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2021年9月 4日 (土)

ぼくはイエローで描かれた多様性社会への躊躇

日本がそこへ進むのは まだゆっくり。

ブレイディみかこ著 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー (新潮社)

 どうしてリスエストしたのか忘れた頃に貸出順番が回ってきた。図書館に10冊位ほどある人気本で、オール貸出し中だ。目に見えない予約行列は当節のワクチンみたいだ。下図クリックでアマゾンへ

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博多出身の日本人女性(著者)はイギリスのブライトンという街に20年も棲む。イングランド出身の連れ合い(夫とは書かない)との間に生まれた息子を中心に、人種や文化の多様性や経済格差の葛藤の中での学校生活や暮らしを描いている。

 とても読みやすく、お勧めしたい本である。

 いきなり、地元の「底辺託児所」で保育士をしていたとか、名門カトリックの小学校を卒業した息子が、地元の「元底辺中学校」へ行く、等々、遠慮のない表現が良い意味のインパクトを与えている。この本は、その入学前後の一年半ほどの日記、あるいはエッセイをまとめたものらしい。

 憧れを抱きそうな英国暮らしではなく、全編、「母ちゃん、父ちゃん」と書く気取らない表現が読者に親近感を持たせる。実際は、息子と母ちゃんの会話が多く、父ちゃんは時々加わる程度だ。(思春期の)男の子が、これほど母親と話し合える家庭は(イギリスでも)珍しいのではと思うが、賢く感受性豊かな優しい息子である。

 イギリスでも子供の進学は一大事で、学校の情報公開が盛んなために学校ランキングがあるという。学校と家との距離が近い子が優先されるためランキングの高い学校の近くへ引っ越す親が多く、住宅価格が上昇し富者と貧者の棲み分けが起きているという。日本にもあるが、もっと浸透しているわけだ。

 中学校を選ぶ時、かって白人労働者の子が通う地元の底辺中学が、新校長の教育改革でランキングが中位になっていたので母子で見学に行き、息子の意思で選んだ。母ちゃんの目には、進学校は校舎が立派でも教室風景は、前席に真剣な生徒たちがいる一方、教室の後ろ側は別世界となり学校が教育放棄をしているように見えた。

 反面、元底辺中学校では、授業についていけない子は廊下に席を設けて他教師が指導し、「取り残される子供を作らないのがモットー」だと言う。

 著者はイギリスを階級社会とハッキリ書くように、子供を取り巻く家庭環境の差は日本とは比べようがない。

 かつてこの中学校には、制服が買えないとか、昼食を買えず腹をすかす子供などがいて、教師らは自腹で支援するなどソーシャルワーカーみたいだという。保守党政権による緊縮財政によるもので、今でも貧困地域の子が通うためそれに近い状態がある。

 母ちゃんは息子の入学を機に制服リサイクルのボランティアを始めた。古い制服を預かり修繕し100円とかで校内販売する活動だ。一着しか持てない家庭の子は、洗って乾かない服をそのまま着てくることがあるのだと先生が嘆く。穴の開いた制服で通う友達に、傷つけないように息子が自然に渡す気づかいが印象的だった。

 想い出したは、日本では中学や高校を卒業すると制服が不要となり何着も資源ゴミに出されること。日本はおニューを買うのが当たり前で、リサイクル品では子も親も恥ずかしいという世間体がある。それを飯のタネにするのが学校指定という仕組みかもしれない。地域の産学連携みたいなもので、どう見てもさえない店構えなのに、なぜか潰れない教育関連品の小売店ってあるよね…。価格競争の働かない談合、既得権である。

  息子は、日本に里帰りすれば「ガイジン」と呼ばれ、こっちでは「チンク」と呼ばれる。だからどこにも属している気持ちになれないと嘆く。時には友達からの差別的な言葉に悩むが、母親との会話や友達関係を通して成長していく。生活の全てに人種と経済格差が絡み合うのだが、非白人でも高い教育で高収入の職業に就く人もいれば、白人の低教育による貧困層もいるので単純ではないが、それが固定化しているようだ。

  異国籍の親の元に生まれた人への呼称が難しいと思った。息子は、「ハーフって半分という意味で酷い、かといってダブルで2倍かよ」って怒っていたように、よい表現がない。ミックスも最適なのかは分からないが、昔は平気で混血児とか言っていたのであまり良い連想がしないのだが・・・。

 多様性と言えば、先の東京オリンピックで日本チームにはミックスだけではなく白人や黒人の日本選手がたくさんいた。特にボール競技は外国人コーチだけではなく、彼・彼女ら抜きでは世界レベルにならない。スポーツ界は人種多様性の最先端であることがとても良く分かった。八村塁を旗手に、大澤なおみを最終聖火ランナーに選んだことには時代の大きな意味があるのだなと、読後感としても理解できた。

 で、一流のミックス選手になれば差別は少ないだろうと思っていたが、SNSでは匿名の差別的言葉をしょっちゅう投げつけられると八村塁選手が嘆いていた。普通のミックスなら猶更だろう。この本では差別的表現にならないように気を使って接していても、受け止め方が異なることで、逆に差別的言葉を投げ返されるという例もあった。

 所で、イギリスでも自国民がやりたがらない仕事を移民にさせるように、日本も実習制度を使い、日本人がやりたがらない仕事の穴埋めに外国人労働者を使っている(介護職も)。彼らは、通貨の為替レート差があるから低賃金でも我慢しているが、これから円安が進めば来日動機は消えてしまうだろう。

 LBGTQの話が出てきた。

 学校の授業でやるのだが、Q(性自認・性思考)について学校帰りに息子達が話していた様子があった。(うろ覚えだが)ボクは男(異性愛)だなとか言う中で、一人がまだ分からないというような事を言っていた。この辺りは、子供達は成長しているんだね、風にあっさりと書いていた。

 想い出したのが、昔読んだアメリカ社会の過剰リベラルの話し。

 リトル・マーメイドも叩く過剰リベラルの罪(東洋経済)

 リベラルの強い州における小学生への性教育について、リベラル派の親たちも辟易しているという内容だ。記事には書いてないが、学校から帰ってきて、「ママー。私は男なの、女なの、どっちにしようかな」みたいなことを尋ねられ、困惑する姿を想像してしまう。確かにそりぁ困るだろう。

 先の東京オリンピックでは元男性の重量挙げ選手がトランスジェンダーの女性選手として参加した。もはや理解不可能な領域に入っているとしか思えない・・・。

 

 本書はお勧めです。

 

 

 

 

 

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