市長選分析-5 秋山かほる候補が8500票を得た意味
(1)予想を超す票数の勝因
直近、h27/4県議選5200票(投票率39%)、h27/12市議選3000票(同37%)が秋山氏の実績です。いきなり22時の一報で三人が四千票で並んだときは驚きました。(ちなみに市選管の一回目開票率19%、30分後の二回目が78%というのは、作業工程における負荷と能力編成の悪さです)
結局、投票率35%なのに”予想”の二倍超の獲得です。
“予想した四千票”の理由とは、県議三枠よりも市長選は1枠のために勝ち馬に乗る心理が働き離れる、選挙体制が弱くかつ出遅れ、自動失職という手口で評判を落とした、支持者の中にも賛否がある、コアな支持層受けの裏返しとして広がり(マス)に欠ける、などです。
8500票も取った理由は、単純に秋山氏のスタンスが活きたという他はありません。逆に言うと鈴木サイドはこの点を過小評価しました。
① 徹底的に腐敗市政を批判し、利権政治の反対にいる唯一の候補者という差別化策が際立った(相対的に他候補はこの点が弱い)。秋山氏は上尾自民党をAとBに分け、Aが新政クラブ、Bは鈴木サイドを指します。二つとも根は同じだから自分の立候補に大義があるといいます。鈴木サイドを明示的に批判する文書は見ませんが、「幼稚園と特養の経営者です。これでは、上尾の利権体質は変わりません」とツイートしています。街頭演説は知りません。
② 語りかける口調とメリハリある演説は、短いフレーズで分かりやすく伝えます。人柄と政策で『キャラが立つ』候補者です。
しかし選挙体制が弱いために市民が駅頭演説や街宣車に遭遇する確率は低く、ビラ配布も少ないでしょう。つまり多くの人は演説や政策を見聞きしていないはずです。ネット活動は上尾では効果薄です。
③ 地元投票所の平方小-11は前回より8ポイントの急上昇です。と言っても35%なので他二人の地元45%前後とは見劣りし、平方小-10は微増にすぎません。平方の増分は400人ほどなので、いかに広く浅く集めたかが伺えます。
④ 女性候補というのもプラス作用です。40投票所で女22:男18と優位に出ました。差は1200票ですがアンチ腐敗や生活政策への共感とも読めます。こちら
⑤ 議会レポートは4万通を配布です(本人ブログより)。上尾市は10万世帯ですからかなり多いです。そこに14年間の市議キャリアをかぶせると鈴木氏よりは知名度は高いとも読めます。公報にプロフィールを書かなかったのは自信の表れでしょうか。
⑥ 4万通の真偽はともかく、差別化を最もPRできたのは選挙公報しか見当たりません。一週間の選挙、新聞を取らない世帯の増加、ネットをしない・通勤通学で駅に行かない世帯には公報の役割は大きいです。公報は外部リンク
●公報の特徴1 利権VS市民の力…本物は私というPR 公報一行目の「利権を引き継ぐ”新しい上尾”はダメ」とはたぶん”畠山陣営”を指しますが、一般有権者には関係なく"他の二人"という意味に受け取ります。フレーズとしては鈴木氏の”いまこそ市政転換”よりはインパクトが強いです。
●公報の特徴2 大争点にはムチと飴を提供 曖昧な凍結ではなく中止と歯切れよくムチを入れます。ところが、「上平には分館を、現本館はリニューアルを、各地分館も強化」という単純な提案で有権者受けをします。
演説では「市長には専決処分という特権がある」、「議会は不信任決議で市長(私)を辞めさせるなら、逆に議会を解散できる」、「市民に役に立たない議員なんかみんな辞めればいい」と大向う受けすることを言って拍手を浴びます。普通の政治家ならそんな簡単には言いません。無闇に武器を振り回す人にしか見えませんが、これがまたウケます。
その一方、「凍結ではなく私は中止」と言いながら上平分館(地元議員への配慮)や契約金額の保全(建設関係者への配慮)を訴えることは矛盾(詳しくはここ)です。酷い話だと思ったのですが、短期選挙では言ったもん勝ちです。
結局、ファン三千票の上に、(勝ち馬でなくてもいい) W逮捕に憤る人々の受け皿としての8500票だと思います。しかしマーケティング視点で書いたように「ニッチャー」はニッチャー止まり、マス(大きな需要)を相手にできません。所が低投票率下ではこの数は大きいです。出馬に懐疑的だった協力者は過去最高に意義(意味ではない)を見出せますが、小選挙区ですから彼らを除いた五千票が死票です。
