カテゴリー「本・読書感想等」の57件の記事

2024年2月11日 (日)

スタンフォード監獄実験の茶番を受け売りした右京サン

(読後)希望の歴史」が導く性悪説から性善説とその向こう・・・

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ドラマ相棒シーズン22は筋書きが凝った話しが目立つ。面白いけれども無理やり感が有るからリアリティは欠けてしまう。脚本家が替わったのかと思ったが昔からの人だった。 第12話「惡の種」、1/17 脚本は徳永富彦

悪のタネは、ある状況下では被害者なのに他の局面で殺人者になるという不思議な展開だった(ラストは余韻残して終わったので新しい連続モノなのだろう)。

そのドラマ中、右京が薫に説いたのが上である。それ以上得意げに語ると右京さん赤っ恥だよ」と思った。と言うのは、この実験名が上尾の読書家ブログに出ていたことを想い出したから。

そのブログでは、科学と人間との関係を考えるきっかけとなる一冊として「闇に魅せられた科学者たち」を推奨していた。

ブログで扱ったのは脳に穴を開けて手術治療したハンター医師の例で、スタンフォードの監獄劇を真に受けていたわけでは無いのは賢明なブログ主らしいが、付いた、拡大解釈のコメントは自分の感情に「囚われ」た風に読めた

ついでに書けば、ついこの間、人間の脳にコンピーターチップを埋め込む手術が行われたばかりということ。答えのでない議論をしている間に、SFや漫画の世界が現実になっているのだ。

 (CNNのこちら)。

 

●監獄実験とは。簡単に書くと

スタンフォード監獄実験 – Wikipedia
1987年のこと。刑務所を模した部屋で、広告で集めた若者に看守役と囚人役という特別な立場を与えると、彼らは役割に合わせた行動をしたというもの。拡大解釈すると、恵まれた環境にいた人でも、状況を変えるだけで行動に強い影響を与えられ、条件さえ整えば、誰でも凶悪になれるという。

 名声を得た学者の名からジンバルドーの監獄実験とも呼び、衝撃的な結果だが、実験そのものが非人道的なので、誰も検証しようが無いために、今でも大学1年生の教科書に掲載されているという。だから受け売りしたり、都合よく自分の攻撃材料に応用する人もいるだろう・・・

 こうして、世の中には通説のような「事実」があるけど、そうしたものは疑わしい研究だったりして、事実とは程遠いということを丁寧に指摘した本がある。

Humankind 希望の歴史 上と下 ルトガー・ブレグマン(著

本書に通底するのは、人間社会では性悪説が受け入れられやすいが本当にそうなのかと問う。

そして、性悪説を助長する権威的な科学を装った研究の中に怪しいものがあると暴く。その一例は監獄実験である。騙されたと思った人には必読だろうが本書の価値はそこではない。

人間は性善説で生きるべきだと強く主張しているわけでもないと思うが、悲観的に傾きがちな今日、もっと人を信頼できる希望の持てる」事例も扱っているが、読了しなかった・・・ブラジルの住民参加の地方自治の成功例、介護施設の成功例、WW1のクリスマス休戦など。

国際的なベストセラー。

歴史書ではなく思想や倫理の本と言う感じ。

 

追記2/15

監獄実験では、足かせを付けたり、番号で呼ばれ人格を否定されるが、なんと受刑者をサン付で呼ぶようになる、刑務所まで人に優しい時代になるが違和感ある。

殺人犯でもか!

 

 

2022年6月14日 (火)

日本がウクライナになる日

夜郎自大の帝国マインドとは言い得て妙だ!

河東哲夫 著・元在ロシア大使、CCCメディアハウス 

Photo_20220614174001ロシアを見てきた元外交官がプーチンの侵略戦争と日本の今後を多面的に解説した本。データで説く本では無く、豊富な外交官キャリアを元に語る感じ。読みやすいが、急いで書き下ろした感もある。

 日本はロシアと領土問題を抱えているが、この戦争からは地理的にも遠いため、国内報道は外電の孫引きが多い。そしてリアリティにも欠ける。そこで、日本語サイトではニューズウィーク日本版を見ることがある。最大の影響国アメリカの専門家の意見は多様な見方の一つとして意味がある。元CIA分析官の寄稿もあったりする。

 本書は同誌のコラムニスト・河東哲夫氏によるものだ。日本向けは最終章「日本をウクライナにしないために」が提言となる。つまり、タイトルとは真逆である。これは出版社の「売らんかな」の危機感商法だろう。

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 著者は、ロシアを夜郎自大の帝国マインドを持つと批判する!

