リベラルが負け続ける理由とは
『寛容になれと、不寛容に主張する』、それが過剰リベラルですよね…
前記事 小選挙区の一位効果
参考 共同通信の調査/比例区の投票先 解散直後の10/16-17、1257人 自民党29.6%、立憲民主党9.7%、共産党4.8%、公明党4.7%、日本維新の会3.9%、国民民主党0.7%、れいわ新選組0.5%、社民党0.5%など。「まだ決めていない」は39.4%。 岸田政権は安倍菅政権の路線を継承すべきか。「継承するべきだ」26.7%、「転換するべきだ」68.9%。 ◆読売新聞調査 10/14-15、1044人) |
2008年の民主党政権の誕生とか4年後の自民党の復権は、敵失によるものだが政権交代は民主主義の健全さでもある。しかし、その後の安倍・菅政権は8年も続き、最後は選挙に負けたのではなく自ら辞任した。その間、安倍さんは14、17年の衆院選や13、16、19年の参院選のいずれも勝利し、憲政史上最長という記録まで作った。
立憲民主党はまだ出来て四年、55人当選からスタートしその後は選挙が無いのに110人へ倍化した。希望の党や無所属からの転入組によるものだろう。この110人という議席数は1980年代の日本社会党のスケール並みである。当時の政党支持率を見ると社会党は11~12%位だから、今の立憲の6~8%はとても低い。
結局、支持率低い立憲が議席数が多いというお得になっていて本当の実力はまだ分からない。そして今回、立憲と共産合わせた支持率は(調査により)5~10%程度なのに、比例区調査は合わせて15-17%と高い。野党共闘の効果がどの程度に増えるかに関心が向くが、上の調査では脱アベ政治を願う人が7割近くいても、リベラル勢力ではなく自公でということらしい。
●リベラルの支持が上らない理由について9/9の朝日新聞にインタビュー記事があった。
岡田教授はリベラルを自認する人で、「なぜリベラルは負け続けるのか」という本を出しておりタイトルに釣られて読んだことがある。実はピンとこなかったのだが、このインタビューは腑に落ちる話だったので、(長いため)テキトーにかいつまんでみた。なお、掲載時は野党共闘はまだ調整中だった。
・支持者達は、民主的なルールを平気で無視する政権を有権者が信任し続けることを、『我々の真っ当な政治は間違っていない。国民はまだ覚醒していないのだ』と言って自らを納得させているだけ。 ・多様性の問題も同じ。寛容になれと、不寛容に主張している。政治とは自分の信条の純度を上げてそれを実現することだと信じ、四角四面で潔癖主義のピューリタン化してしまっている。 |
リベラルは左翼という意味にも使われるが、とても曖昧で訳語の一つに寛容がある。保守政党である自由民主党の英語名にもリベラルが使われている。しかし、寛容に徹しようとすると、極端な喩えだが「多様性を訴えるなら差別的表現だって認めろよ」という調子で反撃される。これを「寛容のパラドックス」というらしく、これでは不寛容な人のほうが遠慮なく振るまえて楽である。
岡田氏は、そんな熱心なリベラル派を『ピューリタン(自分に厳しく潔癖な人)』と喩えるが、ずいぶんと遠慮した表現だ。むしろ、記事見出しに、『信条の純度を上げて狭める支持者の幅』と書くように、それこそ『過剰リベラル』と言い換えたほうが良いと思った。過剰というのは曖昧だけど、寛容そのものが曖昧だし、すでにある用語なのであえて使った。平たく言えば、正論を吐きながら極端に走り過ぎるというような意味だ。
・改憲に反対か賛成かと大雑把に分けられるほど有権者は単純ではない。9条に限っても、護憲派の人たちでも非武装中立から戦力としての自衛隊を認める人まで、かなりの幅がある。それなのに、憲法を一文字たりとも変えるなと訴える純度の高い人々を実像以上に大きな固定客だと見なし、彼らに背を向けられたら終りだと怯えている。そのために新たなマーケットを開拓できなくなっている。」 ・「訴える政策の順番がちがうということ。ジェンダー平等や性的少数者の権利、原発、動物愛護は大切です。でもそれが響く人は初めから野党に投票している。今政治が示すべきは、当然ながら、人々の生活を守るという強い意志です。 ・リベラルも保守も、極端な固定客をつなぎとめようとしている。その結果、中庸な人々の政治的期待は行き場を失っている。 |
最後に引用した文が全てだと思う。岡田氏が、日本政治に中道右派や中道左派を求めているのかは分からないが、私的にはそう読める。
安倍政治とはアベノミクスで目をそらし、隣国を脅威とするイデオロギーの右傾化、内向き政治だったと思う。その対抗で立憲は左傾したが支持は広がらなかった。就職市場が活況になったのは若い人の支持に直結した(アベノミクス効果よりも人口構成による人手不足だが)。また、安倍さんは、幼児や高校の無償化策を公約にして実現している。
彼らの思想性からは遠い政策なのに、今度の岸田さんも配分とか支給政策を(曖昧なまま)宣伝して、リベラル側の政策をパクって中和作戦を平気でやる。そして与党だから実現できる。岸田さんは自分の目玉会議に連合会長まで入れちゃった。
つまり、日本の自民党には大きな政府を前提にする人がいて(野党的な役割もあるし、財政無責任さもある)、国民の多くはわざわざ政権が変えるのは不安だから、『強い方についていれば楽』という事なのだと思う。また、政治への期待度が低いから棄権が多いのではなく、むしろ生活満足度の基準が低くなったのでは無いだろうか。低位安定という感じだ。そうでなければ低投票率が続く理由が分からない。
コロナで辛酸舐めた人が増えたから投票率アップを期待しても、支持率を見ていると小幅に収まりそうな気もする。そして、配分を気前よく宣伝している政党が好かれないのは、"出来っこねー"という不信感よりも、背景にある考え方の純度が受け入れられないのだろうと思う。
特に立憲が自民党との差別化をすればするほど公約が先鋭化する。総裁選の最中に出てきた彼らの初期の公約は、一つ一つは正論でも、世間が望む喫緊の課題ですか?って感じた。迷える中間層を取るには不利だろう。
結局、上の朝日記事のタイトルは「リベラルが陥る独善」だった。
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