補正で36%も膨れたコロナ太り予算-1
危機を食べて膨張し、連続性を失う姿へ 続きはこちら
上尾市は補正予算を4月に三回、5月に1回、6月に2回も組んだ(こちら)。これは3/23日に、コロナ問題が確実に予想される時でも「コロナが無い前提の予算」を可決したためでもある。機動的と言えばそれまでだが、その裏には変化に即応できない形式主義も見えてくる。
グラフは、2018年のリーマンショック後から今日までの上尾市の歳入(収入)を主な項目で見たもの(クリック拡大)。金融危機や大震災、そしてコロナという危機が起きると家計や企業は引き締めを図るが、公会計は危機を食べて膨張する。
右端の2本は、2020年度予算の当初657億円と「10万円給付」を追加した補正後892億円の姿である。10万円の元となるピンク色の国庫支出金に235億円が加わり全体が36%増えた。もちろん、原資は赤字国債という国の借金である。
自治体の予算は歳出=歳入というバランスが前提であり、歳入-歳出=余剰を大きくする事を目指すわけではない。家庭は収入の範囲で支出をするが、自治体は逆に、歳出(支出)のために歳入(収入)を調達しているようにみえる。
今回は、歳出側の民生費が326億円+235で561億円に膨れた。もともと上尾市は民生費が多い所にきて、予算の63%になってしまった。なお民生費には職員人件費や管理費が含まれるため、それを除いて対象者に配るカネとして見たのが扶助費である。2020当初予算は丁度200億円である。参考までに2008年からの伸びを示しておく。
■本稿では棒グラフが示す、過去数十年の連続性が大きく崩れたことを歳入面からみる。
まず自前のカネである地方税は頭打ちであることが分かる。
・地方税の中でも景気変動を受けずに安定する固定資産税は今年は減免政策を既にとっているから減るだろう。上尾市では毎年、1000~1200件の住宅建設(建替え含む)があり、税増収のアテになっていたが、どの程度が落ち込むのか分からない。コロナ移住と言う現象は東京のコロナ被害の少なさからは期待できないし、あったとしても(上尾のような)郊外を飛び越えて新幹線停車駅まで行ってしまうかもしれない。
・市民税は前年所得に課しているため今年は納付率が気になる(通常99%)。そして、来年の税減収は避けられない。リーマンショック後の2009年には11億円(-7%)減ったが、来年はその比では無いだろう。
地方交付税は使い道が自由だが26億円しか配給されない。増えないのは国が抑制的だからだ。国庫支出金とは福祉や教育など国の政策使途が指定されたカネである(生活保護費など民生費が多い)。
地方債(借金)は49億円である。近年、大型公共事業を手控えているために多くはない。だから、小口案件にモラル無き業者がたかるのかもしれない。なお自治体は資金繰りのために借り入れをすることはできない。
そして、棒グラフの数年先の姿が気になるのだが、その点について上尾市財政課は「財政収支の見通し(~令和6年度)」というラフな試算を出している。職員人件費が聖域扱いされたシミュレーションである。この見通しについはまたの機会に・・・。
つづく 6月補正の内容へ
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