汚職はこうして行われた、上尾市民の必読書。
第三者調査委員会の報告書が「元議長と前市長」と書くように、主は元議長、従が前市長という関係性である。一般に公文書は鎧を着て人を遠ざけるような様式だから、関心があっても近寄りがたい。だからなのか前記事のコメントのように、関心の高い人ですら読むことを躊躇するのかもしれない。
そこで、事件の実態を生々しく描いたp4-7の「3 事件(犯行)の経緯ないし背景」の(1)~(22)を全文コピーした(文字修飾を付与)。ソースはこちら。いずれ市HPから削除されるのでダウンロードを勧める。年末の市議選まで掲示すれば強い意思の表れだが、戒めとして半永久的に掲示すべきである。
3 事件(犯行)に至る経緯ないし背景事情
訴訟記録によれば、事件に至る経緯乃至背景事情について、以下のことが推認される。
(1) 元議長は、平成12年1月から平成29年11月まで上尾市議会議員を務めていた。事件当時は、前市長を擁立した市議会最大会派である新政クラブの重鎮(議会のドン)と言われており、職員の人事にも介入する等市政に大きな影響力を持っていた。
(2) 前市長は、平成16年1月から平成19年12月まで上尾市議会議員として元議長と同じ会派の1期後輩であり、元議長が市長選挙時の選挙対策本部長を務めていたことも重なり、前市長は元議長の依頼を断れない関係にあった。
(3) 明石産業(株)社長は、自己の経営する会社が上尾市の発注する上尾市西貝塚環境センターの業務を受注できるよう、平成23年頃から元議長に現金の授受をともなうこともある接待を繰り返し行うとともに、元議長を介して、前市長にも現金を授受するなどして、同人との癒着関係も深まっていった。
(4) すなわち、明石産業(株)社長は、知り合って間もなく元議長が経営する料理屋で同社社員の懇親会を開催するようになり、その席で元議長に100万円か200万円の現金を渡した。
(5) また、明石産業(株)社長は、ひいきにしているさいたま市浦和区にある浦和ロイヤルパインズホテル内にある日本料理店「四季彩」で元議長に1,500万円くらいを一度に渡し、うち500万円は元議長から前市長に渡された。
(6) さらに、明石産業(株)社長は、元議長がひいきにしているさいたま市大宮区にある「一の家」で、元議長と前市長にそれぞれ100万円を渡した。その後も元議長、前市長に対し現金の授受をともなう接待を繰り返し、元議長に対しおおよそ7,000万円を渡していた。
(7) このような、明石産業(株)社長、元議長、前市長の三者の癒着関係を背景に、下記のとおり職員を巻き込みながら、明石産業(株)のセンター本体管理業務及びペットボトル結束業務の受注に向けた様々な取り計らいが行われた。
(8) すなわち、元議長は平成23年8月頃、明石産業(株)社長と担当職員を引き合わせて、明石産業(株)に便宜を図るよう直接職員に依頼した。接待の場に黙って連れてこられた職員は焦り、嫌な気持になったが、相手が元議長であったため、席を立つようなことはできなかった。うかつな返事はできないと考えた職員は、お茶を濁そうとしたが、元議長に恫喝された。その後、元議長は当該職員に対し、電話で明石産業(株)が入札できるように参加資格を緩和するよう要求した。
(9) 前市長は、元議長の要請に従い明石産業(株)が入札に参加できるよう、入札参加資格の見直しを担当職員に命じた。センターの職員は、入札参加資格を「過去に同等の施設の運転管理業務を直接受注した実績のある業者に限定する」と主張した。しかし、前副市長、環境経済部、総務部で協議した結果、最終的には元議長及び前市長の意向に従い、入札の参加資格を「ごみ処理施設の運転管理業務を直接又は下請契約等で請負った実績を有すること」と緩和した。
(10)入札参加資格に、「下請契約等」の「等」という表現を加えた結果、ごみ処理施設の運転管理業務を下請契約で請負った実績もない明石産業(株)が入札に参加できることとなった。
(11)職員は、平成24年2月に予定されていたセンター本体管理業務の入札の数日前になって、前市長が最低制限価格をすでに決定していたと思われるにもかかわらず、再度、その入札に関する最低制限価格等を伝えるように前市長が指示したことに不自然さを覚え、前市長を通じて外部へ情報が漏洩する恐れを感じた。そのため、最低制限価格等そのものを教えることはしなかった。結果、この時の入札では、明石産業(株)は落札に失敗した。
(12)平成24年の入札に失敗した明石産業(株)社長から、平成27年の入札にあたっては確実に落札できるように最低制限価格そのものを教えてほしいという要望を受けた元議長は、その要望に応えられるように誓った約定書を作成し、平成26年1月、前市長との連名で明石産業(株)社長に渡した。
