カテゴリー「本・読書感想等」の55件の記事

2021年9月 4日 (土)

ぼくはイエローで描かれた多様性社会への躊躇

日本がそこへ進むのは まだゆっくり。

ブレイディみかこ著 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー (新潮社)

 どうしてリスエストしたのか忘れた頃に貸出順番が回ってきた。図書館に10冊位ほどある人気本で、オール貸出し中だ。目に見えない予約行列は当節のワクチンみたいだ。下図クリックでアマゾンへ

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博多出身の日本人女性(著者)はイギリスのブライトンという街に20年も棲む。イングランド出身の連れ合い(夫とは書かない)との間に生まれた息子を中心に、人種や文化の多様性や経済格差の葛藤の中での学校生活や暮らしを描いている。

 とても読みやすく、お勧めしたい本である。

 いきなり、地元の「底辺託児所」で保育士をしていたとか、名門カトリックの小学校を卒業した息子が、地元の「元底辺中学校」へ行く、等々、遠慮のない表現が良い意味のインパクトを与えている。この本は、その入学前後の一年半ほどの日記、あるいはエッセイをまとめたものらしい。

 憧れを抱きそうな英国暮らしではなく、全編、「母ちゃん、父ちゃん」と書く気取らない表現が読者に親近感を持たせる。実際は、息子と母ちゃんの会話が多く、父ちゃんは時々加わる程度だ。(思春期の)男の子が、これほど母親と話し合える家庭は(イギリスでも)珍しいのではと思うが、賢く感受性豊かな優しい息子である。

 イギリスでも子供の進学は一大事で、学校の情報公開が盛んなために学校ランキングがあるという。学校と家との距離が近い子が優先されるためランキングの高い学校の近くへ引っ越す親が多く、住宅価格が上昇し富者と貧者の棲み分けが起きているという。日本にもあるが、もっと浸透しているわけだ。

 中学校を選ぶ時、かって白人労働者の子が通う地元の底辺中学が、新校長の教育改革でランキングが中位になっていたので母子で見学に行き、息子の意思で選んだ。母ちゃんの目には、進学校は校舎が立派でも教室風景は、前席に真剣な生徒たちがいる一方、教室の後ろ側は別世界となり学校が教育放棄をしているように見えた。

 反面、元底辺中学校では、授業についていけない子は廊下に席を設けて他教師が指導し、「取り残される子供を作らないのがモットー」だと言う。

 著者はイギリスを階級社会とハッキリ書くように、子供を取り巻く家庭環境の差は日本とは比べようがない。

 かつてこの中学校には、制服が買えないとか、昼食を買えず腹をすかす子供などがいて、教師らは自腹で支援するなどソーシャルワーカーみたいだという。保守党政権による緊縮財政によるもので、今でも貧困地域の子が通うためそれに近い状態がある。

 母ちゃんは息子の入学を機に制服リサイクルのボランティアを始めた。古い制服を預かり修繕し100円とかで校内販売する活動だ。一着しか持てない家庭の子は、洗って乾かない服をそのまま着てくることがあるのだと先生が嘆く。穴の開いた制服で通う友達に、傷つけないように息子が自然に渡す気づかいが印象的だった。

 想い出したは、日本では中学や高校を卒業すると制服が不要となり何着も資源ゴミに出されること。日本はおニューを買うのが当たり前で、リサイクル品では子も親も恥ずかしいという世間体がある。それを飯のタネにするのが学校指定という仕組みかもしれない。地域の産学連携みたいなもので、どう見てもさえない店構えなのに、なぜか潰れない教育関連品の小売店ってあるよね…。価格競争の働かない談合、既得権である。

  息子は、日本に里帰りすれば「ガイジン」と呼ばれ、こっちでは「チンク」と呼ばれる。だからどこにも属している気持ちになれないと嘆く。時には友達からの差別的な言葉に悩むが、母親との会話や友達関係を通して成長していく。生活の全てに人種と経済格差が絡み合うのだが、非白人でも高い教育で高収入の職業に就く人もいれば、白人の低教育による貧困層もいるので単純ではないが、それが固定化しているようだ。

