ロシアは国家の再建に成功したとか、その行動は合理的だと?
前記事-1のつづき
・トッド氏 西側はプーチンがロシア帝国復活を目指して更に侵攻すると言うが、ロシアがこれ以上、新たな領土を奪うとは私には思えない。自国の領土の保全だけで手一杯だから。
その通りだと思う。
NATOへ逃げた国を取り戻すことはムリだから未加入国を阻止したい。ロシア系住民と呼応して武装支援により独立させる。その結果、世界から未承認の国がウクライナ周辺には複数ある。
モルドバから分離した沿ドニエストル共和国、08年にはジョージアにおけるアブハジアと南オセチアの2国。14年はウクライナからのクリミアを、今回はドネツクとルガンスクの二つを併合したい。オデーサにつながるヘルソン州まで奪われたら、ウクライナの解体である。
いずれも東欧の最貧国だが、併合する地域には重工業があるらしい。こうした「ミニ・ソ連」を作りたい動機は、大国意識の回復やソ連解体への恨みなのだろう。
しかし理解しがたいのは、主権侵害とは言っても占領したい地域の人の多くは親ロシア人であることだ。先日、BSの海外放送で、ウ軍に避難を求められた住民が反発する様子があった。破壊はウ軍の仕業だと思っている。こうした住民が多数の地域を統治するのは難しい。
結局、ロシア人の多いクリミアを取り戻すのはムリでは無いかと思う。素人考えだが、ウクライナはもっと前に条件闘争をすれば良かったと思う。こうした捻じれは、ロシアが大勝してもウクライナ人を統治できないのと同じである。
一国内に複数の民族や宗教があるのは珍しくなく、政情不安になる国も多い(特にアフリカ)。中国はウィグル族に同化政策を強制する。先進国では、英国からスコットランドが独立したがっている。スペインのバスク地方の過激な分離独立運動は有名だ。
そうと分かっていたから、ロシアから遠い国ほどさっさとNATOへ逃げ、ロシア系が多く住むロシアに近い国ほど一つにまとまれない矛盾をロシアから突かれて紛争を作ってしまう。紛争当事国になればNATO側は「加盟お断り」がホンネだろう。
トッド氏はさらっと書いていた。「ソ連崩壊の時にやっておけば良いことを今になってやっている」。あの時、無血革命だったことが奇跡的なのだろう。
・トッド氏 ソ連崩壊後、ロシアは国家の再建に成功したが、ウクライナは30年以上経ってもできないでいる。
ウクライナはその通りみたいだ。コメディアンが大統領にならざるを得ないほど腐敗が進んでいたらしい。ロシアが周辺国よりも優位なのは、天然資源によるもので、農業依存のウクライナとの差は大きい。しかし、議会や選挙があっても敵対候補が暗殺されるような国が再建と言えるだろうか。国の予算で食べている公務員が多く、民主主義に飢えているとも見えない。
また、このハンディキャップ戦争(相手国首都を攻撃するが、核を背景に自国領土を攻撃させない戦い方)を平気で支持する国民が多い理由についてはどう解釈すべきなのだろうか。私的には、情報弱者でも無知でもなく、権力に従順する共産主義を経験したからだと思っていたが、むしろ逆らしい。その点は家族システムとして文末に。
参考 ウクライナでの破壊等について(ロシア人の)あなたに道義的な責任があるか。
・まったくない 58%
・ある程度ある 25%
・完全にある 11% (朝日記事より)
最近、ウクライナはEU加盟の候補国に認められたが、精神的な支援に過ぎないのではと思う。経済同盟には損得が働くから、最貧国の加入を快く思わない国もいるだろう。
・トッド氏 ロシアは一定の戦略で動き、合理的で暴力的である。欧州は卑怯だが半ば予測可能、しかしウクライナは軍と大統領のどちらが率いているか分からない。ゼレンスキーは、次に狙われるのはあなたがただと欧州を戦争に引き込もうと必死だ。また「ロシアの外交や指導層は歴史的な認識レベルが高い」と評価する。
本当だろうか?。「ロシアは西側がこれほど反発するとは予想外、ウクライナ社会の抵抗力も見誤った」とも書いているのでロシアが合理的とはへんだ。議会制民主主義なら議論を尽くすことで意思決定が合理的になりやすい。しかし、20年間の独裁者は合理性よりも情緒を重んじるだろう。むしろ予測不能であると言いたい。
典型は、ウクライナのNATO入りを防ぐための侵攻が、ドイツは軍事費増額へ、北欧2ヶ国はNATOに入る方が安全だと転換した。おかげで、ロシアは長い防衛ラインを維持しなくてはならない。こうして周りからどう思われるかにお構いなしなのを独りよがりという。まさに不合理の極み。
追記 旧東欧国は支援としてウクライナへ互換性のある旧ソ連兵器を送った。そのため、手持ち分を以前は考えられなかった企保で最新型へ更新し、対ロ攻撃力が増している。
そして予測可能性が低いのはアメリカだと指摘している。トランプによる混乱のためなのかは分からないが、日本の自立を促し、核武装もその延長の一つとして提案する。
つづく 3へ
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- トッド氏ならではの家族システムの話はユニークだった。
家族システムで言えば、ロシアは共同体家族社会(結婚後も親と同居、親子関係は権威主義的、兄弟は平等)だ。そして集団行動を得意とするから共産主義を受け入れられた。プーチンは狂った独裁者ではなく、こうした社会にふさわしい権力者なのだ。
しかし、ウクライナは核家族社会(結婚したら親から独立)である。それは英米仏のような自由民主主義的な国家に見られるシステムだ。しかし、民主主義は強い国家なしには機能しない。個人主義だけではアナーキーになる。
問題は、ウクライナに国家が存在しないこと。・・・・ ピラミッド型社会のロシア人からすると。 自分勝手でアナーキーでポーランド人みたいだ。と・・・・
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