録者のうち一年に一度以上借りた人の人数(赤)を「実利用者」と定義しました(旧記事では実質登録者数と称した)。
その比率は登録者の30%、市人口比で15%です(2012年は15%、2013年は14%)。
注)
登録者全体(11万人)には他市民(7100人)を含み、緑は市人口からの差引とした。「市立」図書館の稼働を純市民に限定して評価することはしないので、このままとする。上尾市民に限定すると更に低下する。
●右の円グラフは、実利用者の内訳を時計回りに年齢別の人数比で示します(過去にも書いたので説明略)。
重要なのは左の『
一年に一冊以上借りている人は市民の15%』という事実。カード登録者の三分の一以下です。 値は、
7市比較表の「④実質登録率」を参照。
市当局は「23万人都市にふさわしい」という人口を政策根拠をあげていました(最近は言うのを避けてる気がします)。自治体が政策根拠に人口規模をあげたのは人口増加時代でのこと。今でも使うのは、自己都合の方便か首長としての資質に問題があります。
数よりも質を問うべきなのです。
貸出統計のビックデータをひっくり返せば、現場が肌で感じていることが露わになりました(僅か15%という事実は行政側も理解できていない)。
補足)
グラフに顧客三区分を表示。潜在客(図書館に行ったことのない人)、見込客(カードは持つが借りない人)、既存客です。既存客は初めて借りた新規客、固定客(リピーターと常連客)に分かれます。
■参考データ
2014年度(H26 |
合 計 |
男 |
女 |
前年との差 |
人口(H27/1/1
|
227,897 |
113,386 |
114,511 |
-258 |
登録者数と構成比 |
112,499 |
41% |
58% |
6,042 |
実利用者数 U |
33,366
|
13,018 |
20,348 |
507 |
その人口比率 |
15%
|
11%
|
18%
|
|
貸出数(個人) |
1,319,905 |
39% |
61% |
-13,061 |
利用人数(延べ |
415,969 |
43% |
57% |
5,527 |
一人当り貸出回数 R |
12.5 |
13.7 |
11.7 |
(1回/月) |
貸出数B /人・回 |
3.2冊 |
2.9冊 |
3.4冊 |
|
年間貸出数/人 |
40冊 |
39冊 |
40冊 |
(3.4冊/月) |
市が発表する、市民一人当たり貸出数=5.85、登録者一人当たり貸出数=11.86(いずれも団体等含む総貸出数ベース)は、利用していない市民まで含めた名目値にすぎません。実質値と比べれば、「
リピーター客でもっている」というのが図書館や病院(
)の特徴である事がよく分かるでしょう。
貸し出し三要素のURB値は次の通り。
貸出数1,319,905冊=U 33,366×R 12.5×B 3.2
33,000人が年12回通い、一回3冊借りて132万冊、ということです。他市と比べて気になる方は
7市比較表の「④実質登録率」へ。 なお一冊当たりの貸出コストは約280円、安くはありません。もちろんタダでもない。
さらに年齢・性別セグメント別のURB値もありますが省略。
2016/2/5
12.アクセルとブレーキを踏む縦割り行政の姿
もっと大きな図書館を立てるはずの当初構想案から大きく変わったのは、施設計画や資金計画との辻褄がとれなくなったからでしょうか?。それとも構想案自体がご粗末だったのでしょうか。
この流れが意図的であれば狡猾という政治手腕ですが、そう見えない所がなんともです・・・
人口減と建物と住民が老朽化する中での
公共施設マネジメントでは新規施設は抑制し、建替えは他館との複合化・多機能化が当たり前とし、床面積の圧縮を前提にしています。このままだと毎年45億円かかる、という
公共施設更新40年間見積はこちら。
つまり公共事業はすでにブレーキがかかっていますが、新中央図書館35億円を積み増しし、30年後には改修案件に切り替わります。そんな先まで心配してどうする、という人もいますが、そこを心配するのが為政者でしょう。
そもそも建設費も詳細プランがないので曖昧。稼働後の運転資金は?。既存の維持管理費内で済むのか、増分費用が無いのかも不明。
13.公共事業最適化事業債がモラルハザードを生み最適にならない
資金計画として公共事業最適化事業債という地方債(借金)を使うようです。老朽化施設の統廃合を自治体のみでは負担しにくいから国が補助するという制度ですから、まだ使えるハコモノ(現本館)への適用はヘンです。
しかも統廃合相手に(プレハブ施設の)青少年センターを使い、面積縮小させて、補助金が出るうちに作る、というストーリーは自治体のモラルハザードではありませんか。
そのために改定案の床面積が元構想案(5000m2)とは無関係になり、現本館(2337m2)より減らす(1F2000m2)となったのでしょう。ただし学習室を二階へ移すために開架面積は増えるようです。ここの学習室は図書館じゃない、と建前を通すかもしれませんよ。
さて、交付税算入率50%という事業債により市民負担が減ると言いますが、残りの分は地方交付税という国の負担となり、所得税等で払うわけです。35億円が安くなるわけではありません。
ちょっと分からないのは、基準財政需要額と基準財政収入額の差額補てんとしての交付税ですから、将来的に市収入が増えれば交付税が減り、実質的に市負担分が増えていくことにはならないのでしょうか?
いずれにしても、長持ちして使える現本館とプレハブ施設を合体して利便性の悪い地に新築するという不合理性を、資金源の名前の『最適化』を使って正当化させるみたいで、誠実さに欠けます。
「最適化」という名を語る新公共事業策にみえます。
14.図書館サービス計画(案)の意見と市の回答
2016/1/25まで「第2次上尾市図書館サービス計画(案)」の意見を募集していました。広報や図書館Webで告知しますが、なかなか気が付かないです。パブリックコメントで意見を求める例が増えたのは良い事ですから、あながちガス抜きとも言えません。
21人、質問や意見総数95件。 そうです、たった21人。
ブログ主も出しました。質問や批判だけでなく改善提案も含めて。彼らが再利用しやすいようにWordで。採用されたのもありました。
図書館協議会委員名簿が公開されたこと。以前探すのに苦労しました。多くの人がこの不透明な組織に疑義を向けていたための公開でしょう。個人的には図書館学でマネジメントしてほしいとは思いません。公共施設として高い稼働をすることを追求すれば良いのですが、そのような仕事経験の薄い(上の利用統計すら知ろうとしない)人ばかりの集まり、と疑います。
行政と親和性の高い人を集めた民間人委員会は中央政治でもよくある出来レースです。服装で肩書きで人を評価してはいけない、という見本でしょう。
なお上平移転反対の意見や質問が多くありましたが、トップに反することを彼ら職員に言わせるのは酷です。普通の職員なら
上尾市三大愚策の一つになることを危惧しますが、口が裂けても言いません
。上平勤務にならぬことを願うだけでしょう。
この問題は決着がついたわけでは無いでしょう。 (本日、ある議員氏が言うには立地動機は一番上の話でした。真偽は確証ないので、この文はかっこ書きです。)
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