  異国籍の親の元に生まれた人への呼称が難しいと思った。息子は、「ハーフって半分という意味で酷い、かといってダブルで2倍かよ」って怒っていたように、よい表現がない。ミックスも最適なのかは分からないが、昔は平気で混血児とか言っていたのであまり良い連想がしないのだが・・・。

 多様性と言えば、先の東京オリンピックで日本チームにはミックスだけではなく白人や黒人の日本選手がたくさんいた。特にボール競技は外国人コーチだけではなく、彼・彼女ら抜きでは世界レベルにならない。スポーツ界は人種多様性の最先端であることがとても良く分かった。八村塁を旗手に、大澤なおみを最終聖火ランナーに選んだことには時代の大きな意味があるのだなと、読後感としても理解できた。

 で、一流のミックス選手になれば差別は少ないだろうと思っていたが、SNSでは匿名の差別的言葉をしょっちゅう投げつけられると八村塁選手が嘆いていた。普通のミックスなら猶更だろう。この本では差別的表現にならないように気を使って接していても、受け止め方が異なることで、逆に差別的言葉を投げ返されるという例もあった。

 所で、イギリスでも自国民がやりたがらない仕事を移民にさせるように、日本も実習制度を使い、日本人がやりたがらない仕事の穴埋めに外国人労働者を使っている(介護職も)。彼らは、通貨の為替レート差があるから低賃金でも我慢しているが、これから円安が進めば来日動機は消えてしまうだろう。

 LBGTQの話が出てきた。

 学校の授業でやるのだが、Q(性自認・性思考)について学校帰りに息子達が話していた様子があった。(うろ覚えだが)ボクは男(異性愛)だなとか言う中で、一人がまだ分からないというような事を言っていた。この辺りは、子供達は成長しているんだね、風にあっさりと書いていた。

 想い出したのが、昔読んだアメリカ社会の過剰リベラルの話し。

 リトル・マーメイドも叩く過剰リベラルの罪(東洋経済)

 リベラルの強い州における小学生への性教育について、リベラル派の親たちも辟易しているという内容だ。記事には書いてないが、学校から帰ってきて、「ママー。私は男なの、女なの、どっちにしようかな」みたいなことを尋ねられ、困惑する姿を想像してしまう。確かにそりぁ困るだろう。

 先の東京オリンピックでは元男性の重量挙げ選手がトランスジェンダーの女性選手として参加した。もはや理解不可能な領域に入っているとしか思えない・・・。

 

 本書はお勧めです。

 

 

 

 

 

2021年2月12日 (金)

メイドの手帖…掃除婦は書いた

最低賃金でトイレを掃除し「書くことで」自らを救ったシングルマザーの物語。

2019年にオバマ元大統領が夏休みに読むべき推奨本に挙げたことでベストセラーになった本。NETFLIX化。

Photo_20210211235101現代アメリカの底辺で白人女性が赤ん坊を抱えてホームレスになりながらも、メイドとして掃除を掛け持ちしながら逞しく生き、清掃作業の四つん這いの世界から這い上がり、学位取得へ向かった著者の実話。

生活保護制度の受給者ならではの指摘、DVのトラウマ、見放された親との愛憎、周囲からの偏見、保護を受ける側にいる葛藤、預金残高と請求書のカツカツの話し、子供への自責の念などが切々と綴られている。

著者のステファニーは、若気の至りで付き合ったパートナーからDVを受けながらも彼の子を出産。離婚した両親からの援助も得られず赤ん坊を抱えてホームレスシェルターへ避難した。福祉の助けで何とか救われるが、一人親であることの惨めさから逃れるために新しいパートナーの農家へ転げ込む。

しかし、農家の嫁のように働いても自由になるお金は得られず負い目を抱く日々から抜けるためメイド(掃除婦)の派遣会社に身を置く。最低賃金(9ドル)で働き、少しでも稼ぎたいために自らクライアントを開拓するなどハードワークの日々に埋もれていく。