(13)職員は、施設の重要性や安全性を考え、前副市長を通じて、次の入札では参加資格から「下請契約等」を外すことを前市長に申し出たが、元議長の圧力もあり変更できなかった。そこで職員は、センター本体管理業務の安全かつ継続的な運転を確保するため、技術者配置基準等を新たに定め入札に参加する者に必要な資格を厳格化した。
(14)センター本体管理業務の入札直前である平成27年1月下旬、明石産業(株)社長から最低制限価格等を知らせるよう圧力をかけられた前市長は、職員に最低制限価格等を直接尋ねた。その職員は、最低制限価格を決めたのは前市長であり、それを教えること自体に問題はないが、前市長を通じて外部へ情報が漏洩する恐れを感じた。そのため、最低制限価格等そのものを直接教えることはしなかった。
(15)平成27年2月、センター本体管理業務の入札が執行され、明石産業(株)が他の業者よりも著しく低く、最低制限価格に近い額で落札した。
(16)落札後、明石産業(株)社長は、市が入札参加資格として示した技術者配置基準等が不当であると前市長に主張した。これを受けた前市長は、技術者配置基準等を証明する書類の提出期限を延ばして書類の提出を手伝うこと等明石産業(株)に配慮するように職員に指示した。その後、センターの職員が、明石産業(株)から市に提出された書類の確認作業を行った結果、技術者の経歴のほとんどが事実と異なっていることが判明した。このため市は、入札参加資格を満たしていなかった明石産業(株)との契約を解除した。
(17)平成28年4月の人事異動で、元議長の要求を受けて、当時のセンター所長が異動となった。
(18)明石産業(株)社長は、次こそは落札するため、平成28年9月以降も月1回から2回のペースで元議長と前市長に接待を行うとともに、今後は期待に応える旨の誓約書に署名させた。
(19)平成29年1月、ペットボトル結束業務に関する予定価格等を前市長から問われ報告していた職員は、その後の前市長の話から元議長を通じて予定価格等が明石産業(株)社長に漏れることに危惧の念を抱いた。職員は、前市長に予定価格等を報告していた自らも同様に、明石産業(株)社長に予定価格等を漏らしたことになり懲戒免職となる恐れがあると考え、前市長に対し政治生命を失う可能性があるため漏洩しないよう進言した。しかし、その後も市長から問い合わせが継続したことから、進言が受け入れられなかったことが分かった。
(20)この時の入札では、明石産業(株)は落札に失敗した。
(21)明石産業(株)社長は、平成30年のセンター本体管理業務の入札に向けて、平成29年2月以降も元議長と前市長を繰り返し接待した。その接待の場で、具体的な名前を示した人事異動、自社の要望を反映した仕様書への変更、より高額な最低制限価格の設定等要求した。
(22)平成29年6月上旬の日曜日、前市長と市長室で面会した明石産業(株)社長は、次回の入札に向けて、技術者配置基準の見直し等の自社に有利になる要求を行うとともに、現金を渡し本件贈収賄事件に至った。
P9
3元議長の職員人事等に対する不当な介入
今回の事件の舞台とされたセンターの人事等について、明石産業(株)社長にとって不都合な職員は、明石産業(株)社長の意を受けた元議長が前市長を通じ、その職を解くなど、元議長と前市長との力関係を反映し、不当な人事介入がなされた。そして、そのような不当な人事介入が繰り返されることにより、職員の中に、元議長等の意向には逆らえないとの雰囲気が醸成され、職員まで巻き込む事態に発展した。
P12
(1) 政治倫理基準の明示
市長や市議会議員等が法令を遵守することを明示する。また、不正の疑いをもたれる恐れのある行為、例えば、市が行う契約に関連して、特定の業者から金品等を授受することや特定の業者を推薦、紹介等有利な取り計らいをすること、自己または親族が実質的に経営する企業に受注させること等を明示し、これを禁止する。
上に抵触しそうな現職議員がいるため、議会側の報告書では盛り込まれなかった。
----
H29/10/30、上尾市西貝塚環境センターの業務に関する入札を巡り、島村穰上尾市長、田中守上尾市議会議長、明石産業(株)山田明社長らが共謀の上、秘密事項を漏らし、官製談合防止法違反や公契約関係競売入札妨害の疑いで逮捕された。
さらに、社長と元議長はあっせん贈収賄で、社長と前市長は受託贈収賄で、再逮捕、起訴され、H30/4月までに起訴事実すべてについて有罪が確定した。二元代表制を根底から揺るがし、職員も巻き込む前代未聞の事態であった。
前市長には懲役2年6か月、執行猶予4年、追徴金60万円、元議長には懲役2年6か月、執行猶予4年、追徴金50万円、社長に対しては懲役1年6か月、執行猶予3年の各判決が言い渡され、控訴されることなく判決は確定した。
了
最近のコメント