買収公約って効果あるのか?
日本人は、バラマキ選挙公約に釣られない、だろう。
感染減少には日本人のマスク装着率の高さがある、と欧米から褒められたりする。清潔感や民度の高さという意味もあるから、こそばゆいけれど、それが日本人のモラルの高さへと拡大解釈できるかは今から試される。
去年の三月頃、国の制度融資が始まり、これから大変だと政府系金融機関の人から聞いたことがある。反社会勢力からの申請が増えるからだと言う。プロだから見抜けるものの、その手間が大変なストレスだという。
その後は本格的な自粛要請が始まり、個人や零細業者への持続給付金事業が全国規模で始まった。ところが反社会勢力どころかツイッターで手口を教えるなど、一般人にまで不正受給が広まったという報道があった。今見ると、経産省サイトでは、「それって誤って申請しちゃったんだよね、自主的に返せば加算金や延滞金もタダにするし警察にも言わないよ」と言っているようなものだ。いちいち摘発していられない位、多かったのかもしれない。
二人の若きエリート官僚の逮捕は象徴的だったが、どさくさに紛れて、もえらる金はズルしてももらおうという人が現れるものだ。フリーランスや零細業者だけではなく、コロナファイターと称賛された人の中からもでた。コロナ患者を受け入れると言いながら数千万円もらう「幽霊病床」で儲ける医療機関である。
制度の甘さが招いたグレーな受給もある。
飲食店への休業補償では一日6万円とか3万円とかが支給された。これは月の固定費が小さい、つまり家賃が安とか従業員が一人や家族程度の店舗兼住宅みたいなところだと、丸儲けになるだろう。それを伝える毎日新聞では兜町の給付金成金みたいな話があった。で、本日の読売には『一生コロナでもいい』という店主までいた。
こんなだから20年前の、西友偽装肉返金騒動を想い出した。検索したら画像がいっぱい出てきた。「タダでお金がもらえる」という情報が流れて『感染』が広まった点では似ている。元の画像はこちら
現在の不正受給の方が書類捏造やネットに進化しており、見た目で分かる人物ではないから深刻である。違いと言えば、あの頃のテレビがおおらかだったな。
実際は飲食店の多くは苦戦しており、コロナ禍で45000店が閉店したと推定される。給付金が廃業を促した面もありそうだ。
さて、カネを配ると言えば今回の衆院選だが、本当に配ったのは劣化市における市長選挙である。
初めは小田原市長選(2020/5)。公約に『ひとり10万円』と書いてあるから、てっきり市が独自に10万くれると理解された。そして僅差で現職を破って当選したら、「それは国の給付金のこと」と釈明したというバカみたいな話だ。小田原城が泣くよね・・・
一人12万円という高額で注目された千代田区(6万人)の話はちょっとややこしい。これは選挙公約ではない。基金458億円を持つ超リッチな自治体に困窮世帯が多いハズはないが、80億など大したこと無いのだろう。この政策は石川区長がマンションの優遇取引の疑惑隠しや市民の歓心を得るためだと批判された。結局、次の選挙には出なかったが、都民ファーストの新市長は給付を実施した。これは東京一極集中の特別配当と呼ぶべきだ。
愛知県岡崎市(35万人)では、3選を目指す現職を破って当選した。『コンベンションホールの80億円をやめ、全市民に1人5万円を戻す』という公約らしい。原資195億円のために、6つの基金取崩しを計画したが議会に反対された。5万円給付否決「嘘はついていない」といっている。
さらに、香川・丸亀市(11万人)は公約で「全市民への現金10万円支給」を掲げ、現職との差917票で当選した。しかし財源が足りないから5万円に減らすことにした。ボートレース事業があって、巣ごもり需要でネットの舟券注文が想定より60億円増えるからというが、新市民会館に95億円かかるなど財政事情からから3万円に減らした(約23億円)。
愛知県の半田市長選挙(6月)では、商品券2万円配る公約で2位に大差をつけて当選した。必要な24億円のために財政調整基金44億円から取り崩すという。
参考 市長選挙で相次ぐ「給付金公約」問題と、政策本位選挙の限界
こんな買収公約で当選する例は多いのかと思ったが、日本には市区が約800あり、年200件の選挙が行われているとすれば、ごく例外みたいだ。そもそも自治体は、資金繰りのために借金(地方債)をすることが出来ないから、現金給付をするには、市の貯金を取り崩すことが前提だ。それには議会の賛成が必要となり、反対されて混乱するのがオチである。
一方、国は通貨発行権があるからカネを配れる。では、衆議院選挙でのバラマキ合戦は国民に受け入れられるのだろうか。朝日新聞が直近の選挙分析を伝えた。他で見かける予想よりもリベラル勢力には痛い内容となった。
そしてこの報道は本日の株価が500円も上がる材料にもなった。
朝日の調査は小選挙区で35万人、比例区で2万5千人という大規模だが、35万の方がネット調査なのがやや気がかりだ。でも同時に別の調査もしており、その中では、「消費税を10%のまま維持するほうがよい 57」とか、「憲法の改正に賛成 47」となっており、整合性がありそうに見えた。
つまり、有権者は給付金などのバラマキ公約では釣られない、と見える。仮に、その理由が財政悪化への懸念だとしたら、それがこの選挙の成果の一つなのだろう。
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