本書の多くは、クライアントの家の清掃を通して、彼らが豊かそうでも内面は幸せではないと観察するなど、汚れぶりや家主らの人間模様を巧みに描いている。
個々の家には「ポルノハウス」「観葉植物の家」「シェフの家」「悲しい家」「ピエロの家」などあだ名をつけて呼んでるのは、メイドという立場が人間的な扱いを受けないためなのだろうか(自分を見えない幽霊と言う)。彼女を人として扱ってくれたクライアントもいたがそれは稀だ。

彼女の暮らしにはいろいろな困難が訪れるが、7種の複雑な福祉プログラムを申請するように賢く、粘り強く、落ち込んでも向上心があり、時には人の優しさを助けに乗り切っていく。しかし、小説のように大きな山場があるわけでは無い。黒カビが絶えない家での暮らしが愛娘ミアの病気を深刻にすることやマイカーが追突されて大破した事故(仕事を支える車を失う)の辺りが一番辛い局面に想えた。

 著者のステファニー・ランドさんは子供のころからの夢であった作家として、この本でデビューした。今は、助ける側の活動もしているという。生活保護への受け止め方は日本もアメリカも関係なく普遍的だと感じた。

---- stephanie land blog

Netflix

410頁という長い本は苦手でしたが何とか読めた(毎日50頁なんてムリ)。書かれている時期は2008年頃からの五年間位らしいです。

ところで、日本では自宅の掃除は自分でするのが当たり前です。他人に掃除を依頼することは稀。せいぜい年末のダスキン等でしょう。ですから、アメリカの習慣が理解しにくかったのですが、あとがきの渡辺由佳里氏の解説が秀逸でした。アメリカ暮らしの時に自分でトイレ掃除していたら「貧乏なの?」と言われたそうです。

アメリカではメイドを雇うことは一種のステータス、経済的に成功した女性は自分でトイレ掃除をするものではないという風潮がある。トイレ掃除は男社会が女に押し付けた汚れ仕事であり、奴隷制度や貴族社会の名残。だから、職業選択の自由度がない有色人種や移民の女性が掃除を担うことになる。ところが、白人女性達には恵まれない人を雇ってあげているという選民意識があるのだと言います。

 

2020年11月 4日 (水)

トランプはソシオパスである

51gsjdfjpl_sx343_bo1204203200_世界で最も危険な男(メアリー・トランプ著)

 トランプ大統領の兄の娘、臨床心理学の博士号を持つメアリー・トランプ女史によるトランプ一族の精神構造を告発した本だ。ドナルド・トランプを反社会性人格障害であると断言し、その生い立ちから今をクールに綴る。

(本書p30-31) 彼は反社会性人格障害の判断基準にも当てはまっている。この障害が重度の場合、通常は社会病質者(ソシオパス)として判断されるが、別のケースでは犯罪常習者や、傲岸で他者の権利を無視する人の場合もある。依存質感はあるのか? おらそくあるだろう。ドナルドは依存性人格障害の診断基準のいくつかにも該当しそうだ。・・・・

 日本だと名誉棄損になりそうだ。トランプ氏は出版停止を申し入れたが裁判所は出版許可をだした。

 大学の替え玉受験とか父親の汚れ仕事を手伝っていたことなど、身内でしか知り得ない事も赤裸々にあるが、惜しいかな家系図が無いので人間関係の所が??となりやすい。(主要人物名には注釈付きだが)

父フレッド・・・長女マリアン、長男フレディ(著者の父)、エリザベス、次男ドナルド(大統領)、三男ロバート、もう一人?。多分こんな感じだ。さらに親戚や友人、政治家名もでてくる。

全ては、父親フッド(住宅建築王)から始まる。共感力が無く、平気で嘘をつくとか他人の人権を無視するなどのソシオパスだと書く。完全な父権主義らしく、「女は生まれつき男より劣っていると決めつける性差別主義者」ともある。その影響から子供を守るべき母親は病弱であったために守れなかったという難しい家庭だ。

身内の悪口を綴った本ではない。専門家らしく冷静で心理分析に長けた内容である。最後ではコロナ対策にも批判をしている。なお、著者の父はトランプ一族の長男だったが跡取りになれなかったことや早死にし、ドナルド氏とは相続争いの関係もあった。