 ロシアはアメリカと同格であらねばという考えが強く、その根拠にはアメリカを破壊できる ICBM をたくさん持っているからだという(約6000発)。この戦争はロシアが帝国復活を作して失敗するという崩壊のダメ押しになりかねない。アメリカは、ウクライナが弱ければ東西の緩衝地帯で良しとし、もしウクライナが強ければバイデンは強気に出ると指摘する。

 ロシアはアメリカも今まで武力侵攻してきたと言うが、アメリカは他者の権利を守るために介入する例が多く、ロシアは自分の利益のために侵攻する。だから多くの国がアメリカを支持するが、ロシアの侵攻を支持する国は少ないという。

 中国のことも書いている。中国が台湾を制圧すると、在日米軍基地を脅かせるから、金がかかってもアメリカは基地を日本以外へ移すだろう。だから、日本は自主防衛のための防衛力を整備することは当たり前だと説く。

 その中国を、自他共に過大評価の国だと指摘するが、その点はやや違和感がある。ロシアは軍事力で他国を脅かすだけで経済支援ができないから嫌われる。一方、中国は経済力で他国を懐柔して軍事基地化する。汚いけれど後進国には巧みなのだ。中国の技術はまだ西側の模倣でも、東洋人には努力気質があるから、いずれ西側に追いつく分野が増える。さらに、ロシアよりも国内の情報統制は強固である。

 日本については、連日の戦争報道により日本の呑気な時代は終わったから憲法改正・核武装などの安全保障を現実問題として考えろ、と言うのも文切り型で思考停止だと書く。先ずはタブーを取り外して考えろと説く。例えば同盟関係では、有事に仲間を助けるという義務に背くとその国は世界史に残るほど信用を失うが、トランプのような内向き人間が出てくれば、日米同盟で必ず日本を守ってくれるというわけではない、と警告する。

  • 核武装をどうするか

北朝鮮、中国、ロシアの核ミサイルを抑止する方法の議論が必要であり、非核三原則を「見ざる聞かざる言わざる」と同じだと嘆き、法律ではないから変更可能だと言う。しかし、幾つかの理由をあげて日本は核兵器を作れないし、アメリカも認めないという。

ならば次は核シェアリング検討となるが、米軍の核を国内に置くことを国会で決めても、地方自治体が大反対するから無人島に置くぐらいだろう。或いは、アメリカ原潜の核ミサイルの共同使用も複雑な話になるので無理という。

結局、日本が核武装できるシナリオは思いつかないと書く。

だから、相手国が核を使う脅しをかけてきても気にしないガッツを持つか、相手のミサイルを確実に落とすレーザー兵器などを開発するしか選択肢はないだろうと・・・この辺りは物足りない話になっている。

また、日本人の安全保障観はひどく捻れている、戦争反対と叫んでいれば人間としての義務を果たしたような気分でいるのだろうと批判するが、一つ同意できるのは、「日本人には軍事についての基本的な感覚がない」という指摘だ。だからこの機会に防衛のイロハの学習をすべきと言う。確かに、核にせよ防衛方法にせよ、議論してはいけないというのも思考停止である。

著者のコラムはこちら。外交官の万華鏡

親ロシアあるいは宥和的な人

 いろんな専門家がいるものだが、日本にも親ロシア的な態度をとる人が少なからずいる。参議員の鈴木宗男氏は有名。元外交官の東郷和彦氏もたまにテレビにでるが、彼の場合は口下手なために意味不明だ。

 嫌ロシアばかりになるのは危険なので宥和的な人も必要だが、ホンネが既得権益だったりすることもあるから、ロシアで飯を食っている人には要注意だ。

でも、この間に一番呆れたのは安倍晋三である。27回もプーチンと会って飯を食いながら成果は無かった。今更、「プーチンは力の信奉者」だと批判して、防衛費拡大や核共有を現職総理へ口出ししている。どうにも便乗商法的で、そのずるさは相変わらずだなと思う。

27回も会談した理由は単純だ。首脳会談の場合はNHKや新聞が毎回トップニュース扱いするからだ。ニコニコと会談する姿を、「やってます感」満々に宣伝される。NHKは岩田とか言う女性記者が提灯解説をするわけで、まさに、「プロバガンダに騙されるな」である(本書の帯)。

文春 プーチンに媚びた面々 安倍、森、鈴木、鳩山

前記事 ウクライナ報道と防衛研・高橋杉雄氏

 

 

2021年9月 4日 (土)

ぼくはイエローで描かれた多様性社会への躊躇

日本がそこへ進むのは まだゆっくり。

ブレイディみかこ著 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー (新潮社)

 どうしてリスエストしたのか忘れた頃に貸出順番が回ってきた。図書館に10冊位ほどある人気本で、オール貸出し中だ。目に見えない予約行列は当節のワクチンみたいだ。下図クリックでアマゾンへ

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博多出身の日本人女性(著者)はイギリスのブライトンという街に20年も棲む。イングランド出身の連れ合い(夫とは書かない)との間に生まれた息子を中心に、人種や文化の多様性や経済格差の葛藤の中での学校生活や暮らしを描いている。

 とても読みやすく、お勧めしたい本である。

 いきなり、地元の「底辺託児所」で保育士をしていたとか、名門カトリックの小学校を卒業した息子が、地元の「元底辺中学校」へ行く、等々、遠慮のない表現が良い意味のインパクトを与えている。この本は、その入学前後の一年半ほどの日記、あるいはエッセイをまとめたものらしい。

