平方幼稚園の閉園に賛成する理由-1
追記 閉園は確定。令和4年9月30日をもって閉園を6月議会で可決。
これは始まりに過ぎない。
平方幼稚園は閉園が確実なので書くまでも無いのですが、まとめとして二回に分けて書いておきます。大事なのは、これは始まりに過ぎないということです。
1. 行政と議会の攻防
1965年の開園以来、バス無し、給食無し、延長保育無し、三年保育無しの平方幼稚園でしたが、2018/12月議会にはその改善を求める請願が出され採択されました(タイミング的には市への牽制にみえます)。
そして、市は19/12月議会に閉園案を出して3対21で否決されました(一回目)。21/3月に再提出するも継続審議扱いで蹴られ、粘って6月に再提案しましたが1対16で否決です(二回目)。退席は11人も。
一方、議会の同意がなくても行政権として園児募集の停止を20/9月から宣言しており、今は年長さん一人のみです。その募集停止の文に「当分の間」とあるのがイヤらしいのですが苦肉の表現です。結局、22/3月末に「そして誰もいなくなる」のです。たぶん22年中に閉園案が確定して施設課の管理下に移ると予想します。また平方小と一体なので跡地利用は問題にはならないでしょう(google map)。
かくして、市議会議員たちは『冷たい選択をしたと責められることも無く』、"うまく"逃げることが出来るのです。その辺りは、次記事とします。
参考 20年10月の 埼玉新聞記事
2. 平方幼稚園が閉園に向かう時代的な理由
●まずもって建物の耐用年数に近づいていることを市は第一の理由にします ※1。
●需要はS50年代のピーク220人以後は減少し、現定員100人に対して二年前30人、去年15人、現在は1名です。エリア内の少子化もありますが、既存需要の多くは高負担・高サービスの私立幼稚園へ流れたのでしょう。
なお、部分建替えすると解体費2300万円、建設費18800万円で2億1千万円だそうです。
●年間維持費は21年予算で、園児一人のみですが管理費が3058万円(前年は4300万円)、うち94%が職員三人の人件費です。賞与と諸手当込みで一人805万円、年金の共済費込みで960万円です※2。
※1 税法による経済的寿命であり物理寿命ではないから長寿命化の余地はある。敷地内の平方小学校の空き教室の再利用という案もあるが、問題の本質は建物寿命にあるわけではない。 ※2 給与定員管理によれば当該職員は平均40歳だが、私立の教諭ならもっと若いから半額以下の年収304万円と推定(求人ボックスの関東圏の値)。官民格差の典型例である。なお、市の給与定員管理によると、清掃業務での市職員給与が43.6万円に対し同業民間は30万円だ(1.45倍)。 |
●決算 18年度の値を教育委員会R1/6月定例会より引用
園児27人の保育料収入を差し引いた正味の市税負担は園児一人当り124万円。一方、私立幼稚園(約4000人)への同額は7200円です。人数の多寡で固定費が配賦された現象ですが、税の分配がここまで開くともはや説明不能です。そんなの関係ネーという感情論では、勘定の問題を正当化できません。また、待遇二倍超の公務員教諭が私立の二倍の保育パフォーマンスを出してきたという実証報告も聞きません(決して皮肉ではない)。
そして決め手は幼児教育無償化という追い風です(なぜか、議員と市はこの点を重視しません)。本件は、施設が閉園されて途方に暮れるような話しではなく、私立幼稚園と言う選択肢があるのです。その場合、公立の月謝7500円と私立25000円(推定)の価格差が障壁になりますが、無償化によりそれが解消されたのです。
なお、市は「コロナ禍の苦渋の決断」とも言いますが、それは問題そらしの便乗です。現実は、低負担で低サービスよりも高負担でも高サービスへと流れているのです。その高サービスを公立がやろうとするとロクでもない高コストになりますから、建物の寿命よりも前に、社会的な使命を終えていたと言えます。
これが民間ならもっと早くに閉鎖です(公務員なので閉園しても解雇は無し)。
ハッキリ書きましょう。
他に代替え選択肢がある人々のために過度な財政負担を続けるのは公益性を損ないます。それを言うと角が立つためか、(素人受けする)建物寿命を前面に出していた所へ、国(自公政権)の無償化策がダメ押ししたのです。 |
極端ですが、30人を切った頃から月謝差額補てんで私立へ行ってもらった方が賢明でした。税金だから或いは市政が硬直的だったから今まで続いていたのでしょう。
なお市内の私立幼稚園等(21園)の総定員数は5500人ですが7割しか埋まらないようです。つまり、3つ位の幼稚園が潰れても需給は成り立ちます。ですから私立側からすれば、なんて甘っちょろい話を市と議会は延々とやっているんだと思いつつも、『いずれは我々だ』という危機感を持っているハズです。
これは始まりなのです。見たくない姿が見えて来たに過ぎません。しかし、ゼニかねを理由にすると反論しようが無いので、"心情"とか教育をカネで語るなとかの視点を持ち出さざるを得ないようです。
閉園ありきだ、説明が急だ、いや説明不足だとかいう入り口論へ巻き戻したり、幼児教育の理念はどうなるのかという崇高な次元で反対しますが、どれも現実の問題解決にはなりません。前の給食費無償化要求と同じく、実行可能性のある"予算の付替え案"など出す気もありません。それなのに、狭い地域代表性や政治的ポジションが加わり、少数の反対が多数に見えたりもします。
これは伝聞ですが、「お弁当作ってやれるとか、送り迎えの時に先生達と話ができる」良さがある、という存続希望もあったらしいです。しかし、それはその人の個別の価値観であり、公がそれらを満たさなくてはならないわけではありません。
あー言えばこう言う見たいにしか聞こえないのですが、『智に働けば角が立つ情に棹させば流される』話みたいになってますね。
注) データ等は上尾市教育委員会 2019/6定例会等より
補足 上尾市民の意見を紹介します
幼稚園OB 埼玉新聞20/10/8 コメント欄より この幼稚園のOBです、そしてこの年代の子供を持つ親でもあります。 |
感想 議員達よりもリアルでクールな考察です。昔は公立が先導していましたが、民間は競争原理と工夫で公を超えて「選ばれる」ことを目指しますから、勝てるわけが有りません。もし同園の「四無し」を解決しても、民よりも高コストな運営費を利用者は負担しますか? しないでしょう! 民間へ逃げますよね。だから市は躊躇してきたのでしょう。
昔から書いてることですが、
上尾市政の歴史で最も優れた意思決定とは公立病院からの撤退です。
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