政治的なアンチ本と見なされると価値が落ちてしまう。「トランプ本」というジャンルがあれば一番傑出した本かもしれない。今後、トランプ大統領の伝記本は出版されるのか? 引退後にゴーストライターに書かせればできるし、元大統領として一回数千万円の講演生活もできるだろう。

分厚い本なので、日めくりカレンダーみたいに眺めただけだった。

今更読んでも仕方ないことを願っている・・・。

●日本人でトランプを推す人が多い理由

安倍さん支持者はトランプ支持である。一番の理由は人柄には目をつぶり、中国にケンカ腰をとる姿に惚れている。でも国内求心力や選挙目当てで中国を敵視しているから、通商交渉なんて結局はカネで買える次元だ。理念や長期視点はなく目先の損得だけ、というのはこの本にもある。

防衛装備を拡大したい人達はトランプが好きだ。危機を煽り武器を買えと言うから。

人種差別主義者だから彼の脳内での序列は黒人も黄色日本人も似たようなものなのに、大阪なおみさんの抗議姿を批判する日本人の脳内は、白人、日本人の順で心地よいのだろう。相変わらず日本は属国向きである。

ところが中国はトランプとバイデンのどっちが良いと思っているかは非常に難しい。

トランプ大統領は西側同盟を弱体化し、国内も混乱させることで世界におけるアメリカの地位を衰退させるから、中国には都合が良いという日本の中国問題アナリストもかなりいる。

コロナ禍の日本はサービス業が干上がっており、製造業が相対的にマシだ。その製造業で業績が良い会社は中国経済依存で飯を食っている。

 

 

2020年10月27日 (火)

日本語を取り戻す(読書)と菅さんの始まり 

人気コラムニストの小田嶋隆さんの最新作である。

新刊本をリクエストする場合、出版後数週間もたっていると他市取り寄せを優先するだろう。だから、直後、または発売前に図書館にリクエストしておくと新規購入対象の可能性が高まる、かもしれない・・・。

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というわけで図書館の一番手となったが、本書は、私生活や世相を綴ったコラムではない。

日本語を、取り戻す。亜紀書房 小田嶋 隆

小田嶋氏はツイッターでも有名な方で、政治家やジャーナリストとは異なる視点から鋭くユーモラスなコラムやツイートが人気ある。人気があるから、ネトウヨ界隈からのいちゃもんも多い。例えば、日経ビジネスでのコラム(最近は有料記事扱いに変更された)には、読後評価は「良い」が多数となっても、記事のコメント欄には批判が多く書き込まれる、という現象だ。本人は気にせず文筆家らしくそれをネタにする。

「いちコラムニストが、日本語の守護者として安倍晋三と言う人と対峙してきたスコアブックの如き書物になっている」とあとがきに書くように、今まで安倍政権に対して書いた時事コラムを集めたものだ。タイトルは、「日本を取り戻す」という安倍さんのスローガンを捻ったものだと思う。日本とした意味をこう書いていた。

「私はある仮説を立てている。それは、この間、政権を担ってきた安倍晋三氏の口から漏れ出す日本語が、あまりにも空疎だったことが、それらの日本語話者の精神の復興を妨げたという、いささか突飛な考えだ。」

ようするに専門的な政策批判ではなく、総理大臣ともあろう人や高級官僚が、中身の無い言葉を延々と国会等で垂れ流して平気で済ませられる今日を批評した本である。例えば、共謀罪や議事録廃棄、佐川証人喚問、黒川検事長、コロナ対策などいろいろあるが、幾つかは日経ビジネスで読んだものだった。時事コラムは鮮度が大切なので、後でまとめて出版してもどうなのかなという気もする。

校了は夏なので、次期首相がまだ不明の頃だった。今後、著者のぺン先は菅さんに向かうのだろう。他の著書では上を向いてアルコールのアルコール依存症から生還の話がなかなか面白かった。

●ようやく国会が始まった。

菅さんは官房長官の時から答弁がつまらないのに「答弁が安定している」とヘンに評された(加藤・新官房長官もそう言われる)。実際は、答えたくない時は「承知してない」、「批判に当たらない」、「全く問題ない」を連発して打ち切る人だった。

