埼玉県市町村の年少人口の減少_社人研
人口が減っても、増え続けるアレと世代間断絶
前記事の社人研の推計では、2015年から30年後に人口が増えるのは県内で10市町のみというものだった。でも、埼玉は全国からの転入者数と企業転入が日本一と言うように立地が恵まれているからマシなほうかもしれない。
四年前に安倍さんは国難突破解散という大げさな言葉で総選挙をした。北朝鮮問題を煽りつつも少子化問題も危機だからとして幼児教育無償化を消費税の増分でやったが、少子化はとまらない。
そして、先月の総選挙でも「少子化問題」というワードは使われるが、耳目を集めたのは減税や給付がどうたらという、その日暮らしのテーマだった。コロナ対応で見られたように、日本は短期的な危機には過剰反応するが、長期的な問題へはみんなで下を向いてしまう所がある。
さて、今回はリアル感を出すために、年少人口(0~14歳) の減り方の大きさを示した。子供の人口が維持できるのは戸田市のみだ(全体指数116、子供は105)。クリック拡大
- 散布図グラフの解説
データは前記事と同じ社人研である。横軸は全人口の2015年を100とした2045年の指数、縦軸は年少人口(0~14歳)の指数である。総人口よりも子供人口の減り方が急であるから、全自治体が赤い対角線よりも下側にプロットされている。
各●印と対角線との距離が大きいほど子供の減少が大きいことを示す。例えば、上尾市は全人口が89%へ減るが、子供の方が72%と急で差は17ある。隣の伊奈町のように今は若い人の転入が多くてうらやましがられるが、30年後に総人口は102%で維持できても子供の減り方は74%と差28が目立つ。
- コロナ禍で更に少子化が加速
この推計にはコロナ禍の影響は入っていない。都心から郊外への移住は限定的で目に見える変化はないだろう。むしろ確実なのは、コロナにより出生数がガクンと減った方だ。
2020年の婚姻数は前年比12%減の52万組、出生数は2.8%減の84万人である。妊娠から出産までの期間を考慮し、本年で80万人割れが危惧される。
こうして少子化が止まらないのは、10年以上前からやっている各種の対策が失敗した証拠であるから、行政は素直に認めるべきだ。『カネがないから結婚しない・子供作らない』という例が持ち出されるが、それは一部の例であり、行政や政治家の人気取り政策なのだと思う。
前にも書いたが合計特殊出生率が1.4と低くても、完結出生児数という結婚15~19年たった夫婦の最終的な平均子供出生数は1.9人である。
何度も書くが、少子化の原因は婚姻数の減少である。
昔は、上司が縁談を持ちかけるように結婚の敷居は低かった。今はそんなことできないし、自由恋愛と言っても出会えないから婚姻数が少ないのだろう。だから婚活ビジネスが生まれたが、そこでは男と女を損得的な計数化までやるために選別がシビアになりマッチング率が高まらないのだろう。また、エントリーすらできない男が多いかもしれない。
いずれにしても女がシビアに男を選ぶ時代であるから、せいぜいやれるのは、公的で安くて信頼性の高い婚活市場を作ること位ではないか。もちろん最高の対策は経済成長である。それで若者にも将来への自信が生まれるはずだ。その一方、人口減は日本社会の総意として受け入れ、生産性向上で凌ぐ覚悟も持つべきだと思う。
・人口が減っても、増え続けるもの
人口が減れば財政負担の大きい医療費が減りそうに思うが、そう簡単ではない。人口の減り方よりも医療の高度化による「高価な薬や医療機器の登場」による医療費増加の方が上回り、今の40兆円が2040年には70兆円とも予想される。
また、生活保護制度は生活保障をしつつも自立を助長する制度なのに、保護者の半分は高齢者と見られ、自立が見込めない終身年金みたいになっている。そして、世帯主が非正規労働者であると、退職後は生活保護になる可能性が高く、2040年の生活保護費は今の3.8兆円から9.1兆円へ増えると野口教授は予想し、消費税アップがさけられない。
年金も含めて、人に係るおカネだけは増え続けるが、他方ではインフラ等の公共施設の更新費用は自治体で重荷になっている。人口減少つまり労働人口減少なのにヒトもコンクリートも維持費が大変になる。
先の総選挙でリベラルが負けた原因に、立憲の左傾化が上げられるが、それは既存支持者の離反として表れたと思う。一方、若者や30代は自民党へ流れている。若者への投票率呼び掛けはリベラルに不利となった。世代の違いについて、日経新聞の調査で、40歳未満だけなら自民300に迫るとある。下図は加工したもの。

それを若者の保守化と見るのは間違いで、若者は分配政策の甘さや非現実さを見透かしたかも知れない。要するに現実主義なのだろう。ただそれが世代間断絶へと繋がるのはヤバいよね。
つづく
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