誰がアパレルを殺すのか。その前に振袖を殺すのか
冬物バーゲンセールが始まっている。お祭りみたいにセールの紙が売り場を彩る。見慣れた大幅割引だが、そもそもはセール値下げを前提とした価格設定なのだ。
まず、最近の話題に転じて「誰が振袖を殺すのか」と書きたい。
サギノヒじゃなかったハレノヒの振袖は高額品だから一人当たり30万から40万円の被害らしい。「一生に一度」という冠婚葬祭モノは高価格設定が業界の常識。でも振袖の製造原価はトンデモなく安いと思う。20%台かな、根拠ないけど(^^♪
まず名簿購入にカネをかける。該当家庭には大量のDMが来る。派手で厚いカタログが来てゴミの山(送付停止を申し込むこともできる)。展示会に行かせたらヤバイ。会場や販売員コストも高い。訪問販売員が来る例もある。いずれも歩合制かノルマがきつそうなイメージ。
殆どの振袖は中国やベトナムの工場のインクジェットプリンターによる量産品と聞く。「これは印刷物です」なーんて言われたら、親は興ざめするけど、Tシャツと同じって言われると納得するかな。
ようするに製造原価よりも流通と営業コストがめちゃくちゃ高く、一年間で短期間の売上に偏る商売だから、暴利設定になるのだろう。そこに買手の見栄が輪をかける。
ハレノヒは葬儀屋もやればよかったと思う。衰退市場と成長市場を手掛けて繁閑の差をならすわけだ。 振袖を殺すのは、少子化と18歳成人制度かな。
誰がアパレルを殺すのか
日経BP 杉原 淳一(著), 染原 睦美(著)
ワールドの大量リストラを思い出した。結局は古い成功体験に固執して変化に対応できないアパレル業界の自殺らしい。商品企画を外部に丸投げして似たような品を、早く安くのために中国で大量生産する。売れ残り前提に価格設定をし、過剰生産をやめられない。在庫があると次シーズン商品の生産に入れないから、在庫処分という悪循環から抜けられない。
共存する百貨店は売上の三割をアパレルに依存する。売場をアパレルに提供し、商品所有権はアパレル、販売員もアパレル負担という。消化仕入という、売れた分だけ仕入れ代金を払うというノーリスク経営により(本気で売らない)百貨店も同時に劣化する。
日本のアパレルの97%は海外製という。中国生産も人件費上昇が続くが、販売先は国内しか無いから値上げも難しい。
衰退の構図よりも、ITを駆使して業界の外からイノベーションを起こしているという後半の「米国発の破壊者」が面白い。
オンラインSPAという業態は、店舗は少なく、小ロットで売り切る、在庫は極力持たない、マーケティングはSNS、卸売りなしネット直販という。提携工場-オンラインSPA-消費者という短経路だ。
なんとエバーレーン社は生産と原価情報を公開するという。それでも在庫が出ると三種類の価格から客が自由に選べるという。またセール売上を寄付に回すとか、既存企業ではまねできない事ばかりだ。
「中間層が服を買わなくなった」、長引くデフレ不況のためと、環境のせいにするが、不合理で高コストな流通経路や商品政策がもたらしたものだから若い人たちがネットや合理的視点で服を買うようになったと見る方が正しいのでは思う。
ネットの威力は隅々に押し寄せていることが伺える。
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