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2020年11月17日 (火)

アメリカの分断社会と日本

寄稿への返信を兼ねて・・・

先日、コメントが二つ来たのでそれへの返信も含めて書いています。長文です。

8月にベラルーシのルカシェンコ大統領は事前に対立有力候補者を拘束するなどして得票率80%で6選を果たした例がありました。内外から不正選挙だと抗議されています。その連想で選挙妨害(投票所焼討ち)を危惧しましたが、アメリカはそこまで落ちぶれていませんでした。

予想通りバイデン306 対 トランプ213でした。

数字ほどに勝者の高揚感が無いのは、得票差1%未満が3州もあって開票に時間がかかったためでしょう。選挙前からトランプ陣営が郵便投票は不正だと言い張っていたのは、開票の逆転効果を恐れていたわけですから、彼らはある意味予想通りでした。

11/16現在、バイデン78,675,847票(50.8%)、トランプ73,115,212票(47.2%)その差は3.6ポイントです。前記事で示したブッシュ、オバマらの再選時並みにフツーの範囲です。でも共和党は下院で議席増、上院でも互角なので党としては健闘しています。

相変らず勝者総どりのヘンな選挙人団方式ですが、大統領選に直接選挙を望む世論は6割くらいあり、見直しを求める州も増えているとあります(実現ははるか未来でしょう)。でも開票をポランティアがやったり、州の選挙管理委員会が外圧に屈しないなど、流石アメリカです。コロナ禍で投票率67%と近年最高となり、当日投票は全体の35%位なので郵便投票の効果にも驚きました。

コメントに「(トランプの)得票の多さをどう考えるか」とあります。理由として下「2.分極化グラフ」や3の日経記事をあげてみますが、とにかくコロナ死者の約25万人はベトナム戦争の6万人戦死どころじゃないのに大統領の責任が問われませんでした。日本人の感覚では理解できません。


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アメリカのコロナ感染マップはレッドステート化していて悲惨です。

気になるのは、このような分断が日本で起きないかという不安ですが、それは無いと思います。日本人には「私」が無いからです。またアメリカと比べたらずっと社会主義化しています。

 1.最後まで大言壮語するトランプ

トランプ大統領は「米国の利益よりも自身の再選と一族の繁栄を優先していた」とボルトン回顧録に書かれました。一期だけの人は「失敗大統領」と見なされるため、落選を受け入れられないのでしょう。離職後の訴訟や資金繰り不安も伝えられています。

テレビで、トランプ支持者が「大統領選挙で不正があった」と主張する集会ニュースを伝えました。その規模をトランプ氏は数十万人とツイートしました。うそをつくことは悪ではなく「生き方」の一つ』と父親から教わり育った人です(世界で最も危険な男)。さすがに提灯サイトのFoxは一万人、他ニュースサイトは数千人と伝えます。

 写真が本当か否かを指摘するツイッター。四年前の就任式の観衆が史上最多事件を想い出します。

またデモ参加者の声を、NHKは「来月、結果が確定するまで選挙は終わらない。不正のない、公正な選挙を望んでいるだけだ」と伝えましたが、面白いのはTBSの方です。

・「自分の調査ではトランプ大統領は負けていない」

・「心の中では間違いなく不正があったと思っている」

これって、案外、今の共和党が「感情の党」といわれることを裏付けます。

所で、MSNBCサイトは「何千人ものトランプ支持者がワシントンに集まり、不正選挙を誤って主張する」と伝えました。Factだけでなく「間違った主張」だというオピニオンを付けます。NYタイムズも同じでした。 

2.アメリカ政治の共和党と民主党の分極化が進んだ

ビューリサーチセンターの調査が有名です。社会保障、環境、平和、移民など10の政治的質問をして、支持者の党派性のバラツキを調べたものです。1994年には両党支持者の考え方はかなりオーバーラップしていたのに、2017年にはその中央値が大きく離れ、両端へ大きく増えています。

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このサイトでは時系列変化がアニメーションで見られます。特にトランプ大統領後の2017年が極端です。結局、価値観の対立になっていて、これだけ離れると、反論は説得になりません。相手候補には投票しないと言う人が多くなり、それが7千万票の理由だろうと思います。

Quoraで共和党の変質を米国弁護士が書いていたので要約引用します

オバマ氏に負けてから共和党は総括をした。結論は、白人だけにアピールしていたら勝てない。ヒスパニック系にも歩み寄り支持者の多様性を増やす事、移民を迎え入れる融和政策が良いというもの。

