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2016年5月 1日 (日)

功名が生む上尾市中央図書館に背負わされた貸出し目標の重荷

上尾市中央図書館が果たすべき貸出数と利用者数の目標値試算
 
 
Photo_3  基本構想案では「赤ちゃんからお年寄りまで・・・市民の学びたい気持ちに寄り添い・・」と高らかに謳うのですが、定量的な目標が見当たりません。
二転三転して新図書館は「複合施設」化したために、単館としては曖昧になりやすいです。「くらしに役立ち、市民とともに歩む図書館」と言うので、とうとう移動式図書館かと連想しました・・・ 。
 
 
新施設の玄関口で数えられる「来館人数」はグンと増えますが、図書館としてのパフォーマンスは貸出統計で見るべきです。
 
2014/4-2015/3の図書館要覧(下表)の実績を使い、現本館と上平公民館図書室の合計を現状とします。新図書館の蔵書数は最大43万冊(達成時期は未定)です。蔵書回転率で4つのシナリオを見てみますが、その前に、
 
●蔵書回転率=貸出数÷蔵書数 … 一年間に全蔵書が何回貸出されたかを示す
値が1は蔵書数=貸出数です。実際は特定の本が何度も借りられ、誰にも見向きもされない本もたくさんありますが、ストック(蔵書)とフロー(貸し出し)の比率なので、図書館マネジメントでは重要な指標です。経営分析の資産回転率と同じです。
 ざっくりみられる点でも便利ですが、必ずしも回転率が高ければ良いわけではありません。貸本屋のように人気本ばかりを増やし、不人気本を廃棄すれば回転率は容易に高くなります。公共図書館ではそんなことはないと思いますが、本記事末尾のような異常値も発生します。
 
図書館の管理指標 2013年(参考)  2014年 2014年  
  本館 本館 上平分館  (合計) 
蔵書回転率 2.0 2.0 2.2 2.03
蔵書(本以外含、千)① 338 343 25 368
貸出数、千冊・点 ② 692 690 55 745
利用者数、千人 ③ 215 220 15 236
一回当たり貸出数 3.2 3.1 3.6 3.2
 
●楽観、中間、悲観の3シナリオ 
蔵書数×回転率=貸出数 です。
回転率の中間値を現状の2.03としましたが低すぎるレベルです。多額の投資をして現状と同じでは、投資効果がないのですから(市説明では蔵書を増やすことは述べても、アウトプットの貸し出しを増やすことは明文化していません)
 
楽観値を2.5にしました。35億円の高額投資ですからもっと高いハードルを「彼らに」に課しても良いのですが・・・。なお、さいたま市や川口市では市全体値で2.8です。
 
 
悲観値として1.5も考えられますが、個人的にはそんな低値しか出せない図書館を持つ自治体は論外です。というわけで1.75に留めました。
全体的にはやや甘めな値かなとも思います・・・。
 
●一回当たりの貸出数は現状の3.2冊を使用
 貸出数÷3.2=貸出延べ人数となります。
蔵書が増えて施設が立派になっても、貸出二週間の制約がある限り一回当たりの貸出数が大きく増えることは無いとみます。 ただし、新上平の立地性が気軽に行けないと判断されると、以前よりも一回当たり多数冊借りる傾向がでやすいので若干上昇するかもしれません。
 しかし反動として、読まずに返却することが増えたり、返却が遅れて本が滞留することで全体の回転率を低くするマイナス効果が危惧されます。
 
●試算結果について
図書館の経営管理指標 達成目標値
①②③の単位は千  駅前値  楽観値   中間値   悲観値 
蔵書回転率 3.00 2.50 2.03 1.75
蔵書(本以外含)① 430
貸出数 ② 1,290 1,075 873 753
利用者数③ 403 336 273 238
一回当たり貸出数 3.2
2014年比 貸出数 545 330 127 7
  その増加率 73% 44% 17% 1%
2014年比 利用者数 167 100 37 2
  その増加率 71% 42% 16% 1%
 