説明を避けたり人事権を振りかざす点で前任者を継承するが、弁論や能力的に優れているわけでは無く、彼らの態度の源は圧倒的多数の議席数にある。それでいながら、本当の理由を言うと面倒になり、その面倒に立ち向かうことから逃げるため質疑と言う公式時間を空疎な答弁で消耗させ、結論だけに到達すればよいと考えている。それが今の議会制形式主義である。

アメリカでは大統領が本音だけではなく嘘や暴言のし放題だ。日本は本音を建前で隠して結論だけを語る。二階幹事長などはその最たる人だから、あの人の言葉は平易すぎてまるで印象に残らない。菅さんは安倍さんみたいにムキになったり、イデオロギー傾斜ではないが、もっと冷淡で乱暴に振る舞いそうだ。

菅首相は、話すことが携帯料金やハンコ廃止などの小粒な案件が多い。大衆迎合的なことを語るのはビジョンの無さを隠すためだろう、と思ったら30年後に「温暖化ガスをゼロ」と気の遠くなる話しを大言壮語した。でも本当は、党内基盤が弱いから(大衆迎合策で)支持率を高めることが党内支配に必要と考えているのだろう。

安倍さんを見ていた経験からだ。

 

2019年6月16日 (日)

絶対に市民に見せてはいけない職員手帳

トントントン、ヒノノ、日野市だよ(^^♪

510h5axeiql_sx347_bo1204203200_ 是非、読んだらと押し付けられた本。絶対に人に見せてはいけない日野市の職員手帳・アマゾンはこちら

日野市役所の職員手帳が余りにもユニークな内容のため出版になったらしい。100ページ弱、中身はポップなイラストと軽快な文章でスラスラと一時間もかからない。職員向けの内輪話と日野市愛の再発見みたいな感じで書いてある。昔の「猿にもわかる」というタイトルを思い出したが、初めは文を「市民に見せては…」と誤読した。

昔、日野に職場があり、多摩川を渡る中央線の車窓からみる冬の富士山が眠い目を開かせてくれた頃を思い出した。しかし市役所のある日野駅に降りた記憶はない。通り過ぎるだけ、帰りの歓楽街は主に国立の一角と立川だった。

工業出荷額が都内一位・二位と書いてあって、そうだあそこは大企業の工場がたくさんあり、それが浮沈の激しい業界ではないから今でも存続しているのだ、と合点した。

読んでいてへーな点。

職員1400人のうち、出身大学は中央大学がダントツ75人。5番目に明星大学があり、二つとも近間の大学だよ。日野市に住む職員は45%もいる。データブックの面は無いけど、人口18.5万人でわずかながらも転入超過・出生超過、老年人口は24%だった。凄いね。財政データは無い。

一つ、がっかりな点。

「Q なんでそんなに縦割りなの?」の答えが「・・・一人一人が専門性をぐっと深めていかなきゃいけないので。」と自信満々なこと。それには在籍年数の裏付けが必要だし、日常経験からは納得できね(笑)。後、脚注文字が小さすぎて読めね(泣)、これは出版社が悪いね。

巻末に本書のきっかけが書いてある。

住みたいまちランキングで日野市が100位圏外(106位)だったのがショックだったのが契機となり世界に一つの職員手帳を作り出したという。多分、東洋経済やダイヤモンド社の仕業だが、あれは本を売るための企画であり、あんなものを真に受ける方が、それこそ行政の専門性が疑われるわ(笑)。

でも、こんな企画できるのは庁内の風通しが良い証拠だと思う。日野市役所のリクルートブックとすればよくできている。

本を勧めた人 曰く「上尾市役所でも作ったらどうか」。

二番煎じはダメ。

 

作るなら、本稿のタイトルかな。

 

 

2019年5月 2日 (木)