 憧れを抱きそうな英国暮らしではなく、全編、「母ちゃん、父ちゃん」と書く気取らない表現が読者に親近感を持たせる。実際は、息子と母ちゃんの会話が多く、父ちゃんは時々加わる程度だ。(思春期の)男の子が、これほど母親と話し合える家庭は(イギリスでも)珍しいのではと思うが、賢く感受性豊かな優しい息子である。

 イギリスでも子供の進学は一大事で、学校の情報公開が盛んなために学校ランキングがあるという。学校と家との距離が近い子が優先されるためランキングの高い学校の近くへ引っ越す親が多く、住宅価格が上昇し富者と貧者の棲み分けが起きているという。日本にもあるが、もっと浸透しているわけだ。

 中学校を選ぶ時、かって白人労働者の子が通う地元の底辺中学が、新校長の教育改革でランキングが中位になっていたので母子で見学に行き、息子の意思で選んだ。母ちゃんの目には、進学校は校舎が立派でも教室風景は、前席に真剣な生徒たちがいる一方、教室の後ろ側は別世界となり学校が教育放棄をしているように見えた。

 反面、元底辺中学校では、授業についていけない子は廊下に席を設けて他教師が指導し、「取り残される子供を作らないのがモットー」だと言う。

 著者はイギリスを階級社会とハッキリ書くように、子供を取り巻く家庭環境の差は日本とは比べようがない。

 かつてこの中学校には、制服が買えないとか、昼食を買えず腹をすかす子供などがいて、教師らは自腹で支援するなどソーシャルワーカーみたいだという。保守党政権による緊縮財政によるもので、今でも貧困地域の子が通うためそれに近い状態がある。

 母ちゃんは息子の入学を機に制服リサイクルのボランティアを始めた。古い制服を預かり修繕し100円とかで校内販売する活動だ。一着しか持てない家庭の子は、洗って乾かない服をそのまま着てくることがあるのだと先生が嘆く。穴の開いた制服で通う友達に、傷つけないように息子が自然に渡す気づかいが印象的だった。

 想い出したは、日本では中学や高校を卒業すると制服が不要となり何着も資源ゴミに出されること。日本はおニューを買うのが当たり前で、リサイクル品では子も親も恥ずかしいという世間体がある。それを飯のタネにするのが学校指定という仕組みかもしれない。地域の産学連携みたいなもので、どう見てもさえない店構えなのに、なぜか潰れない教育関連品の小売店ってあるよね…。価格競争の働かない談合、既得権である。

  息子は、日本に里帰りすれば「ガイジン」と呼ばれ、こっちでは「チンク」と呼ばれる。だからどこにも属している気持ちになれないと嘆く。時には友達からの差別的な言葉に悩むが、母親との会話や友達関係を通して成長していく。生活の全てに人種と経済格差が絡み合うのだが、非白人でも高い教育で高収入の職業に就く人もいれば、白人の低教育による貧困層もいるので単純ではないが、それが固定化しているようだ。

  異国籍の親の元に生まれた人への呼称が難しいと思った。息子は、「ハーフって半分という意味で酷い、かといってダブルで2倍かよ」って怒っていたように、よい表現がない。ミックスも最適なのかは分からないが、昔は平気で混血児とか言っていたのであまり良い連想がしないのだが・・・。

 多様性と言えば、先の東京オリンピックで日本チームにはミックスだけではなく白人や黒人の日本選手がたくさんいた。特にボール競技は外国人コーチだけではなく、彼・彼女ら抜きでは世界レベルにならない。スポーツ界は人種多様性の最先端であることがとても良く分かった。八村塁を旗手に、大澤なおみを最終聖火ランナーに選んだことには時代の大きな意味があるのだなと、読後感としても理解できた。

 で、一流のミックス選手になれば差別は少ないだろうと思っていたが、SNSでは匿名の差別的言葉をしょっちゅう投げつけられると八村塁選手が嘆いていた。普通のミックスなら猶更だろう。この本では差別的表現にならないように気を使って接していても、受け止め方が異なることで、逆に差別的言葉を投げ返されるという例もあった。

 所で、イギリスでも自国民がやりたがらない仕事を移民にさせるように、日本も実習制度を使い、日本人がやりたがらない仕事の穴埋めに外国人労働者を使っている(介護職も)。彼らは、通貨の為替レート差があるから低賃金でも我慢しているが、これから円安が進めば来日動機は消えてしまうだろう。

 LBGTQの話が出てきた。

 学校の授業でやるのだが、Q(性自認・性思考)について学校帰りに息子達が話していた様子があった。(うろ覚えだが)ボクは男(異性愛)だなとか言う中で、一人がまだ分からないというような事を言っていた。この辺りは、子供達は成長しているんだね、風にあっさりと書いていた。

 想い出したのが、昔読んだアメリカ社会の過剰リベラルの話し。

 リトル・マーメイドも叩く過剰リベラルの罪(東洋経済)