楽観値: 回転率2.5のケース
2014年比で、貸出数で33万冊、人数で10万人増となり、ともに四割増。この程度の目に見える値がでないと新館投資の成果とはいえません。
 
中間値: 現在と同じ回転率2.03のケース
貸出数は今よりも17%増、127千冊増となります。利用者数は3.7万人、16%増です。単純に蔵書数に比例した結果です。
 
悲観値: 回転率1.75のケース
政策的に失敗です。
投資額の請求書を立案者に送らなくてはなりません。
 
●駅前値: 回転率3.0のケース
 浦和パルコのあるさいたま市中央図書館、川口駅キュポラの川口市中央図書館、そして同じ「中央」を冠した上尾市中央図書館の比較になります。
 さいたま市中央図書館の蔵書回転率は3.2(H25年)、川口市の中央図書館は3.5(H24年)とそれぞれ単館として非常に高いパフォーマンスです。図書館で2以上を出すのは大変なことと思うので、プラス1回転分は立地効果と想像します。
 
Photo  仮に上尾市も駅前図書館(丸広やショーサンプラザに入居)であったならば、これに近い値が期待されます。その貸出数と利用人数は上表にみる7割増です。
素晴らしいモノを作ってくれたと市民や中高生の賞賛も絶えず、胸像建立の声が沸き起こるでしょう。
また駅前に文教性のある新しい顔(施設)を作ったというシティセールスにより転入人口の誘因にも寄与します。
 
もちろん、これは白昼夢です 
 
ところで草加市中央図書館の蔵書回転率は2.1(H25年)止まりです。蔵書60万冊を超す駅前の多層階大型館です。行ったことも無いので分かりませんが、たんに駅前一等地だけではなく知恵も必要なのでしょうか・・・。
近間では、桶川市がマイン内に駅西口図書館(蔵書11.5万冊)を大幅リニューアルしたばかりです。丸善桶川店(50万冊)と併設です。初年度はどんな結果でしょうか、開示が待たれます。
 
●本当はコワイ、駅前館
 実は5.8というものスゴーイ高回転率をたたき出す図書館が上尾市にあります。
 
施設が狭いため蔵書数は少ないですが、他館にある本の予約受取・返却場所として、貸出数の下駄をはいているのが東口駅前図書館です。
蔵書施設は離れていても、ネット検索と予約により(蔵書場所へ行く必要は無く)、物流としての受渡し場所の立地性が良ければ読書サービスが十分果たせるという典型です。
クリーニングの受取店みたいです
。或いは図書館のAmazon化です。
これを徹底すると、蔵書回転率が無限大というバーチャル図書館もできます(^-^?)。この駅前受取方式を採用しているのは浦安市立図書館 (7:00--21:00)です。
 
ようするに今のシステム(他市も?)は貸出数を出口(受取館)でカウントし、蔵書館の成果とはなりません。正確には各館の相互貸借を相殺するか、或いはカウント方式を蔵書館基準にすればよさそうですが、それでは分館での利用度合が測れません。
 
蔵書の一番多い本館は書庫としての供給元ですから、実質の貸出数はもっと多いわけです。現本館の回転率が低いのはこのカウント方式のためでしょう。というわけで、旗艦図書館のみを単館として評価する時は、回転率が低く出やすくなります。
逆に、広域利用による他市からの借り入れ分は、蔵書と見合わない貸出数となり、回転率を押し上げます。ようするに蔵書基準での純粋な回転率は不明なのですが、毎年同じ方式でやっている限りは、時系列の評価には使えるでしょう。
 
ところで蔵書を増やした上平中央館ができると、駅前館の回転率はより高まるはずです。それは、中央館の存在の希薄化(書庫としてのみ認知される)を意味しますから、なんとも皮肉な現象です。 浦安並みに駅前館の1Fは夜九時までどうですか 
 
2020年に、ケガの功名になればいいんですけどね・・・

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