しかし、トランプ氏はそれと真逆の候補者。移民に暴言を吐き、ヒスパニック系米国人を「殺人犯、強姦魔たち」と呼び、徹底的に「白人主権」の政策を推し進めた。なので、2016年の選挙にて、共和党は他の候補を推して、何としてでもトランプを止めたかった。

トランプ氏が勝ってから共和党を「トランプ主義」に作り替えた。党内の敵対勢力は叩き潰し、トランプ氏を苦々しく思った政治家は追い出されたか、引退したか、声を潜めたか。

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これを読むとグラフで2017年が極端化した理由が分かります。でもトランプ氏は分断の原因ではなく「症状」です。なぜ支持されたかは下が参考になります。なお、今回の選挙は中道バイデン氏だから勝てたのだと思います。左派サンダースではトランプ再選です。まだまだ「社会主義者」は嫌われます。
ちなみに下院では共和党の新人・女性候補が多く当選して話題になりました。

3.四つの分断

日曜に、「4つの分断、トランプ2.0を生みかねない米国」という日経記事がありました。次のトランプが現れるかもと書き、素地となる四つの分断を指摘します。簡単に要約しました(青字部分)。

第1は経済の分断。

FRBによると上位1%と下位50%の保有資産割合は33%対2%という格差拡大の指摘だ。

コロナ以前よりも米国株は堅調です。トランプ大統領による富裕層減税も寄与しており、常に株高を一番の手柄のように吹聴します。ところが下位層にカウントされる多くの支持者は格差拡大の因果関係を見ません。株価はコロナ対策の財政支出拡大によるバブルであり、その恩恵は上位1割の金融資産保有層に帰属します。

第2は人種の分断。

白と黒の国だったのに今は『レインボー』の国になりつつある。地位の喪失などで、非白人への寛容さを失う白人は少なくない。民主党も人種などの違いを際立たせる「アイデンティティー政治」に走りすぎ。

民主党のマイノリティ支援が不公平だとみる白人が多いのだと思います。この辺りは、日本でも生活保護者やひとり親世帯等の弱者支援策とか高齢者への福祉政策へいら立つ傾向があります。以前、過剰リベラルが産みの親だという指摘を見たことがあります。オバマ氏を嫌う人と一致するようです。

第3は政治の分断。

保守とリベラルの対立は理性で制御できる領域を超え、嫌悪感や敵がい心さえ抱く。エリートと非エリートの対立もある。学歴の高低が米欧の最も深刻な分断軸のひとつだという指摘もあり、学歴格差は、政治の支配層と被支配層を隔てる要因になっている。

学歴格差の指摘には違和感があります。産業構造や成長との関係だと思います。日本でも昔なら高卒者が就く職業に大卒が従事しています。この辺りは、クリエイティブ・クラス化※が起きていると見た方が良いです。ブルーカラーやホワイトカラーではない知識や文化創造型の仕事をする階層です。

※Wikiより アメリカの脱工業化した都市における経済成長の鍵となる推進力と認識された社会経済学上の階級。

参考 大統領選挙の出口調査から、人種と教育の一部を引用

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第4は世代の分断

人口の22%を占めるミレニアル世代(1981~96年生)と、22%のベビーブーマー世代(46~64年生)との価値観の相違は著しい。私たちが米国の平和と繁栄の土台を築いたのだと説教を垂れるベビーブーマー世代と、経済的な格差や人種間のあつれき、政治の機能不全などを放置してきたのはあなたたちだとなじるミレニアル世代との断層の一因がうかがえる。

この世代間対立は万国共通みたいです。
追記 
他にも、記事では取り上げていませんが、価値観の対立とみれば宗教対立も大きいはずです。バイブルベルトと言われる南部はトランプ氏の支持層と重なります。中でも「聖書の言葉が絶対」という理解をするキリスト教福音派の人には政策論争は届かないのだと思います。

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記事の最後には、低中所得層、白人、非エリート、高齢者……。一方の極をなす人々の不満や怒りにつけ込み、「偉大な米国の復活」というスローガンで動員したのが、トランプ氏と共和党による右派のポピュリズムだった、と指摘します。

これを読んで、「戦後レジーム(体制)からの脱却」を政権発足時から掲げ、その中身は曖昧なままに憲法改正に執着したり、「美しい国」とか「一億総活躍」、「国土強靭化」などの言葉を好む安倍首相はトランプ氏に似ています。トランプ氏は「偉大、美しい、歴史的、とてつもない」をよく使います。

二人とも懐古的であり内向きです。また女性よりも男性支持率が高い点で共通するのは、共に父権主義者だからです。たぶん、本を読まないという点でも似ているかもしれません。

  

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