 リベラルの強い州における小学生への性教育について、リベラル派の親たちも辟易しているという内容だ。記事には書いてないが、学校から帰ってきて、「ママー。私は男なの、女なの、どっちにしようかな」みたいなことを尋ねられ、困惑する姿を想像してしまう。確かにそりぁ困るだろう。

 先の東京オリンピックでは元男性の重量挙げ選手がトランスジェンダーの女性選手として参加した。もはや理解不可能な領域に入っているとしか思えない・・・。

 

 本書はお勧めです。

 

 

 

 

 

2021年2月12日 (金)

メイドの手帖…掃除婦は書いた

最低賃金でトイレを掃除し「書くことで」自らを救ったシングルマザーの物語。

2019年にオバマ元大統領が夏休みに読むべき推奨本に挙げたことでベストセラーになった本。NETFLIX化。

Photo_20210211235101現代アメリカの底辺で白人女性が赤ん坊を抱えてホームレスになりながらも、メイドとして掃除を掛け持ちしながら逞しく生き、清掃作業の四つん這いの世界から這い上がり、学位取得へ向かった著者の実話。

生活保護制度の受給者ならではの指摘、DVのトラウマ、見放された親との愛憎、周囲からの偏見、保護を受ける側にいる葛藤、預金残高と請求書のカツカツの話し、子供への自責の念などが切々と綴られている。

著者のステファニーは、若気の至りで付き合ったパートナーからDVを受けながらも彼の子を出産。離婚した両親からの援助も得られず赤ん坊を抱えてホームレスシェルターへ避難した。福祉の助けで何とか救われるが、一人親であることの惨めさから逃れるために新しいパートナーの農家へ転げ込む。

しかし、農家の嫁のように働いても自由になるお金は得られず負い目を抱く日々から抜けるためメイド(掃除婦)の派遣会社に身を置く。最低賃金(9ドル)で働き、少しでも稼ぎたいために自らクライアントを開拓するなどハードワークの日々に埋もれていく。

本書の多くは、クライアントの家の清掃を通して、彼らが豊かそうでも内面は幸せではないと観察するなど、汚れぶりや家主らの人間模様を巧みに描いている。
個々の家には「ポルノハウス」「観葉植物の家」「シェフの家」「悲しい家」「ピエロの家」などあだ名をつけて呼んでるのは、メイドという立場が人間的な扱いを受けないためなのだろうか(自分を見えない幽霊と言う)。彼女を人として扱ってくれたクライアントもいたがそれは稀だ。

彼女の暮らしにはいろいろな困難が訪れるが、7種の複雑な福祉プログラムを申請するように賢く、粘り強く、落ち込んでも向上心があり、時には人の優しさを助けに乗り切っていく。しかし、小説のように大きな山場があるわけでは無い。黒カビが絶えない家での暮らしが愛娘ミアの病気を深刻にすることやマイカーが追突されて大破した事故(仕事を支える車を失う)の辺りが一番辛い局面に想えた。

 著者のステファニー・ランドさんは子供のころからの夢であった作家として、この本でデビューした。今は、助ける側の活動もしているという。生活保護への受け止め方は日本もアメリカも関係なく普遍的だと感じた。

---- stephanie land blog

Netflix

410頁という長い本は苦手でしたが何とか読めた(毎日50頁なんてムリ)。書かれている時期は2008年頃からの五年間位らしいです。

ところで、日本では自宅の掃除は自分でするのが当たり前です。他人に掃除を依頼することは稀。せいぜい年末のダスキン等でしょう。ですから、アメリカの習慣が理解しにくかったのですが、あとがきの渡辺由佳里氏の解説が秀逸でした。アメリカ暮らしの時に自分でトイレ掃除していたら「貧乏なの?」と言われたそうです。

アメリカではメイドを雇うことは一種のステータス、経済的に成功した女性は自分でトイレ掃除をするものではないという風潮がある。トイレ掃除は男社会が女に押し付けた汚れ仕事であり、奴隷制度や貴族社会の名残。だから、職業選択の自由度がない有色人種や移民の女性が掃除を担うことになる。ところが、白人女性達には恵まれない人を雇ってあげているという選民意識があるのだと言います。

 

2020年11月 4日 (水)

トランプはソシオパスである

51gsjdfjpl_sx343_bo1204203200_世界で最も危険な男(メアリー・トランプ著)

 トランプ大統領の兄の娘、臨床心理学の博士号を持つメアリー・トランプ女史によるトランプ一族の精神構造を告発した本だ。ドナルド・トランプを反社会性人格障害であると断言し、その生い立ちから今をクールに綴る。

(本書p30-31) 彼は反社会性人格障害の判断基準にも当てはまっている。この障害が重度の場合、通常は社会病質者(ソシオパス)として判断されるが、別のケースでは犯罪常習者や、傲岸で他者の権利を無視する人の場合もある。依存質感はあるのか? おらそくあるだろう。ドナルドは依存性人格障害の診断基準のいくつかにも該当しそうだ。・・・・

 日本だと名誉棄損になりそうだ。トランプ氏は出版停止を申し入れたが裁判所は出版許可をだした。

 大学の替え玉受験とか父親の汚れ仕事を手伝っていたことなど、身内でしか知り得ない事も赤裸々にあるが、惜しいかな家系図が無いので人間関係の所が??となりやすい。(主要人物名には注釈付きだが)

