映画・野火が伝える屍とフィリピン遺骨収集事件
昔懐かしい街の映画館という気分で訪ねた。カーナビでは着いたはずなのに、それらしき建物は見当たらず通り過ぎてしまった。塀や建物に囲まれた古い酒蔵を改造した深谷シネマは道路からは見えない。
50席ほどのミニシアターにしては不釣り合いな立派な椅子、前席との間隔も足が組めるほどだった。
塚本晋也監督/主役の映画だ。大岡昇平の原作通りと思うが、言うまでもなく、見放された餓死寸前の敗残兵がフィリピンの原野を、生死というよりも、鬼畜に堕ちるか否かの境界線をさまよい歩く姿を描いたものだ。
敵や原住民から逃げるだけでなく、仲間からも襲われ喰われる恐怖、或いは自分が鬼畜になるかもしれないという恐怖を描く。戦闘シーンは少ないが、あっても撃たれて体が飛び散るシーンが主。映像だから本よりもドギツイ。しかしそこから目を背けてはいけない、というのが作品の真価なのだろう。
本編後に塚本監督のメイキング映像がある。なかなか面白い。昔から作りたかったが障害が多くできなかった。しかし最近は戦争へ向かうような空気を感じるから今作った、のようなことを語っていたのが印象に残る。フィリピンの遺骨収集への参加や高齢の元日本兵の体験談が生々しいので貴重だ。DVDもでている。
なお、
ところが映画と連動するようなニュースが8/16に出た。NHK「 “日本人の遺骨なし” 鑑定結果を公表せず 厚労省」。要約すると…
フィリピンでは52万人が戦死し今も37万人の遺骨が残る。S32年から始まり10万人集めたが年々情報が減り、H21年に日本のNPO法人に委託。その後の収集でフィリピン人のものが混入している事実がでた。遺骨をサンプル調査した二人の学者の鑑定結果は「日本人はゼロ」。厚生労働省はこの事実を6年たった今も公表してないという。
お盆に伝えた意味深い報道だが扱いは小さい。無残な戦争に国家の命で駆り立てられ、誰彼の区別もつかない死に様をし、遺骨すら取り替えて帰還したら死んでも死にきれない。だが国はその事実を隠す。これは役人の問題では無いと思う。
明治の精神とか美しい日本とか言いながら愛国的な言動を振る舞う人が増え、「英霊の御霊に哀悼を」と政治家は人前では言うくせに、この罰当たりな厚労省に激怒し真相究明した姿はないのはヘンだ。愛国とは当時も今も事実と向き合わない方便だということが分かる。
結局はカネらしい。遺骨収集事業の多額の予算に群がる連中がいて、現地人の墓を掘って「一体いくらで売る」みたいな話がネットに出ていた。双方の悪同志の連携プレーらしい。戦争をしてもしなくても人間の恐ろしさかもしれないが、
罰当たりすぎる。
« 4-上尾市のラスパイレス指数が高い理由と対策のゆくえ | トップページ | 三つ知る人、二つ知る人、一つの人、何も知らない上尾市民向け »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- ディーガ4CW201の評価(2022.01.27)
- ドラマ桜の塔、主人公が犯人だった(2021.04.17)
- Dlife・アメリカンドラマを真似る日本のテレビ界(2018.10.16)
- 映画・野火が伝える屍とフィリピン遺骨収集事件(2018.08.23)
« 4-上尾市のラスパイレス指数が高い理由と対策のゆくえ | トップページ | 三つ知る人、二つ知る人、一つの人、何も知らない上尾市民向け »
コメント