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2017年2月16日 (木)

浦安市立図書館の貸出日本一から見える図書館の姿と震災の影

公共図書館が目指す姿と自治体格差の結果
 
今回初めて知りましたが、浦安市図書館の人口一人当たりの貸出数は12.5冊で、類似の人口規模の市では日本一で有名らしいです。
 
熱心な誘いもあり、風邪もなおったのでディスニーランドではなく図書館見学に行きました。公共施設は一人でも見学できますが、個人の質問に丁寧に答えてくれるとか、内部を案内してくれることはまずありえません。去年、海老名市立図書館を一人で見学した時の経験から感じていたためです(記事は末尾)。
今回のように組織的に正規見学する場合、先方の受け入れ対応も違い、得られる情報が格段に高まります。今回は浦安市の図書館館長・齋藤様が直々に案内されました。他市から見学が多いためか、手慣れたものでした。
  Img_0247s
浦安市立図書館概要平成28年度を前夜にWebで見ました。
貸出利用度を示す指標が他市を圧倒するように高いことに驚きますが、もっと驚いたことは震災の影がこんな所に表れていたことです。
貸出日本一とはいうものの、実はh22(2010)年の235万冊、利用者75万人、人口一人当たり14.3冊がピークです。東日本大震災の2011年は稼働日数が減ったためでしょけれど、h27年度でもh19年の水準に低迷しています。 
図はクリック拡大(右軸の下限値をカットしています)。
Photo
 
TDLや宅地開発が盛んな浦安市は新興都市として若々しいイメージや高いブランドを持っています。この日初めて見た湾岸部に近いエリアの風景は印象的でした。洒落た大規模マンション群と区画整理された広い幅員道路、歩道も広いです。
公園やしゃれた小学校や大規模な公共施設群が機能的に配置されている中を歩くと自治体格差を目の当たりにしますね。日の出公民館という施設は「公民館」と呼んではいけません。それともジョークですか?。これは上尾市の文化センターレベルです・・・。
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ただし、生活の単調感がありそうな印象を受けました。旧市街地というか内陸側はかなり違うらしいですね。
2011年を境に僅かですが人口減少へと転じています。浦安市の成長にブレーキをかけたかもという点では地震のすごさを感じます…。
 
●上尾との比較でみると
主にH28  浦安市   上尾市 
人口 165,411 227,890
面積 ㎢ 16.98 45.51
一般会計予算(億円 714 621
高齢化率(h26 14.7% 25%
平均年齢 推定40才 45才
蔵書数(千冊 1,189 592
 
人口は73%程度ですが、面積が1/3ですから密集度が違います。大友さん得意の商圏分析マップを見ると、全8館は徒歩圏に分散しアクセスの良さが利用者獲得に寄与していることが伺えます。
一般会計予算規模は上尾市の15%増です(理由はTDLだけではないでしょう)。
これを一人当たりでみると上尾市の1.6倍。そこに教育費20%を投入、蔵書購入は年間1億円(3倍)。優良市と比べても意味がない、というと身もふたもありません・・・。
 
新浦安駅前の図書サービスコーナー(48㎡,H18~)という本の受け渡し専用窓口が個人的に一番見たかった場所です。19万冊、全体の9%も優れていますが、サービス業として見ればごく当たり前です。貴重な見学でした。三交代で活躍するシルバーの方が説明してくれました。深謝。
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他にも人口構成が若いこと、蔵書数が極めて多いこと、分館の実態は複合館化しており多目的利用者が集えること、正職員30人(司書30人)もいて、サービスの量と質が高いことなど、あげればきりがありません。なお人事ローテーションが少ないというのは驚きを通り越してまだ理解できません・・・。
 
蔵書回転率は1.7と意外と低いです。潤沢な予算で蔵書(分母)を増やしてきた結果だろうと思います。
 
●中年化が始まってるみたいな浦安市
 随分とひどい言い方ですが、当市の平均年齢は45才の中年盛り。浦安市はH22年で38.2才でした(最新値は不明)。30代というのは千葉県下では唯一ですが、今は40才代に入ったかもとみます。それでも高齢化率はh26年で14.7%はどこもうらやむ値。つまり働き盛りが多くて地方税収は伸び盛りなのでしょう。 ただしこれは市全体平均であり、内陸側と海側で極端に開くと思うのです、歩いていてそう思いました・・・
 
●外も中も閑散としてました
 平日昼間のため、見学した中央館も二つの分館も閑散。特に学習室で勉強をしている人が少なかったです。共働きが多いのか外を歩いている人も少ないです・・・
 分館が多ければ学習机環境が多くなり、供給能力が全体として多いのではと思います。今は受験シーズンですから、上尾市のように限られた机数しかないと、平日でも本館は混雑感があります。そもそも狭いエリアに公園やヨーカドーやイオンの商業施設があったりしますから、それだけでも人の奪い合いは激しいのだろうと思います。
 
