NHKの見栄はる調査と投票義務化のオーストラリア
民主主義が未熟で、腫れ物に触る日本のやり方

●選挙のたび、NHKは一週間ごと世論調査をする
NHK調査を見ると、どうして匿名なのに見栄をはる人が多いのだろう、といつも思う。
この参院選前の7/4発表では、「投票に行くか?」の問いに、必ず行くが 51+期日前した 11=62%、さらに「行くつもり」が24%もいる。だが、この「つもり」は当てにならない。
と言うのは、この質問は毎回やっており、昨年10月の衆院選の前でも、行くつもりは24%もいたが、実際の投票率は56%だった。ようするに、行く気が無いのに、心理的な負い目から匿名回答でも耳当りの良い答えをする人が四分の一もいるのが今の日本だ。
なお、三年前の参院選は48.8%である。今回、それを上回りそうという根拠は特にない。インフレは始まったばかりだし戦争は遠い。他国みたいに失業率が高いわけでも無い。
●投票率を上げるための官民の活動
自治体の選管は毎回、カネをかけて広報活動するが、少子化対策のように成果が出なくても「やってます感」だけの惰性投資になっている。今回もやっている「#わたしも投票します」は、芸能人のボランティアによる啓発活動だが、効果のほどは聞いていない。
●投票所1000カ所削減。維持できない公共施設の一例だ
小中学校の統廃合問題にも通ずるが、投票所も縮小日本で維持できない公共サービスの一つである。
投票所の数や投票の締切り時間は自治体の裁量らしい。3年前比で1000カ所減ったり、締め切りを早める所もある、と読売は書くが、日経の方が深掘りする。日経は理由の一つに、職員と立会人の人手不足をあげる。あんなに簡単で座っているだけで手当てが付くなら、やりたい人がいそうと思うのだが、公の世界は困ったものだ。
削減は地方・過疎地が主である。埼玉県は維持できているから目立たないのだろう。
九州では災害回避として減らすという(東京新聞)。武雄市は災害対応の職員を確保するため14カ所を減らした。遠い有権者をバスやタクシーで送迎したが十数人程度という。佐賀市は路線バスを借り上げ、投票箱をのせて回る「移動期日前投票所」をする。
鹿児島の日置市は38所を8つにまとめ、すべて共通投票所へ。これは自宅近くの指定投票所だけでなく、ショッピングモール等に集中する方式で、全国で増えている。また、野戦病院みたいな移動投票所もある。
ただ、どれもアナログ的で泥縄式にしか見えない。日経記事には、「投票所への移動がたいへん。交通費など自治体の支援が」と高齢者の声を紹介するが、見苦しい要求にしか聞こえない。先の短い有権者の声は聞いたフリをして、若者への対策を重視すべきだろう。
思うに、アメリカの大統領選挙のような郵便投票とかボランティア主体の投票所というのは丸で聞こえてこない。なお、在外投票向けにマイナンバーによる電子投票を検討しているらしいが、国内の選挙にはネットは向かないと思う。必ず攻撃されて混乱しそうだ。
最近、インセンティブ政策が露骨に増えている。マイナンバー発行へのポイント付与やプレミアム付き商品券などだ。それに抵抗なく餌付けされたのだから、投票にも金銭動機を与えても良いはず。しかし、やらない。
投票率が上がり過ぎて困る政党や政治家が反対する。
- オーストラリアはなぜ投票が義務なのか?

以前ショックを受けたBBCニュースの動画を紹介する。文字付の動画は3分だが、要約しておく。
ジュディスブレット氏。政治史研究家。
・投票所に行くか、郵便投票をすることで、投票名簿の名前に印をつけてもらう法的義務を負う
・行かないと25豪ドル(約1800円)の罰金
・投票率は90%以上である
・1924年に採用した。これにより政府は、投票者の過半数では無く、有権者の過半数に支持されたことになる
メリット
1 競争が穏やかになる
自由式だと、候補者は有権者に投票してもらうために過激な政治問題に走ろうとする。でも、みんなが投票するとなれば中道に寄っていく。トランプが大統領になったり、イギリスがEU離脱した時、人々は安心した。義務投票制度のおかげで、ポピュリスト的な結果はわが国では起きないだろうと。 (これ、大きいと思う)
2 少数派の意見が反映されやすい
自由式で、投票に行かない傾向にあるのは、貧困層、高い教育を受けていない人、新たな移民グループです。政治家が支持を呼びかけるときは、貧困層を含むあらゆる人々が投票すると分っています。それが平等な公共政策を促します。
3 移民の参加が増える。 省略
Q 最初は義務投票制に反対する人もいた?
反対意見はほとんどありません。政治家が、時折、自由至上主義的な反対意見を述べることもありますが、大きな支持を得ることはありません。
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