バラマキ政策で票を買う日本
12万円で歓心を買う区長、5万円話しで買収した岡崎市長
選挙とカネの問題では、アメリカでは有権者が候補者に献金をする話ばかりが伝わるが、日本はその逆ばかりだ。買収で逮捕された河井夫婦議員は議員報酬をもらいながら今も健在である。
千代田区の石川雅巳区長(79)は三番町のタワマンの事業協力者住戸を地権者では無いのに購入できた件で癒着の疑惑が言われ議会でもめた。その区長が、(高所得の多い)区民に一人12万円(66000人で85億円)を給付すると決めたのは、区民の目をそらすためだと思う。動機は違うが、東京都では品川区は一人3万円、新宿区ではコロナに感染した人に10万円給付などがある。
こうしたリッチな給付金配布の報道では、「大企業本社のおかけで税収豊かだから羨ましい」という声を載せる。でも、富の根本は国の政策で資本と人が集積した効果であり、区民の努力だけではない。首都移転や本社移転があれば分るだろう。
特に今の経済状況では、カネを配る政策で有権者の歓心を買おうとする政治家が現れやすい。税金だと分かっていても、コアな支持者達が「彼のおかげ」というように、自分のカネを配ったような顔をされるから困ったものだ。
少し前、公明党が大学受験生に2万円を配れと主張した。受験生だけでなく就職する高校などの最終学年115万人と浪人生約11万人を対象として280億円の規模という。これは自民党から反対されて実現しなかったが、衆院選挙の可能性が高かったら分からない。
そしたらとうとう、当選目当てでカネを配る候補者が現れた。そして見事に市長に当選した。
徳川家康が生まれた愛知県岡崎市は自動車産業もあるから財政は良い方だ。そして岡崎高校と言えば東大進学が多い公立校としても有名だ。
元民進党衆院議員の中根康浩氏は、3選を目指した内田康宏氏に無所属で挑んだ。告示5日前、新型コロナウイルス対策で「全市民に1人あたり5万円、税金をお戻しします」と公約を追加。18日の選挙で3万票余りの差をつけて当選した。
財源195億円の内訳は、コンベンション建設中止(80)+財政調整基金(100)+一般会計から(15)。というものだ。しかし、建設費80億円といっても引当済みの実額ではないから、実は0円である。財政調整基金※とは自治体の貯金のことで最新値は80億円だった。※こんな小難しい表現が良くない。
しかし、中根氏は国会議員までやった人であり、この程度の裏付けは選挙前に精査できたはず。だから当選後に、できないことが白日に晒され、不足分は他の目的別貯金(施設改修、公園)にまで手を付けると言い出しメチャメチャになっている。ニュースでは
「嘘つきだもん!泥棒じゃん!5万円欲しいもんで(票を)入れたんやん。そりゃ公約守らな辞めてもらうしかない。公約違反!」 (東海テレビ)
実は、千代田区の給付金を伝える街頭インタビューでも「欲しいよね うれしいです 単純に」という声(区民ではない)を伝えていた(FNN)。
公約を守らないからサギなのではなく、公約そのものが詐欺なのだと思う。それなのに、上は典型的な大衆の声として伝えているのだろうか? こういう表面的な伝え方には違和感がある。
社会を構成する法人や個人の多くが税金を納めているわけでは無い。中小企業の6割強は赤字なので地方税分の均等割り程度で済んでいる。個人でも無税の人は相当多い。ただし固定資産税は基本的に払わざるをえない。
だけど、カネ欲しさに投票したなんてことを国民が平気で言えるようになると、この国は確実に衰退か自滅途上にあると思う。
「タコ足配当」という言葉がある。業績不振のくせにムリに配当して株主に体面を繕うことだ。
配当金の原資は貯金の取り崩しや資産売却だったりする。これは、飢餓やストレス時にタコが自分の足を食べる(自食行為)の喩えなのだが、今の日本人は自分の足を食べているわけでは無い。他人の足を食べているか、産まれてもいない子供の足を食べている、と言った方が正しいだろう。
だから、菅首相が「自助」を口うるさく言っているのは、日本の衰退を防ぐのはお手上げだ、という意味になる。
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コメント
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荒川氾濫
謹啓
平素御世話になっております。
近年大型台風が多発する気象状況となり、上尾市は去年台風19号により被災して床上浸水47軒を出しました。
平方地区の土手の造成は喫緊の課題です。
さいたま市側は氾濫していませんが、今年土手を2m嵩上げしました。
この土手こそが平方に必要でした。
用地買収があり国交省の上尾市側の工事の予定は10年後です。
鉄筋コンクリートでの堤は狭小地で早期にできますが国交省は工法を変えません。
今年の台風10号(室戸台風超級)は幸運にも逸れましたが
来年以降も上尾市は被災の危機に晒される。
投稿: 領家 鈴木 | 2020年11月12日 (木) 11時52分
愛知は尾張地区は名古屋大、三河地区は東大って印象。
それはともかく、昨今の政治家の教養のなさは、街頭インタビューの事例と無関係ではない。
世も末、徳政令一揆も歴史にあります。宗教党も商品券配りが得意です。前政権の10万円バラまきも同類。
一億総○○化の言葉が現実になってきたようで心配です。
投稿: 本好き | 2020年11月14日 (土) 20時20分