飯綱町議会の改革、寺島渉議長。嵐がきて変れる街と変われない街

正義だって、たかる人がいる

Photo_13 飯綱町は戸隠村の手前にある山の中の町だ、というか長野県そのものが山の中だ(笑)。
長野市から車で三十分ほど。昔は善行寺裏から登るつづら折りの道が急こう配で、ギヤをLに入れないと登れない七曲と呼ぶ難所もある。
今はループ式の迂回道ができて楽しく走れるから、七曲を選ぶ人はへそ曲がりだ。

 冬の飯綱スキー場は初心者から家族向き。夏場は池のボートやキャンプ場もある。さらに数十分もバードラインを走れば戸隠蕎麦の店、さらには戸隠神社の奥社へと観光にもよい。

つまり、こんな山間風景しか思い出せない町が議会改革の先進事例だと聞いて 、ウソだろ(>_<)!。

 上尾の市民団体AANが二月に寺島渉・前議長を招いて講演会を開いた。その後、実施した写真ブログもあったが、肝心の中身の報告は無いし、出席した市民がネットで感想を披露するでもないので、やっぱり必要無かったなと思っていたら・・・

予約本が忘れた頃にやって来た。

地方議会を再生する/相川俊英/集英社新書

人口11千人、四千世帯、2014年の一般会計65億円、財政力指数0.29はぜい弱だ。議員は16人、会派は無い。報酬は月16万円と最低レベル(年収は議員262~議長441万円)、政務活動費も無い。年間活動日数は議員110日・議長284日と信じられない多さ。日本一コストパフォーマンスの高い飯綱町議会なのだ。

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懐かさのためか私的にはスラスラ読めたが、一般には田舎の政治劇と感じるかもしれない。昔は三水村(さみず)と牟礼村(むれ)だったが、平成の大合併で飯綱町になった。その過程における寺島渉・前議長という骨太な政治家の奮闘記をライターが書いた本だ。特に、前半にある腐敗と政争劇や合併問題の混乱ぶりの話は、アルアル感で面白く、「違法行為をする人よりも、それを指摘する人の方が悪い」という歪んだ考えの村社会への挑戦物語である。

寺島氏は立命館大の民生同盟の活動家で、若いうちに郷里、牟礼村の共産党議員になる。その彼の所に一通の談合情報が寄せられた。不正追及なら共産党という訳で(業界関係者から)届いたらしく、「ゴミ焼却場の建設が初めは中小業者が行う19億円規模だったが、急に大手のみで27億円に増え、差額を工作資金化する」というもの。

  • 正義の裏側

 寺島氏は予算が通る前に公開質問状を出すことにした。しかし党上部から質問状への連名を指示され、逆らえば除名とも。近づく選挙目当てという狙いを感じとった寺島氏は党の要請を拒否し一人で出した。そして仲間達も離れ、孤立化していく。不正追及の舞台裏で、手柄の横取りで選挙利用という泥臭いエピソードだが相当苦労したようだ。

 その後、共産党出身議長になるも、やがて離党し、村長選にでたが完敗した。その時の候補者らの主張がイイ。

・類似の公共施設を近隣自治体が競うように持つのは愚の骨頂。
・車で30分圏内には同じような施設は作らない。
・村民には近隣自治体の施設を使うように。・・・笑える

 「三水のような貧乏村とは合併したくない」という格上意識があったと嘆くが、相手を嫌うのはよくある話だ。合併特例法の期限ぎりぎりに合併を果たし、新町長選は82%の投票率、町議選は双方から半分ずつとなる。また、第三セクター飯縄スキー場が累損15億円を抱え、損失補償が明るみとなり、なんと八十二銀行から町が訴えられる事態まで発展したとあった。こうしていろいろな問題が起き、その再生過程で寺島氏のような強いリーダーが議会改革を推し進めたようだ。

 読んでいて、アリコベールA館売却による第三セクの損失(21億円?)、さいたま市との合併問題(市長、労組による合併反対運動)、ゴミ焼却場の不正入札(ツートップ逮捕)、上平新図書館(総事業費38億円)とその裏で進められたパークゴルフ場建設(?億円)等々、上尾にも何度か嵐がきたがそれを機に変る力は起きなかった。

・肝心の議会改革はややピンとこなかったが… 

・一問一答方式の導入 (上尾は実施済み)

