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2023年9月21日 (木)

7 でっちあげは一級のケーススタディ

1事件 2宣言 3寄稿 4仏と韓国 5桶川市 6失態集

 林真琴座長による報告書は、加害を認め、対策には組織の解体的出直しや景子社長は辞めろと書く。ようはジャニーズ事件の最終判決みたいなもの。いよいよ解体が始まるらしい。

 では、同じ頃の上尾市いじめ問題の第三者・報告書はどうか? 被害者は所見を述べたが学校側は不明。多分、彼らの申し開きを経ての真実(十分かは別)なのだろう。しかし対策は、既に腹いっぱいの研修やマニュアルを追加しただけではないのか。

今回は、20年前にあった日本初の事件を取り上げる。上尾とは関係ない。見かけは特異だが、今に通ずる普遍性があると思うから取り上げた。

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でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相  Amazonへ

読み物としても一級のドキュメンタリーで、Amazonコメントの評価も高い。なお新潮社サイトに「試し読み」があり、前置きからグッと引き込まれる。当時の報道・・・
・小4の母「曽祖父はアメリカ人」教諭、直後からいじめ =朝日新聞
・自殺強要発言、「学校も市教委も身内に甘い」=地元の西日本新聞
・『死に方教えたろうか・・・殺人教師』=実名報道の週刊文春

 本は一審判決までだが、著者の福田ますみ氏が2013年まで追跡取材をしたレポートが同サイトにある。理不尽さが残るラストだった。

---以下は感想----

初め、興味があったのは動機だ。カネ目当てと想ったのでタイトルは「たかり」がいいと思ったが、実は違った。結局、賠償5500万円要求で330万円となった。払った判断が本件のキモだが、そこは省く。ネタバレだからではなく司法制度の問題だから。

本件は、見事なくらい登場人物全てに落ち度や失敗があり、全員の失敗が一本に揃う偶然が本件を肥大化したのだ。しかし、一人一人の失敗は今もあり得ると解釈すれば、いじめ問題の一級のケーススタディになる。実際にケース教材となっているかは知らないが、ここから教訓抽出すれば現場の教師に役立つと思う。

  • 殺人教師と呼ばれた先生

工業高卒、仕事しながら大学夜間、その後に通信教育で学び、採用試験に10回目で合格という異色。本人曰く、優柔不断な性格が、曖昧な態度で安易に認めてしまったと後悔する。しかし、それは罪ではない。優しさが、あだ、つまり弱さ(罪を引き受ける)になっただけだ。

モンペアに迎合したのは校長だけではない。同僚たちも揃って「早く謝ったら」と勧めた。彼の弱腰を批判するAmazonコメントもあるが、そんな場面を経験しないからだ。民間でも、売り場でクレーマーから土下座させられる例はある。彼の態度は、彼が語る、保護者と教師は同等ではないですよにあるのだ。

 余談だが、二年前の紅花保育園 閉園騒動の説明会で「土下座しろ」と叫ぶ女がいた。次に「土下座しません」と男性のハッキリした声が聞こえた。その録音はツイッターの深い所にあったがすぐ分かった。あの場に居た人は知っているはず。
 ツイート主は園を批判し被害者として賛意を募っていたが、強要罪を告白する愚行である。その事を当時のブログには書かなかった。かのヒステリックな声に行政が気圧されたかは知る由もないが、すべきだったかな・・・「通報スマスタ」って。消すまで数か月もかかる人だった。
  • 今でもいそうな校長と教頭

夫婦の訴えと教師の主張に落差があるのに精査せず、一方的に訴えを認めてしまった。それがクレームを「正当化」し、多方面に影響した。ウソにお墨付けを与えたわけだ。理由が、「丸く収めたかった」としても、それは聞こえの良い建前でホンネは自分の立場(評価)を気にしたと想う。更に、曖昧で稚拙なアンケートは残酷な結果を招いた。

つまり、やったんだろう、早く認めて楽になれ、という自白の強要と変わらない。若手のエリート校長とあり、世間知らずの面もあるのでは。

 私立の隠蔽体質は公立より深刻

  • 今でもアル。関わろうとしない社会

他の教師で彼を守った人はいたのか。労組は登場しない。クラスの保護者達はヘンだと感じ、著者の取材に「ホントは違う」と語るも、表に出る人はいない。夫婦の怒りを恐れた面もあるし、面倒に関わりたくない、動かない周りへの同調も普遍性である。

