3/24日の侵攻以来、二か月がたった。そして戦争は第三段階へと進むらしい。
当初、キエフまで巡航ミサイルで攻撃された時、30年前の湾岸戦争を思い出した。米軍の精密誘導ミサイルがピンポイント爆破する映像である。軍事大国ロシアの前では、可哀想だが「もたない」なと思った。
しかし、ウクライナはよく耐えて反撃に転じている。凄いことだと思う。
1~2月に、バイデン大統領がロシアの侵攻を度々警告していたのは、ロシアへの牽制だと思っていた。そして2/18日は、『数日以内にウクライナに侵攻する計画があり、首都・キエフも攻撃対象になる』と言い切った。
しかし、周辺国はおろか当のゼレンスキー大統領さえ『そんな兆候はない』と否定した。実際、ミサイルが撃ち込まれてから国民が慌てて列車や車で逃げる光景からも、「キエフまで攻めてくるわけない」と思っていたようだ。
米・英の情報能力の高さが際立っていることがこの戦争の特徴になっている。それをインテリジェンスと言うことも今回よく報道されている。しかし、最高のインテリジェンスを持ってしても、ウクライナ軍の健闘と弱っちいロシア軍の実態は想定外だったわけだ。本当の戦争と机上演習では大違いなのだろう。
なお、在ウクライナの中国人の保護方針が、初めは「中国旗を掲げて退避」という案内から後に「中国人と分からないように」と混乱していたことから、中国ですら侵攻を予測していなかった。
以前は、プーチンのネライはウクライナのNATO入り阻止と思っていた。しかし、地図を見ると加盟済みバルト三国からでもモスクワへの距離には大差ない。その後の交渉からもNATO加盟反対が大きな目的でないことは分かった。
ソ連邦から解放された各国は経済的に豊かになりたいからECへ加盟し、威張るロシアが怖いからNATOに加盟したかったと思う。つまり、EUやNATO加盟は結果であり、そこへなびく原動力が「自由と民主主義」の浸透なのだと思う。つまり、このままでは民主主義という感染症が東欧だけでなく、ロシア内にまで及ぶことを恐れた、というのが真の理由ではと思っている。
「ロシア帝国の復活」とか「ウクライナは元々ロシアのモノ」みたいな歴史観による理由は国内向けだと思う。ただし前提として、ウ軍は弱く(クリミア併合時は一日で退却)、ロ軍は強いという判断がある。
以前から、バイデン大統領が現在の国際情勢を「民主主義対専制主義」という捉え方をしていて、二極対立にして大袈裟過ぎる気もしていたが、ロシアの侵略戦争によりその納得感は増した。
地図の上ではロシアはウクライナの領土分割で占有したいのだろう。そして残った西部を破壊尽くして西側に渡してやるという腹積もりだろう。ウクライナ被害額70兆円なんて知った事か、というわけだ。国土が破壊される姿を西側へ逃げた裏切り国に見せつけたいのだろう。
しかし、そうならないことが戦況から見えている。アメリカは当初、キエフ陥落を予想していたが、今はロシアの弱体化を望む、と踏み込んだ発言をする。
チャップリンがチャーチルに変貌した。
ゼレンスキー氏が大統領に当選した時、ウクライナの緊迫した政治情勢よりも喜劇役者と言うことの方が大きく伝えられた。当時、トランプみたいな衆寓政治家が真っ盛りの頃だったから、良い印象は持たなかったものだ。
しかし、吉本のお笑いタレントを連想してはイケなかった。
就任後は新ロシア的振舞をして支持率は30%に低迷していたが、ロシア侵攻で一気に急上昇した。数度の暗殺計画まであったらしく、アメリカは国外逃避を勧め、海外に臨時政府の話もあったが、彼は国内に留まりネットを駆使して徹底抗戦を訴えた。半年前のアフガンでガニ大統領が逃げ出したのとはえらい違いだ。
更に、巧みな言葉で語る能力も優れる。各国議会への演説をしていた頃、『チャップリンがウィンストン・チャーチルに変貌した』という比喩で、WW2におけるヨーロッパの偉人と肩を並べられた。『ヨーロッパの英雄になる』と言う人もいたが、軍事力の差を見れば「悲劇の英雄だろう」と思っていたのだが・・・、本当の英雄になりそうだ。
それ位、国境線が地続きの欧州では他人事では済まない危機感があるのだろう。その辺りは、海に囲まれ支配された歴史が希薄な日本人には理解できない。だから無責任な事を言う人もいる。国民の犠牲を増やさないで「はやく降参すべき」という意見は、命を優先した穏当な意見ではあるが、命よりも大事なものがある、と思って戦わざるを得ない人には、冷たい言葉だろう。
彼らは、『同情するなら武器をくれ』と言っている。
アメリカは日本を占領したが、反米的な日本人を国外へ連れ出し、代わりに自国民を入植させたりはしなかった。ソ連は平気にシベリア抑留をして働かせたように、おそロシアはタダのシャレではない。
つづく
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