父フレッド・・・長女マリアン、長男フレディ(著者の父)、エリザベス、次男ドナルド(大統領)、三男ロバート、もう一人?。多分こんな感じだ。さらに親戚や友人、政治家名もでてくる。

全ては、父親フッド(住宅建築王)から始まる。共感力が無く、平気で嘘をつくとか他人の人権を無視するなどのソシオパスだと書く。完全な父権主義らしく、「女は生まれつき男より劣っていると決めつける性差別主義者」ともある。その影響から子供を守るべき母親は病弱であったために守れなかったという難しい家庭だ。

身内の悪口を綴った本ではない。専門家らしく冷静で心理分析に長けた内容である。最後ではコロナ対策にも批判をしている。なお、著者の父はトランプ一族の長男だったが跡取りになれなかったことや早死にし、ドナルド氏とは相続争いの関係もあった。

政治的なアンチ本と見なされると価値が落ちてしまう。「トランプ本」というジャンルがあれば一番傑出した本かもしれない。今後、トランプ大統領の伝記本は出版されるのか? 引退後にゴーストライターに書かせればできるし、元大統領として一回数千万円の講演生活もできるだろう。

分厚い本なので、日めくりカレンダーみたいに眺めただけだった。

今更読んでも仕方ないことを願っている・・・。

●日本人でトランプを推す人が多い理由

安倍さん支持者はトランプ支持である。一番の理由は人柄には目をつぶり、中国にケンカ腰をとる姿に惚れている。でも国内求心力や選挙目当てで中国を敵視しているから、通商交渉なんて結局はカネで買える次元だ。理念や長期視点はなく目先の損得だけ、というのはこの本にもある。

防衛装備を拡大したい人達はトランプが好きだ。危機を煽り武器を買えと言うから。

人種差別主義者だから彼の脳内での序列は黒人も黄色日本人も似たようなものなのに、大阪なおみさんの抗議姿を批判する日本人の脳内は、白人、日本人の順で心地よいのだろう。相変わらず日本は属国向きである。

ところが中国はトランプとバイデンのどっちが良いと思っているかは非常に難しい。

トランプ大統領は西側同盟を弱体化し、国内も混乱させることで世界におけるアメリカの地位を衰退させるから、中国には都合が良いという日本の中国問題アナリストもかなりいる。

コロナ禍の日本はサービス業が干上がっており、製造業が相対的にマシだ。その製造業で業績が良い会社は中国経済依存で飯を食っている。

 

 

2020年10月27日 (火)

日本語を取り戻す(読書)と菅さんの始まり 

人気コラムニストの小田嶋隆さんの最新作である。

新刊本をリクエストする場合、出版後数週間もたっていると他市取り寄せを優先するだろう。だから、直後、または発売前に図書館にリクエストしておくと新規購入対象の可能性が高まる、かもしれない・・・。

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というわけで図書館の一番手となったが、本書は、私生活や世相を綴ったコラムではない。

日本語を、取り戻す。亜紀書房 小田嶋 隆

小田嶋氏はツイッターでも有名な方で、政治家やジャーナリストとは異なる視点から鋭くユーモラスなコラムやツイートが人気ある。人気があるから、ネトウヨ界隈からのいちゃもんも多い。例えば、日経ビジネスでのコラム(最近は有料記事扱いに変更された)には、読後評価は「良い」が多数となっても、記事のコメント欄には批判が多く書き込まれる、という現象だ。本人は気にせず文筆家らしくそれをネタにする。

「いちコラムニストが、日本語の守護者として安倍晋三と言う人と対峙してきたスコアブックの如き書物になっている」とあとがきに書くように、今まで安倍政権に対して書いた時事コラムを集めたものだ。タイトルは、「日本を取り戻す」という安倍さんのスローガンを捻ったものだと思う。日本とした意味をこう書いていた。

「私はある仮説を立てている。それは、この間、政権を担ってきた安倍晋三氏の口から漏れ出す日本語が、あまりにも空疎だったことが、それらの日本語話者の精神の復興を妨げたという、いささか突飛な考えだ。」

ようするに専門的な政策批判ではなく、総理大臣ともあろう人や高級官僚が、中身の無い言葉を延々と国会等で垂れ流して平気で済ませられる今日を批評した本である。例えば、共謀罪や議事録廃棄、佐川証人喚問、黒川検事長、コロナ対策などいろいろあるが、幾つかは日経ビジネスで読んだものだった。時事コラムは鮮度が大切なので、後でまとめて出版してもどうなのかなという気もする。

校了は夏なので、次期首相がまだ不明の頃だった。今後、著者のぺン先は菅さんに向かうのだろう。他の著書では上を向いてアルコールのアルコール依存症から生還の話がなかなか面白かった。