(2) 立候補の意味
本人はツイッターでこう語ります。
★ありがとうございました。上尾を支配する仕組みを作った自民党🅰️と自民党🅱️が強いからと言って、私は下を向くことはできなかった。私は上尾の良心でいたい。子ども達に誇れる上尾を作りたい。たくさんの勇気をありがとう。私の一票は重い一票と心に刻み頑張ります。8:09 - 2017年12月17日
★私が立候補しなければ私の票は全て自民党の鈴木さんに行き彼が当選したという人がいる。私の票は個人票です。右向け右、で一斉に変わる組織票などありません。勘違いもはなはだしい 4:37 - 2017年12月27日
総括は秋山ブログへ「多くのみなさんの応援に感謝します…」
畠山30,500 < 33,000(鈴木+秋山) は皮算用と言えども可能性はあったわけです。それが上の反論です。
秋山・鈴木の政策的な違いは少なく、教育や福祉面では似ています。違うのは同年齢ですがキャリアが対照的。政治家としての出自の差が、対抗心を増幅しているのでしょうか。言われるように、B側にも利権に預かりたい人々が潜むことは否定できませんが、支持者が増えるほどそうなるのが政治の常です。利権は透明性・公開性の徹底で合理的な取引になるはずです。
秋山氏は議会レポート59号(紙版)で、衆院選を次のように振り返ります。
・・・野党共闘だったら安倍一強に勝てた選挙区多数。結局「希望の党」は安倍一強に有利に働きました・・・
分断が漁夫の利を与えると言いつつも、見事に自分は別です。正義感の強さは「独りよがり」と、主張の強さは「人の話を聞かない」と、強い個性は「異端」と見られます。性格で片づけるつもりはありませんから、(コア票を除いた)死票への弔辞として書いています。
★私がなぜ辞職しなかったか? 共産党と希望の党の方は当選すると思いました。続く2人が自民党だったからです。議長と市長が逮捕されただけでは上尾の利権体質は変わらないのです。4:29 - 2017年12月27日
自動失職は既出なのですが、当初新聞には最後まで市議を務めるためとありました。後の公開討論会で「後継候補者が育たなかった」、最後は上記となり3人目を空席にしました。議席を決めるのは有権者の権利です。制度の穴をつく私物化と説明の一貫性の無さは、利権と戦う姿とは相いれません。
投票率30%台の当選には三万票が必要です。県議選の5千票なら6倍が、市議選の3千票なら10倍が必要です。その目算や達成資源が無く失業覚悟で出たのですから、石山氏とは次元の異なる動機が必要です。
その真意を、分断を狙った旧市長の策略であるという見立てがありますが、腹立ちまぎれの妄想ではと思います。暮らしぶりに変化が現れれば別ですが…。
鈴木市長誕生では、以前ほどの攻撃対象ではなくなり、自分のアイデンティティを失うからでしょうか。引退覚悟のラストランなのでしょうか。「市政に対する熱い思い」だけでは理解しがたいです。
ツイートで「上尾の利権体質は変わらない」と嘆く割には延命に手を貸したと言われても仕方ありません。大局を見る目が無いようですから、首長には向きません。
「積年の思いである”学校給食の問題”を解決してヨ、そしたら私の三千人に推薦出すワ」という提携を土産にし、その後に新市長に不満なら相変わらずの口撃をすればよいはずです。
もちろんこれはジョークです。
そんな器用さがあれば早くに政治的に振る舞ったと思うのですが、今回の二点(失職と図書館案)には市民派と言うほどの純度があるのか疑問です。下の参考記事を読む限り、長いキャリアの疲労が現れているようにも見えます。
行動経済学では「人間は必ずしも合理的な行動をしない」、「何かを選択する時は心理的な要素が大きく影響する」といいます。Rセイラーがその研究で昨年ノーベル経済学賞を得ました。有権者の投票行動にも当てはまると思ってましたが、候補者もそうでした。候補者比較表は役立たないのでしょうかね・・・
つづく
参考 第二の分断者
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