民間の平均年収は441万円 男545、女293
国税庁・民間給与実態統計調査(平成30年分)より
いろいろなサイトで給与(年収)情報が載っているが、信頼できるのは国税庁の調査である。2万事業所と33万人の給与をサンプルとした統計的な推計である。詳しくは国税庁サイトと概要書へ。
p6-8 | 2018/12/31 | 前年比 |
人数 | 5,911万人 | +101万人 |
給与総額 | 224兆円 | +3.6兆、7.8兆円 |
源泉徴収 所得税 | 11兆円 | +10%、1兆円 |
所得税÷給与 | 4.9% | |
一人当たり所得税 | 19万円 |
個人所得税は11兆円と前年より1超円も増えて過去十年で最高となったが、コロナによる十万円給付の12.9兆円(事務費1500億円!含む)は、それを上回る。
それでも足りないという人や政治家もいるが、どんな名称であれ、給付とは皆で負担し合うことと同義であるのに、彼らは「給付しよう」の代わりに「皆で負担しよう」とは言わない。ここだけは同調圧力が働かず、負担する人の顔が見えない方法をとる。赤字国債とは、将来の若者の所得を今の我々が消費するという、平成時代から繰り返される資金調達方法である。だから、それを察して子供は生まれてこない…。今回は非常時だから仕方ないが、問題は平時から依存している状態だ。
以下では、同調査から「一年間勤務した給与取得者」(5026万人)に関するデータを扱う。
1. 一人当たり平均年収
2018年の平均年収は441万円。内訳は、年間給与371+賞与70万円。平均年齢は46歳である。男女別と雇用形態別に示す。金額は万円。
雇用形態 | 全体 | 男 | 女 | 男女比 |
全体 | 441 | 545 | 293 | 54% |
正社員 | 504 | 560 | 386 | 69% |
非正規 | 179 | 236 | 154 | 65% |
人数と給与総額(年収)にしめる雇用形態と男女比は下の通り。人数では正規職で男性が女性の二倍、非正規では女性が多い。(クリックで拡大)
2. 年収ピークは467万円、ほぼ四半世紀前
85年からのバブル経済では6年間で100万円も年収が増えた。その後も緩慢な上昇を続け、民間の年収ピークは1997年の467万円である。その後は2006年まで9年連続で下げ、リーマンショック時は23万円(-5.5%)も急落した。この落ち込み分を取り戻すのは大変となる。アベノミクスによる企業業績の好調と(労組顔負けの)経済界への賃上要請などにより、安倍政権の5年間で27万円の上昇となる。2018年はリーマンショック前まで回復した。
19年も1%増ほど予想されるが、企業業績は頭打ちの所に秋の消費税値上で景気後退感が鮮明になっていた。そしてコロナ禍により20年は急落が避けられず、日本経済での民間労働者の年収ピークは四半世紀前のままとなる。
3. 人数規模別の年収 p21
性別による待遇差、勤続年数や企業規模の差が大きいために、男女の全体値ではピンとこない面もあるから、男性のみの年収を抜き出した。
人数規模別 | 男,平均給与(千円 | 平均年齢 | 賞与比率 | 対A比率 |
1~10人未満 | 4,469 | 52.5 | 4% | 66% |
10~30人未満 | 5,071 | 48.1 | 10% | 74% |
30~100人未満 | 5,183 | 46.2 | 14% | 76% |
100~500人未満 | 5,239 | 45.0 | 18% | 77% |
500~1000人未満 | 5,721 | 44.7 | 21% | 84% |
1000~5000未満 | 6,232 | 43.8 | 22% | 91% |
A 5000人~ | 6,819 | 43.1 | 23% | 100% |
全体 | 5,450 | 46.3 | 16% |
事業所の人数規模が多いほど年収が増え、年収に占める賞与も増える。参考として右端に5000人以上の規模(A)に対する比率を示した。
なお、全体の44%の人が規模100人未満で働いている。日本の中小企業主は同業者間で合併を繰り返して規模拡大(効率化)を目指すほうが労使にメリットがあると思う。
4. 資本金別の男女別の年収 p16
実は個人事業所は50歳、資本金1億円以上は43歳であるように、資本金が大きいほど平均年齢は若くなる。グラフの通り、年収の男女格差も開くが、勤続年数の差も要因の一つである(最大差で6年)。
賞与額は省略したが、「男性の10億円以上」では年収に占める賞与は24%と四分の一になる。
5. 業種別の平均給与 p23
二つのソース(HPの表と概要書)からの合成のため、端数調整で一部合わない所があるが年収額は一致している。なお、全体の平均は給与371万円+賞与70万円=441万円である。

最下位の「宿泊,飲食業」の給与は233万円なので月収は20万円に満たない。その年収251万円は、トップの「電気ガス等」759万円の三分の一である。
●業種別の給与階級別の人数分布
概要書のp23に、一つの業種における年収区分ごとの人員構成がある。以下は引用。
平均給与が最も高い「電気・ガス・熱供給・水道業」では800万円超が40.6%と最も多く、それに次ぐ「金融業,保険業」でも800万円超が25%で、最も多い。一方、平均給与が最も低い「宿泊業,飲食サービス業」では100万円以下の者が27%と最も多くなっている。
地域独占や認可性の業種など、つまり新規参入障壁が高くて競争が希薄な業界ほど高くなりやすい。例えば、電力業界などはコスト積み上げ方式が認められているから高コスト体質になる。そして参入障壁が低く、最も過当競争になるのが飲食業や小売業である。また、人手不足を外国人労働へ依存する業種は賃金が上がりにくいと言われる。
6. 年収区分の分布 p20
年収額別の人数分布は、全体では300~400万円以下の人が867万人(構成比17%)と最も多く、次に200~300万円以下(15%)となる。
図は男性のデータである。400~500万円が18%と最多層になる。500万円以下は56%になるため、平均値(560万円)以下は約63%と推定される。また、800万円超は15%である。
女性は、100~200万円以下が女性全体の24%、次いで200~300万円以下が21%である。
7. 所得税の負担状況 p24
1年を通じて勤務した5026万人のうち85%が納税しており、納めた人の平均値は25万円、年収の5%になる。※

しかし、年収800万円超の人は全体の487万人(9.8%)であり、その所得税は6兆9,233億円で全体の66%を占める。つまり一割の人が個人所得税の三分の二を負担している。累進税率による効果と収入が増えても各種の控除額は増えないためだろう。
※一年間勤務者でかつ納税したひとの値であり、本記事先頭の表とは異なる。
つづく 地方公務員の年収へ
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平均年収以上の給与を得ていますが、全国転勤による家族への負担、異論がある人もいますが、勤務先に就職するまでに、相当の学費(とお勉強)をしてきました。
数字だけ見て、「革命だ」と勘違いする人もいるかも。
体が悪く働けない場合は別として、怠惰な生き方をして、貧しい生活を何とかしてくれという方を救うのは神の仕事でしょうか。かつて物流子会社時代、ドランバー研修を担当した時、英字新聞を読んでいた人がいました。
組織社会にあわない人でも働き口はあるものです。
中学生でも知っている漢字を読めない人もいました。
標識がよめなくて大丈夫か?って
投稿: 本好き | 2020年5月30日 (土) 08時08分