●ようやく国会が始まった。

菅さんは官房長官の時から答弁がつまらないのに「答弁が安定している」とヘンに評された(加藤・新官房長官もそう言われる)。実際は、答えたくない時は「承知してない」、「批判に当たらない」、「全く問題ない」を連発して打ち切る人だった。

説明を避けたり人事権を振りかざす点で前任者を継承するが、弁論や能力的に優れているわけでは無く、彼らの態度の源は圧倒的多数の議席数にある。それでいながら、本当の理由を言うと面倒になり、その面倒に立ち向かうことから逃げるため質疑と言う公式時間を空疎な答弁で消耗させ、結論だけに到達すればよいと考えている。それが今の議会制形式主義である。

アメリカでは大統領が本音だけではなく嘘や暴言のし放題だ。日本は本音を建前で隠して結論だけを語る。二階幹事長などはその最たる人だから、あの人の言葉は平易すぎてまるで印象に残らない。菅さんは安倍さんみたいにムキになったり、イデオロギー傾斜ではないが、もっと冷淡で乱暴に振る舞いそうだ。

菅首相は、話すことが携帯料金やハンコ廃止などの小粒な案件が多い。大衆迎合的なことを語るのはビジョンの無さを隠すためだろう、と思ったら30年後に「温暖化ガスをゼロ」と気の遠くなる話しを大言壮語した。でも本当は、党内基盤が弱いから(大衆迎合策で)支持率を高めることが党内支配に必要と考えているのだろう。

安倍さんを見ていた経験からだ。

 

2019年6月16日 (日)

絶対に市民に見せてはいけない職員手帳

トントントン、ヒノノ、日野市だよ(^^♪

510h5axeiql_sx347_bo1204203200_ 是非、読んだらと押し付けられた本。絶対に人に見せてはいけない日野市の職員手帳・アマゾンはこちら

日野市役所の職員手帳が余りにもユニークな内容のため出版になったらしい。100ページ弱、中身はポップなイラストと軽快な文章でスラスラと一時間もかからない。職員向けの内輪話と日野市愛の再発見みたいな感じで書いてある。昔の「猿にもわかる」というタイトルを思い出したが、初めは文を「市民に見せては…」と誤読した。

昔、日野に職場があり、多摩川を渡る中央線の車窓からみる冬の富士山が眠い目を開かせてくれた頃を思い出した。しかし市役所のある日野駅に降りた記憶はない。通り過ぎるだけ、帰りの歓楽街は主に国立の一角と立川だった。

工業出荷額が都内一位・二位と書いてあって、そうだあそこは大企業の工場がたくさんあり、それが浮沈の激しい業界ではないから今でも存続しているのだ、と合点した。

読んでいてへーな点。

職員1400人のうち、出身大学は中央大学がダントツ75人。5番目に明星大学があり、二つとも近間の大学だよ。日野市に住む職員は45%もいる。データブックの面は無いけど、人口18.5万人でわずかながらも転入超過・出生超過、老年人口は24%だった。凄いね。財政データは無い。

一つ、がっかりな点。

「Q なんでそんなに縦割りなの?」の答えが「・・・一人一人が専門性をぐっと深めていかなきゃいけないので。」と自信満々なこと。それには在籍年数の裏付けが必要だし、日常経験からは納得できね(笑)。後、脚注文字が小さすぎて読めね(泣)、これは出版社が悪いね。

巻末に本書のきっかけが書いてある。

住みたいまちランキングで日野市が100位圏外(106位)だったのがショックだったのが契機となり世界に一つの職員手帳を作り出したという。多分、東洋経済やダイヤモンド社の仕業だが、あれは本を売るための企画であり、あんなものを真に受ける方が、それこそ行政の専門性が疑われるわ(笑)。

でも、こんな企画できるのは庁内の風通しが良い証拠だと思う。日野市役所のリクルートブックとすればよくできている。

本を勧めた人 曰く「上尾市役所でも作ったらどうか」。

二番煎じはダメ。

 

作るなら、本稿のタイトルかな。

 

 

2019年5月 2日 (木)

飯綱町議会の改革、寺島渉議長。嵐がきて変れる街と変われない街

正義だって、たかる人がいる

Photo_13 飯綱町は戸隠村の手前にある山の中の町だ、というか長野県そのものが山の中だ(笑)。
長野市から車で三十分ほど。昔は善行寺裏から登るつづら折りの道が急こう配で、ギヤをLに入れないと登れない七曲と呼ぶ難所もある。
今はループ式の迂回道ができて楽しく走れるから、七曲を選ぶ人はへそ曲がりだ。

 冬の飯綱スキー場は初心者から家族向き。夏場は池のボートやキャンプ場もある。さらに数十分もバードラインを走れば戸隠蕎麦の店、さらには戸隠神社の奥社へと観光にもよい。

つまり、こんな山間風景しか思い出せない町が議会改革の先進事例だと聞いて 、ウソだろ(>_<)!。

 上尾の市民団体AANが二月に寺島渉・前議長を招いて講演会を開いた。その後、実施した写真ブログもあったが、肝心の中身の報告は無いし、出席した市民がネットで感想を披露するでもないので、やっぱり必要無かったなと思っていたら・・・

