埼玉県_ふるさと納税の収支ランキングと入出率
返礼品競争から降りた所沢市の実質収支は?
前記事のつづき
ふるさと納税は矛盾を抱えつつも、お得感が負担を隠しているから納税者も自治体も便乗せざるを得なくなり、年々増えている。でも、その実態は危うい。
(1) ふるさと納税の収支ランキング
収支=受入寄附額-費用-税額控除 を求めたのが東洋経済の都道府県別の市町村ランキングである。なお、本ブログでは実質収支と称したが、原文は「収支」とあるのでそのままとした。また、20年度の寄付であり、地方税控除額とは翌年の分である。
埼玉県のランキングをみると黒字は15自治体と少なく、北・西部の人口の少ないエリアが目立つ。寄附額-費用が赤字となることは無いので、他へ寄付できる人が少ないと(流出する)税額控除も少なくなり黒字化しやすい。都市部はその逆に控除額が大きいために赤字になりやすい。
- 上位5と下位8市のみをあげた。金額の単位は億円
収支 | 寄付額 | 費用 | 控除額 | |
秩父市 | 2.91 | 5.97 | 2.65 | 0.42 |
北本市 | 2.65 | 6 | 2.44 | 0.91 |
三芳町 | 1.24 | 3.32 | 1.45 | 0.62 |
日高市 | 1.02 | 3.05 | 1.38 | 0.65 |
深谷市 | 0.49 | 4.01 | 1.91 | 1.62 |
上尾市 | -3.94 | 0.73 | 0.3 | 4.37 |
戸田市 | -3.94 | 0.11 | 0.04 | 4.01 |
草加市 | -4.47 | 0.45 | 0.08 | 4.84 |
川越市 | -5.61 | 0.63 | 0.19 | 6.06 |
所沢市 | -6.44 | 0.55 | 0 | 6.99 |
越谷市 | -7.1 | 0.07 | 0.01 | 7.17 |
川口市 | -12.83 | 0.5 | 0.11 | 13.22 |
さいたま市 | -53.67 | 0.55 | 0.17 | 54.05 |
(2) 2021/R3年度の実質収支ランキング
上表のソースは総務省の寄付額と控除額のExcelファイルである。その2つからデータを照合して作るが、なぜかひと手間かけないと統合できない形式だった。それはともかく、直近で一番新しい2021年用を作り、かつ、(1)の形式以外に二つの工夫をした。
一つは、受け入れの反対となる「自市民による他への寄付額」を明らかにした。その人数も分かるのだが表が大きくなるので略した。
もう一つは「受入寄付額÷流出寄付額」、つまりIn/Out比率である。それを見ると実に酷いもので、さいたま市は100倍の差だ。
埼玉県のふるさと納税 実質収支ランキング.pdf
●上尾市の場合 (金額は百万円)
R3寄付額 | 費用 | R4控除額 | 実質収支 | 他へ寄付額 | 入/出率 |
70 | 30 | 574 | -535 | 1,233 | 6% |
●下から三番の所沢市の収支比率が100%なのは、2017年に「ふるさと納税の趣旨から逸脱した競争から降り、ふるさとを思う気持ちからの寄付に期待したい」として返礼品をやめたからだ。 2300万円は見返りを求めない寄付であるが寄付者の税額控除はされる。そうは言っても、前記事の世田谷区のように流出する寄付が圧倒しており、▲9億円と大きい。
しかし、前記事末に書いたように理想ばかりでは喰えないので、23区の逆襲も始まっている。所沢市だって市長が替わったりするとどうなるか分からないだろう。
つづく
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所沢市長の決断理由が気になる。
純粋に他県から無償で納税する元市民なんているわけない。
よほどの金持ちが所沢LOVEの人間ぐらいだろう。
「地元市民がライオンズグッズ欲しさに納税するのがほとんどだから(想像)、
労働軽減のためにふるさと納税制度やめてほしい」なんていう職員が市長に意見具申した
可能性もあるのではないでしょうか。
それにしても「純粋」に納税って笑える。この市長なら図書館建て替えたり、汚職はしないだろう。
投稿: 本好き | 2023年6月 3日 (土) 12時50分
微妙なコメントでしたね…(>_<)
特に、「純粋」に納税 の意味が分かりませんが、
稀に、故郷に錦を飾るという立志伝は有りますから、成功者が故郷に寄付をするというのはあります。
身近だと、晩節を汚しましたが青木拡憲氏がそうでした。
それはともかく
>労働軽減のために・・・やめてほしい、なんていう職員
はいないでしょう。
カネとモノの工程を見た時に、そもそも市役所に作業負荷は無いでしょう。あったら外注します(既にしてます (^-^?)
在庫リスクも販売ノルマもありません。当の市民さえ気にしません
所沢市長の本心は伝えられる通りだと思います。
寄付とか競争という本質ではなく、この国の集団主義は「建前」で妥協しますからね。
投稿: 管理人 | 2023年6月 5日 (月) 21時50分