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2023年3月 9日 (木)

マイナカードの申請殺到は損失回避の典型

生産性向上という大目的が欠けるニホン。

3-4min read

 一体何回、ポイント締切を延長したか忘れたが、オオカミ少年のフリをやめた政府が、2023/2月末(ポイント申込は5月末)で終わりと言ったら、今までそっぽを向いていた人達が窓口に駆け込んだ。

「ポイント欲しさで自治体窓口はバーゲン会場と化す」という日本の残念すぎる姿だった。

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1.上尾市のマイナカードの申請数

2月末には、HPに混雑警報まででた。2/25土の11時でも最長192人待ちである。

単月の申請は2月が最高かもしれないが、来週に発表だろう。一月末までの申請は167,396人で人口比73%、これは国平均と同じだが、カード交付数132,302の57%は国の63%に見劣りする。

呆れたのは、1月の申請が5000人で、(前回締切りの)12月の半分にすぎないこと。本当にギリギリにならないと動かない人が大勢いる。なおコロナ8波の影響ではないことは明らかだ。一年前からあった窓口へ、子供引き連れてお一人一パックの卵特売に並ぶような光景は、なんとも寒気がする。

ワクチンは健康増進課が、今回は市民課がフル回転した。共にご苦労さんだが、国が義務化ではない中途半端な政策をしつこく推奨したが故に負荷が平準化せず行政は無用なコストアップを、市民は行列という非生産的な結果になった。そもそもポイント付与なんて邪道である。コロナ禍以来、何かくれないと協力しないというヘンな国民性を作っていないか

2022年の市予算。単位は千円/国費

●個人番号カード交付事務費補助金 19,790
●マイナポイント予約事業の委託料 23,387

上は内製、下はNTT系のテルウェル東日本が約半額で落札したらしく、余りは新年度分になるらしい。

 2.行動経済学の通りだった

人々にある行動をうながす動機付けをインセンティブ(報酬)とよぶ。セールスマンへの成果報酬のようにおカネが典型的だが道徳的なものもある。そうした研究を行動経済学といい、その中に『損失回避』という視点がある。人間は『利得の喜び』よりも『損失の悲しみ』のほうが大きく感じるというものだ。

その線で言うと、最後は「損をしたくない」という心理が一気に駆り立てたとみえる。他にも、取得率が高くなりましたよ、というニュースや周りの人は済ませましたよ、という情報が、「少数派になる不安」心理を招き、周りに同調する効果もあっただろう(ハーディング効果という)。

 かくして不毛な騒ぎに見えたが、一つ良いこともあった。

 誰も『三密守れ』と騒がなかった。

 大きな進歩である。

 なお、マイナ反対者の中には、ポイント欲しさに心折れた人もいただろう。それは、別に恥かしいことではない。善悪とは異なる実利的な判断なのだから。こうみると反ワクチン派や副反応忌避の人がいた中で、接種率を高めようと必死になった二年前のワクチン行列と重なって見えた。だから、ワクチンと同じ80%になっても不思議はない。

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3.日本のデジタル生産性の向上こそ不可欠

日本の少子化は深刻である。何度も書くが完結出生数は約1.9人。つまり夫婦間には平均二人の子供がいる。問題は非婚化という若い人の選択(先進国共通)なのだから、子育てへのバラ撒き政策では産まれないことは実証済みだ。それでも選挙の人気取りでカネをバラ撒き続ける(どうせ出世払いだ)。

産めよ増やせよや人手不足を嘆くよりも、日本に必要なのは生産性の向上である。

政府は、「マイナカードで便利になりますよ」というフワッとしたPRしかしない。デジタル行政になると、窓口へ出向く頻度も提出書類も減る。そうした行政合理化が日本中のデジタル生産性向上へ発展するという展望を語れない。

4.用途拡大へ

私的に、健康保険証に使っていないので退蔵カードのままだ。ちょうど確定申告の時期、スマホでマイナンバーを使ってやれるらしいが、決算から税申告までの複雑な書類をスマホ画面でやれる人は少ない(年金所得のみなら簡素だが、それは高齢者なので浸透しない)。

前から国税庁は識別番号とパスワードを登録しているので、今年もその方式でやった。つまり、紙のアナログ提出の他にe-taxのデジタル式には複数あるわけで、こういう多様性がムダなコストを招く。

つい先日、政府は、社会保障、税制、災害対策以外にも拡大すると発表した。50の国家資格や自動車登録の事務も含まれるという。また、マイナで「公金受取口座」を登録していない人への促進策として、年金受給者へ書留郵便を送り、拒否できるが未回答の人は同意と見なして登録へつなぐという。これは、デフォルト設定という方法で、反対者は怒るが、強制せずに誘導することで契約率を高める。これも典型的な行動経済学の手口だ

・本当は運転免許証との一本化を

写真付証明書が二枚あるなんてヘンな国だ。しかし、警察で撮影した免許写真と比べマイナは自分で用意した(盛った)顔写真だから、信頼性に不安がある。もし、それを理由に「警察族」が反対したら、ホンネは既得権益を失うことへの抵抗なのだろう。

5.定量的な効果を説明できないデジタル行政

カードは一枚312円らしい。そこにポイント付与で1億人に平均1万ポイントなら1兆円、それを行う自治体への補助金も大きい。既に2兆円使ったという記事もあった。それでも取得率8割なら、カード持つ人と持たない人への二重行政が続く。デジタル難民という人は一定数いるので紙を無くすわけには行かない。

だから、事務の合理化だけで投資額を回収できるとは思えない。いずれにしてもそうした説明を官僚も政治家もしないのは、無責任である。 

6.電子政府への国民IDだが安全性は?

マイナンバーカードの役割を増やすほど常時携帯となり、運転免許証みたいになる。そうなると紛失盗難が心配だ。かつては免許証でカネを借りられたらしいが、今は顔認証があるからそう簡単ではない。また、マイナカードは通帳や免許証と同じく、人にも見せることがあるので「秘密の番号」ではない。しかし電子政府の国民IDという自覚が無いと、暗証たった4桁は心もとない。

既に、当節のネット上の契約や取引ではワンタイムパスワードなどの多段階認証が当たり前、それと比べてセキュリティは低い。なお、暗証番号を三回間違えると、再設定のために役場に行くハメになる。二回間違えて一日たつと回数が0リセットになるわけではない。そこだけは厳重だ(^^♪。

そういう間違えが百人に一人なのか千人に一人なのかは分からないが、カードと一緒にメモ書き保管する人が一定数いる。まぁ自己責任で、ということなのだ。なりすましに要注意とこれから始まるオレオレ詐欺のマイナ版。

海外の導入でもメリットとデメリットはあるが、辞めたという話は聞かない。仮に、問題が多いとしたら、「それ見たことか」と言うよりも、それが今の日本の実力だと思う。そもそも民主国家では100%の賛成なんてあり得ないし、コロナ禍の体験から嫌と言うほどデジタル化の必須を学んだのだから、義務化すれば良かった。この中途半端さが日本の凋落なのだろうと思った。

 

 

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コメント

マイナンバーカードの申し込み騒動?で大学の社会学の講義をちょっと思い出しました。
2万円欲しいけど、やはり、情報漏洩が心配。結局まで未申請です。

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