予約本が忘れた頃にやって来た。

地方議会を再生する/相川俊英/集英社新書

人口11千人、四千世帯、2014年の一般会計65億円、財政力指数0.29はぜい弱だ。議員は16人、会派は無い。報酬は月16万円と最低レベル(年収は議員262~議長441万円)、政務活動費も無い。年間活動日数は議員110日・議長284日と信じられない多さ。日本一コストパフォーマンスの高い飯綱町議会なのだ。

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懐かさのためか私的にはスラスラ読めたが、一般には田舎の政治劇と感じるかもしれない。昔は三水村(さみず)と牟礼村(むれ)だったが、平成の大合併で飯綱町になった。その過程における寺島渉・前議長という骨太な政治家の奮闘記をライターが書いた本だ。特に、前半にある腐敗と政争劇や合併問題の混乱ぶりの話は、アルアル感で面白く、「違法行為をする人よりも、それを指摘する人の方が悪い」という歪んだ考えの村社会への挑戦物語である。

寺島氏は立命館大の民生同盟の活動家で、若いうちに郷里、牟礼村の共産党議員になる。その彼の所に一通の談合情報が寄せられた。不正追及なら共産党という訳で(業界関係者から)届いたらしく、「ゴミ焼却場の建設が初めは中小業者が行う19億円規模だったが、急に大手のみで27億円に増え、差額を工作資金化する」というもの。

  • 正義の裏側

 寺島氏は予算が通る前に公開質問状を出すことにした。しかし党上部から質問状への連名を指示され、逆らえば除名とも。近づく選挙目当てという狙いを感じとった寺島氏は党の要請を拒否し一人で出した。そして仲間達も離れ、孤立化していく。不正追及の舞台裏で、手柄の横取りで選挙利用という泥臭いエピソードだが相当苦労したようだ。

 その後、共産党出身議長になるも、やがて離党し、村長選にでたが完敗した。その時の候補者らの主張がイイ。

・類似の公共施設を近隣自治体が競うように持つのは愚の骨頂。
・車で30分圏内には同じような施設は作らない。
・村民には近隣自治体の施設を使うように。・・・笑える

 「三水のような貧乏村とは合併したくない」という格上意識があったと嘆くが、相手を嫌うのはよくある話だ。合併特例法の期限ぎりぎりに合併を果たし、新町長選は82%の投票率、町議選は双方から半分ずつとなる。また、第三セクター飯縄スキー場が累損15億円を抱え、損失補償が明るみとなり、なんと八十二銀行から町が訴えられる事態まで発展したとあった。こうしていろいろな問題が起き、その再生過程で寺島氏のような強いリーダーが議会改革を推し進めたようだ。

 読んでいて、アリコベールA館売却による第三セクの損失(21億円?)、さいたま市との合併問題(市長、労組による合併反対運動)、ゴミ焼却場の不正入札(ツートップ逮捕)、上平新図書館(総事業費38億円)とその裏で進められたパークゴルフ場建設(?億円)等々、上尾にも何度か嵐がきたがそれを機に変る力は起きなかった。

・肝心の議会改革はややピンとこなかったが… 

・一問一答方式の導入 (上尾は実施済み)

・町長に反問権・・・(簡単なのですぐ導入すべき)

・同一議題の質問三回までを無制限に。(議論を避ける体質があると無意味)

・全員協議会で議事案件の争点整理をしてから、一般質問をすることで質の向上になる。

・議会サポーター制度。町民参加を広げる、現在16名 (よい仕組みだ)

等々だが、「議会力は上がったが、議員力はまだ」と言う。ところで飯綱議会には会派が無いが、その廃止方法が分からなかった。

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 ホンネが「改革したくない」という議員が多数派である限り、議会改革は中途半端になる。だから、できないと知りつつ「只今検討中」という「やってます感」で住民に格好を見せる。議会基本条例も他の自治体のをコピーして、導入したつもりになっている所が多いと書いてあった。実は「改革」というほど大げさなものではなく、ごく当たり前なことを望んでいる。それは「きちんと議論しろ」ということ。それができないのは能力が無いのか、人前で議論すると困るからだろう。

 今の上尾では、政治倫理条例とか職員倫理条例が注目されている。条例を作ると議員や職員の質が高まるなら、地方の問題はとっくに解決しているはずだ。企業でも新しい経営手法がトレンドになると、「○○委員会」を作りたがる。作ることで安心しきるのだ。

 特に上のリンリと言う用語は「議員のモラル」と勘違いされるから別表現が良い。真のネライである『議員の利害関係者に公共事業を受注させない』を前面に出すべきなのだ。そして「多数派により否決された」と何度も何度も宣伝すれば良い。

例えば、市が行う契約に関連して、特定の業者から金品等を授受することや特定の業者を推薦、紹介等有利な取り計らいをすること、自己または親族が実質的に経営する企業に受注させること等を明示し、これを禁止する。 上尾市 第三者委員会報告p12より

 

参考 JIJI.COM トップインタビュー寺島渉

 

 

 

 

