業種別年収とアベノミクス6年効果
国税庁・民間給与実態統計調査(平成30年分)より
この調査については利用上の注意(国税庁)として、「標本調査のため、標本事業所及び標本給与所得者から得た標本値に、それぞれの標本抽出率及び調査票の回収率の逆数を乗じて全体の給与所得者数、給与額及び源泉徴収税額を推計している・・・」とある。また2018年の各データの標準誤差率は0.5~5%内にある(概ね1-2%)。
1.アベノミクス前後の年収比較
グラフの青棒は2018年の業種別年収である。ピンク棒は、アベノミクスの前年(民主党政権2012年)との6年間の差額、折れ線は伸び率を示す。
全体の増額は33万円(8%)であるが、突出するのは建設業71万円(16%)と不動産賃貸業72万円(19%)である。東日本大震災からの復興需要と東京オリンピックの特需、都市部でのマンション需要などを背景に建設業は人手不足のため人件費の高騰はたびたび伝えられていた。製造業が47万円(10%)と伸びているのは円安効果かも知れない。
2.散布図で業種別の実態を示す
この調査では日本標準産業分類により14業種にわけている(業種内容はこちら
)。以下は業種別の実態を見るための散布図である。縦軸は年収、横軸は給与所得者人数、円サイズは人数のシェアを示す。
平均年収が759万円と最高額である「電気・ガス・熱供給…」の人数は17万人で全体の1%にも満たない。人数最多の製造業は520万円と平均を80万円上回る。しかし、内需に依存して雇用の受け皿となっている「卸・小売業」、「サービス業」、「医療福祉」の3業種は400万円以下である。
3.高給業種と薄給業種の比較
前記事の5番でも扱った、トップと最下位の業種について 年収区分ごとの給与所得者数の構成比である。なお、電気ガス系の人数は17万人、宿泊飲食サービス業は216万人である。

「宿泊業飲食系」で一番多いのは100万円以下の人で27%もいる。「電気ガス系」では1000~1500万円の人たちが一番多くて19%もいる。全体として見ても、「宿泊業飲食系」 は200万円以下の人が半分以上、「電気ガス系」 は800万円以上の年収をもらえる人が4割以上もいる。
実は、上とは別に「勤務が一年未満の人」は宿泊飲食系で113万人もおり、その短期労働者への依存度は34%と全業種で一番高い。つまりアベノミクスで雇用が増えたと言っても、主に年収水準の最下層で増えていると言えそうだ。
追記 5/21日経によれば
大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は2.17%。平均引き上げ額は19年比1013円減の7297円だった。7年連続で2%台を維持したものの、伸びは2年連続の鈍化。・・・3月上旬に妥結した企業が多く、コロナの影響は限定的・・・
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