実名報道後にネットは中傷コメントで溢れた。中に元生徒という投稿があった。「素晴らしい先生だった」という感謝の声は埋もれていたという。

  • 正義を気取る新聞社、叩く相手を探す週刊誌

今は文春砲で大衆の味方ぶるが、本件は名誉棄損もの。朝日も毎日も書いてしまってからはバツが悪い。彼らは、学校、市教委、医者が認めているから、体罰はあったと断定し、取材のキホンである裏付けを怠った。
つまり、「権威」と「弱い側に付くこと」に囚われた。昔から、子供や弱者を盾にする言説はあるが、今は更に増えた気がする。

  • 人権派弁護士のうさん臭さ

なんと500人の弁護士が名を連ねた。途中から母親のウソに気付いたはずが、役目上は負けられないから被告側主張に抵抗する。一審220万円後に狡猾な控訴審をへて330万円になった。人権が聞いて呆れる

  • 専門家はピンキリ、誤診をした怠慢医師

医者が記者会見まで開いてPTSDと明言した。弁護士らは、PTSDという結果があるから、原因としての体罰があったはずという理屈。そしてマスコミの過信へとつながる。しかし、診断は、母親の意見に依存したもので事実の裏付けが乏しい(中身はひどいものだった)。裁判で、他の専門家から疑わしいと指摘され、判決はPTSD無しだ。
つまり、校長・弁護士・医師というエリートの肩書に惑わされるなという例だ。

本書とは関係ないが、PTSD汎用や発達障害の濫発という声もある。長く高い金を取れると診断を勧める社労士がいるらしい。保険金の不正受給を連想すれば良い。

  • モンスターペアレント=クレーマー夫婦

浅川和子(仮名)という偏執的なクレーマーが、標的を見つけてエスカレートしたように見える。ウソも何度も言えば本当になった、のでは無い。『いじめられた我が子』を盾にしたから最強なのだ。だから背広組はスキを見せたのだろう。
作り話を冷静に能面みたいに語る姿は不気味だ。家庭訪問時の居間やキッチンは生活感無し、帰国子女とかアメリカに何度も行ったとかの見栄っ張りは全てウソ。必要ないウソまで付く虚言壁もある。

クレーマーのタイプ分類から、妻にはストレス発散型執着型の二つが当てはまる。夫は攻撃型そのものだから、金品(損賠賠償)要求は定石だ。しかし計画的ではないからボロが出る。結局、裁判費用を負担する羽目になり、実質負け。

そんな夫妻の人物像を知りたいが、人権侵害になるからそこまでは書いてない。夫妻の本心は闇のままだが、著者はもっと恐ろしい母親の事件へと進む。モンスターマザー 教師たちの闘い

  • 身内をかばう教育委員会

市教委は、校長の報告がベースに懲戒6カ月(無給)という厳しい処分をした。初めは三か月だったが、原告弁護士の要求があった(圧力ではないと言う)。そして、驚いたのは処分の日のことだ。

課長は、教師に終始冷たく言い渡す。校長にも処分を伝えるが、誠に残念という態度で涙ながらに読み上げた。それを受けた校長も感極まった。若手のエリート校長を守りたかったらしいが、涙ながらの二人の浪花節な光景に、真実が宿るのだ。ちなみに最後は、組織の行為だからとして個人は咎められなかった。いいよな。

  • 難しい子の指導の難しさ

この子は難しい子だ。言葉で諭しても伝わらない。ほって置いたら教室の運営ができない。他の子に暴力をふるうこともある。だから「ある種の指導」は必要だろう。
10年後にでた市人事委の決定に、教師側弁護士は「教諭の言動がいじめか教育的指導かを真正面から判断した」と語る。いじめは無かったし処分も撤回だが、後の祭りだ!

腫れ物扱いして無視すれば楽なのに、彼はそうする先生では無かった。それが過剰反応な時代の落とし穴になる。まともな親なら、粘り強く向き合ってくれる彼に感謝するはずが、この親は逆。この子は母親の投影だろうと想うと、子も犠牲者になるが、その再生産が恐ろしい。

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なぜ、ここまで母親から恨まれたのかについては、終章に推測がある。母親は忘れ物が激しい子供への躾けに苛立ち、子供は自己防衛のウソをつき、教師のせいだと転嫁され、吐け口が向かったのではないかと。

Amazonには、この本こそでっち上げだとのコメントがある。逆張りなのか、関係者なのか分からない。前4で「教師を追い込む韓国の親」を書いたが、やっぱり日本が先進国だった。しかし、教師が女性だったら耐えられただろうか・・・

つづく

 

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