戦争の責任はアメリカとNATO。エマニュエルトッド-1
責任はNATOと米にある。
文藝春秋 5月号にエマニュアルトッド氏の意見がのった。タイトルの「日本核武装」は出版社によるもので、後半に少しあるだけだ。主な内容はウクライナの戦争についてである。
長くなるので三つに感想記を分けた・・・。
プーチンは四カ月も侵略戦争を続けている。平坦なドンバス地方での正面戦になってからウクライナ軍はロシアの火力に圧倒され奪還が進まない。砲数が10分の1とも伝えられ、それで良く耐えているのが不思議なくらいだ。
長引くとどちらが有利か?
ロシアは電撃的な制圧を目指していたから、長期化は不利とみられていた。しかし、価格高騰をもたらすように資源大国への経済制裁は遅効的だ。果たして西側は、この冬の寒さとインフレに耐えられるだろうか、というロシアとの我慢比べになっている(原発再稼働かも)。
エマニュエル・トッド氏は人口や家族類型から歴史と文化を語る学者で、ソ連崩壊、トランプ台頭、イギリスEU離脱などを言い当てた知識人としても有名だ。
しかし、この戦争について語るのは初めてだと言う。本国フランスでは、「私はシャルリ」運動の時のようにメディアが冷静でないためらしい。以前、自分は社会(同調圧力)に抗う血筋と言っていたので意外だった。なお日経ビジネスでも類似のインタビュー記事がある(日本の核は文藝春秋のみ)。
トッド氏の見解は大局的でクールだから新鮮である。
例えば、去年コロナについて、『これは高齢者ではなく若者を壊した病気だ』と喝破した。
『冷たい分析のように聞こえるかもしれませんが、これが歴史の観点がさせる分析の仕方です。高齢者は重症化し、死亡するリスクが高い。では、それが影響を与えるのかというと、高齢者なので人口全体の構造への影響はほとんどないのです』。 『この危機によって犠牲を払わないといけないのは若者です。若い人たちが外出できず、自由に出歩けないでいる。このことで、彼らはこれから何十年という単位で影響を受けることになるでしょう』。(Forbesより) |
こんなスケールで言える人いないから、全く持って感心する。以下は文藝と日経を読んでの感想記だが、ナント、先週に本が出ていた。二誌は日本向けのプロモーションを兼ねていたのかも。「第三次世界大戦はもう始まっている」
アメリカの学者の意見を引用しつつ、責任はアメリカとNATOにある、ロシアとアメリカ・NATOの戦争だと断言し、ウクライナに武器を与えて戦場にしたアメリカに怒りを覚えるとまで批判する。
しかし、どうにも腑に落ちない前提が多いのだ・・・。
●トッド氏。戦争の原因は「ウクライナのNATO入りは絶対許さない」というロシアの再三の警告を無視したためだ。ウクライナが(武器支援で)強くなる前にクリミアとドンバスの奪還を目指した。
まず独立国の安全保障政策は自由であり、そこへの軍事介入は主権侵害だと言うのが国連の立場だ。03年の米のイラン侵攻を引き合いにしたロシア擁護論もあるが、あの時のほうが賛成国は多かった(多いから侵攻してよいとは言えないが)。
今回のロシア賛成は5つの独裁国家のみだ。
参考 地域グループごとの表決(賛成-反対-棄権-無投票)
アフリカ : 28-1-17-8
アジア太平洋: 37-2-13-2
東欧 19-2-1-1
ラテンアメリカ・カリブ海: 28-0-4-1
西欧・その他 29-0-0-0
なお、アフリカの半分26ヶ国がロシア非難を避けた。その理由については、「ロシアはアフリカの真の独立支援をした」と主張するマルクス学者の意見よりも、軍事企業による支援と恨みに乗じた情報戦の成果だと分析する白戸・立命館教授の方がクールである。貧乏国でも国連では対等な一票になる、という外交成果なのだろう。
米の戦争と比べてもロシアの攻撃はタガが外れている。なぜ、ウクライナの議事堂や大統領府を爆撃せずに商業施設や学校、病院や高層住宅へミサイルを撃つのか。西側には理解できない戦術だ。当初は命中精度が6割というニュースがあり、そのためと思っていたが、そうではない。
小泉悠氏や高橋氏は、国家を象徴する建物は民間よりも優れているという彼らの価値観だ、と推測していた。隠れ場所が無い位まで街を壊すのがロシアの戦術である。
つづく
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