気の毒な映画館とパラサイト
夜の客はスクリーンの数より少ないかも
映画館でおしゃべりすることは無い。短いひそひそ話が関の山だ。
映画館はコロナ以前から感染症対策として法に基づく換気システムが装備されている、と最近知った。つまり家庭や会議室よりも換気が良い。そして、多くの映画館はそんなに客が来ないから密になることもない。それなのに二か月位も休館し、開いたと想ったら、あの手この手の感染症対策で気の毒だ。病院の入り口で検温などしないのに、映画館に検温までさせるのは過剰対策だ。
そして、何でか知らないが、古い映画をやっていたりして、コロナ以前の上映スケジュールとは随分と違う。
「パラサイト 半地下の家族」をみた。
以下はネタばれあり。
予告編から想像していたのは、主役の貧乏家族が金持ち一家の地下室に、違法に棲みつく(寄生する)話しかと思ったが、それは勘違いだった。家庭教師や運転手などの仕事を得て一家丸ごと、就職したに過ぎず、そのプロセスに嘘は有ってもコミカルに描かれていた。
ところが、豪邸には地下室(北朝鮮との戦争状態のためにシェルターがある)があって、既に棲みついている人間がいたという展開はドキッとさせた。
いよいよ本当の物語が始まる感じと思っていたが期待外れな展開だった。格差社会のあり様を、家族構成を似せてユーモラスで描きながら、最後はバイオレンスな展開で寄生生活が終わってしまった。コメディから殺人へという極端な振れはエンタメ性への拘りなのだろうか・・・。
地上の金持ち家族、半地下の主人公家族、地下室に夫を潜ませる前家政婦という三層からなる家族間でどんな葛藤劇があるのかと期待した。弱者は、さらに下の人間を見つけて虐待するとか、或いはハリウッドが作れば半地下家族が金持ち家族に挑んで巧妙に豪邸を奪い取るサクセスストーリーにしたかもしれない。
芥川賞や直木賞みたいに、アカデミー賞受賞作品だから凄く面白いというわけでは無かった。
昨年に見た「ジョーカー」は本作と競ったらしい。極貧な環境から悪に陥る姿が描かれている点では似ているものがある。また、格差社会を描いた点では是枝監督の「万引き家族」も似ているが、こちらの方が人間や社会の描き方は丁寧だと思う。
日韓の映画で共通するのは、貧乏だけど仲良し家族に描かれていることだ。現実は貧すれば鈍するで、家庭が乱れやすいと思うが、それでは見ていていたたまれない。ただし、不安定な生活から抜け出す姿を描こうとしないのは、現実が深刻過ぎてそんな姿を描くときれいごとになるためなのだろうか。しかし社会への警鐘だけだと、貧困ビジネス風にも見えてしまう。
時代に翻弄される家族(子供)と言う点では「泥の河」を想い出す。
はるかに名作だと思う。
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