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●浦安市図書館の貸出統計をURB値で分析評価する
 貸出数の多さは図書館の最も基本的なアウトプットとして大切ですが、評価されることを忌避して目標にしない自治体が多いです。既に浦安市は一年に一度以上利用している実利用者数が人口の30%(震災前はずーっと)、他市がまねできない水準を達成しているのですから、そろそろ「人口一人当たり貸出数」などという、ケチな指標での日本一は他市に譲るべきです。
 卒業すべきです。 「もう、うちはそんなレベルじゃない」という意味で。
 
そもそも人口一人当たりと言っても、「本を借りない人口」の方が多いために、この指標はお役所仕事の典型なのです。実利用人数に限定した図書館利用指標が下のURB値です。
 貸出総数=U×R×B
 
H27(2015)  浦安市   上尾市 
貸出合計 千冊 2,056 1,348
延べ利用者数 千人 693 428
一回平均点数 B 3.0 3.2
年間利用回数 R 15.7 13.1
実利用者数 U 44,275
(市民限定)
32,575
(他市含)
Uの人口比率 27% 14%
Uの年間貸出数 46 41
蔵書回転率 1.7 2.3
人口一人当たり貸出数 12.6 5.9
 
 一回に借りる数(B)はどこも似たり寄ったりの3冊です。貸出期間が限ぎられるためです。
利用回数Rの差は図書館へのアクセス性だけでなく、施設(サービス)の魅力度にも比例します。
Uの人口比率はアクセス性の良さと文教市政の成果と思います。ここを浦安市はPRすべきです。だってこれが一番大変なんですから。
 さらに利用を高めるためには、性別と年齢階層のセグメントでURBの差を見れば参考になるはずです。データはコンピュータで出ているはずです。
 
 例)上尾市のセグメント別RとB。児童図書館をどんなに強化しても、YA世代に進むと不可避的に図書館離れします。20年後に戻るか否かは、幼児期の強烈な読書体験なのでしょうかね・・・。男性老人が足しげく通うのは社会的居場所です。末尾にも記事。
Urb
 
●こんごの図書館の姿を見る機会となりました
 浦安館長さんの話では今後のリニューアルが大きな課題とか。その目指す姿はまだ模索中みたいです。
 かつて図書館は飲食を嫌う場でしたが、最近は飲食を限定的に受け入れることで来館を増やしています。貸出利用増につながったはず。
という事は、今まで排除してきた機能を取り込むことで次のステージへ進めばよいということです。
 
 嫌っていることを受け入れる、ということです。
 おしゃべりができる図書館、ということです。
 図書館にも寛容の精神を・・・
 
 分館となる他二施設を見学した時、当たり前ですがそこは複合施設です。図書室の外エリアは自由気ままに集えるスペースがあり、弁当食べたり、勉強したり、お喋りや子供が嬌声をあげていました。
 図書館というと堅苦しいイメージですが、ようするに人口ではなく人の「クチ」を取り込めばまだまだ集客できるというわけです。
 蔵書を増やすとかサービスの質を高めるよりも、単純に「本」への距離を近くすることが一年に一度も本を借りない潜在顧客への開拓余地になるばす。
 
 「食とお喋り」。こんな言い方では行儀が悪いので、『社会的居場所』を提供できる施設という事でしょうか。特に子供の貧困や教育格差に悩む市町では、施設のあり方としてニーズがあるでしょうね。
 
『ようするに、図書館のフードコート化なの?』
 
まぁ、そんな感じかな。
だってフードコートで読書したり、勉強している人居ますよ・・・
 
 『でもねあれは我慢しているんですよ』
 
じゃあ、騒音デシベルでゾーンを区切りましょう。
 
・歌までOKのゾーン・・・カラオケゾーンと呼びます。
・談笑できるゾーン…マクドナルド並み
・みんなの図書館ゾーン・・・ヒソヒソ話しレベル
・伝統的図書館ゾーン・・・従来の学習室ゾーン
・沈黙ゾーン・・・呼吸回数に制限付き
 

その成れの果ては、『日本一うるさい図書館』 

で、副題の自治体格差の結果なんだけど・・・

その原因は?

そりゃあ、住民よりも賢くない人をトップに推す住民だよ

追記

本を中心としながらも、その地域社会で望まれるならば、社会的居場所つまりは福祉と融合させればよいと思います。それにはアクセス性が必須条件です。

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