 

2018年5月17日 (木)

畠山市長のジレンマ-2・・・推奨本、つながる図書館

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み  猪谷千香著/ちくま新書

前記事のつづき

Photo 閉館後の図書館は、昼間の図書館とはちょっと違う。子供たちがお気に入りのぬいぐるみを図書館にお泊まりさせ、翌日朝迎えに行くと、夜の図書館で遊ぶぬいぐるみたちの姿が写真に。一晩さびしかったけれど、ぬいぐるみが選んでくれた本を借り、ぬいぐるみと一緒におうちへ帰る子供たち。アメリカの公共図書館で始まったイベント「ぬいぐるみのお泊まり会」は、日本でも2010年から広まって各地で人気となっている。

えぇっと驚いたが、他市の類似施設を見るまで上尾市の現本館の子供室にある円形部屋の造りの良さは分からなかった。当時の担当者たちが良く考えたと感心する。ただ利用は少子化で減っており閑散としている…

本書は最近の図書館の成功事例、有名事例をジャーナリストが取材して書いているから読みやすい。

・年末年始も開いている、葛飾区立図書館

・住みたいと言われる図書館、武蔵野プレイス

・コンシェルジュが本を案内してくれる、千代田図書館

・公募館長のもとに町民が作った、まちとしょテラソ(小布施町)

・市民が図書館の誕生日を祝う、伊万里市民図書館

・毀誉褒貶に晒される、武雄市図書館

・公立ではない新しい公共、船橋まるごと図書館

ただし武雄市のツタヤ図書館については開館直後とあってCCCの受け売り的な内容が鼻につく。今読めば問題露呈により色あせてしまっている。当初の派手な出現に、浮かれた評価をした首長や議員が多かったように思う。今月中に最新統計が発表されるので改めて注目だ。

どういう図書館が望まれるかよりも、実現プロセスへの住民参加の質と量に関心があって読んだ。それを扱った事例は複数あり、人口数や財政力は関係ないのだということが分かる。それこそ民度なのだろう。その点では近隣の白岡市立図書館のオープンが絶好の比較対象となる。

読んで後悔する本では無いから、畠山稔市長に推薦する本である。アマゾンでは中身検索付きで立ち読みできる

2018年4月10日 (火)

住宅過剰社会の末路-3 宅地拡大のデメリット

宅地開発の風景を見ると人口増加でイイなと思うこともあるが、そんな単純な話ではない。

老いる家、崩れる街…自分の街を見回そう
 住宅過剰社会の末路-2タワマンとサブリースそして近所

本書で驚いたのは、新築住宅がインフラ(道路、小学校、公園)の整わない区域でも野放図に続けられ、居住地の拡大が止まらないという指摘だ。その結果、公共施設や道路、防災対策やゴミ収集エリアの拡大を迫られて行政負担が増すという。

土砂や津波、高潮、災害危険区域という指定があっても、或いは活断層があってもマイホームを建てることは可能というほど新築規制は難しいらしい。地方都市では農地エリアにまで住宅がバラ建ちし、人口密度の希薄化が進むという。これらは各自治体の都市計画における規制緩和合戦の結果だという。国も不況対策として住宅建設を煽ることを繰り返してきた。

既存の家を壊してそこに新築するという再建築率は10%程度と低い。相続しても子供世代は他所に住んでいるから、そうなるのだろうか。

●上尾市の足元の景色

「空き家=住民の高齢化」だから、古い住民が多い中心部や早くに宅地開発された郊外地域に空き屋が目立つのは当たり前だ。三井住宅や向山辺りの分譲地にも空き家がチラホラみられる。わが近隣で目にするのは、死亡→相続→更地売却→ミニ分譲というケースが多いが、なぜか売れ行きが悪い。

Ss図は上尾市の区画整理事業の全体。スプロール化(虫食い状態)を防ぐためだがほとんど完了しており、後は大谷北部第二・第四が施工中だ。行政が懸念するのは推奨場所以外でパラパラ家が建ち外側に居住面積が広がりながら街のスポンジ化(本書の表現)が進むことなのだろう。

本書では触れていないが、空き家の増加は自営業の廃業が大きいと思う。洋服屋も八百屋も魚屋も肉屋もクリーニング屋も文房具屋も駄菓子屋も食堂も床屋も『個人商店が成り立たない経済構造』になったからだ。

例外的にFC加盟でやれる業種もあるが、一部だ。昔より増えた店は税金(医療や社会保障)が支払い手となる分野だ。なお上尾駅周辺で美容室が増えたのは女性雇用数の増加と思う一方、塾は少子化で既に減っている。

対策の妙案は乏しい。今ある居住地の再生や更新を重視せよと言う。例えば、空き家をリノベーションして公民館に替わるコミュのティの居場所にする。その収益は固定資産税を払える程度にすれば低賃料で利用できる。焼け石に水みたいだ・・・それほどこの問題は既に大きくなりすぎていて大変なんだと思う。

規制緩和が良い事ばかりではないという大問題を知った。街づくりにはむしろ規制が重要のようだ。


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