・町長に反問権・・・(簡単なのですぐ導入すべき)

・同一議題の質問三回までを無制限に。(議論を避ける体質があると無意味)

・全員協議会で議事案件の争点整理をしてから、一般質問をすることで質の向上になる。

・議会サポーター制度。町民参加を広げる、現在16名 (よい仕組みだ)

等々だが、「議会力は上がったが、議員力はまだ」と言う。ところで飯綱議会には会派が無いが、その廃止方法が分からなかった。

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 ホンネが「改革したくない」という議員が多数派である限り、議会改革は中途半端になる。だから、できないと知りつつ「只今検討中」という「やってます感」で住民に格好を見せる。議会基本条例も他の自治体のをコピーして、導入したつもりになっている所が多いと書いてあった。実は「改革」というほど大げさなものではなく、ごく当たり前なことを望んでいる。それは「きちんと議論しろ」ということ。それができないのは能力が無いのか、人前で議論すると困るからだろう。

 今の上尾では、政治倫理条例とか職員倫理条例が注目されている。条例を作ると議員や職員の質が高まるなら、地方の問題はとっくに解決しているはずだ。企業でも新しい経営手法がトレンドになると、「○○委員会」を作りたがる。作ることで安心しきるのだ。

 特に上のリンリと言う用語は「議員のモラル」と勘違いされるから別表現が良い。真のネライである『議員の利害関係者に公共事業を受注させない』を前面に出すべきなのだ。そして「多数派により否決された」と何度も何度も宣伝すれば良い。

例えば、市が行う契約に関連して、特定の業者から金品等を授受することや特定の業者を推薦、紹介等有利な取り計らいをすること、自己または親族が実質的に経営する企業に受注させること等を明示し、これを禁止する。 上尾市 第三者委員会報告p12より

 

参考 JIJI.COM トップインタビュー寺島渉

 

 

 

 

 

2018年5月17日 (木)

畠山市長のジレンマ-2・・・推奨本、つながる図書館

つながる図書館: コミュニティの核をめざす試み  猪谷千香著/ちくま新書

前記事のつづき

Photo 閉館後の図書館は、昼間の図書館とはちょっと違う。子供たちがお気に入りのぬいぐるみを図書館にお泊まりさせ、翌日朝迎えに行くと、夜の図書館で遊ぶぬいぐるみたちの姿が写真に。一晩さびしかったけれど、ぬいぐるみが選んでくれた本を借り、ぬいぐるみと一緒におうちへ帰る子供たち。アメリカの公共図書館で始まったイベント「ぬいぐるみのお泊まり会」は、日本でも2010年から広まって各地で人気となっている。

えぇっと驚いたが、他市の類似施設を見るまで上尾市の現本館の子供室にある円形部屋の造りの良さは分からなかった。当時の担当者たちが良く考えたと感心する。ただ利用は少子化で減っており閑散としている…

本書は最近の図書館の成功事例、有名事例をジャーナリストが取材して書いているから読みやすい。

・年末年始も開いている、葛飾区立図書館

・住みたいと言われる図書館、武蔵野プレイス

・コンシェルジュが本を案内してくれる、千代田図書館

・公募館長のもとに町民が作った、まちとしょテラソ(小布施町)

・市民が図書館の誕生日を祝う、伊万里市民図書館

・毀誉褒貶に晒される、武雄市図書館

・公立ではない新しい公共、船橋まるごと図書館

ただし武雄市のツタヤ図書館については開館直後とあってCCCの受け売り的な内容が鼻につく。今読めば問題露呈により色あせてしまっている。当初の派手な出現に、浮かれた評価をした首長や議員が多かったように思う。今月中に最新統計が発表されるので改めて注目だ。

どういう図書館が望まれるかよりも、実現プロセスへの住民参加の質と量に関心があって読んだ。それを扱った事例は複数あり、人口数や財政力は関係ないのだということが分かる。それこそ民度なのだろう。その点では近隣の白岡市立図書館のオープンが絶好の比較対象となる。

読んで後悔する本では無いから、畠山稔市長に推薦する本である。アマゾンでは中身検索付きで立ち読みできる

2018年4月10日 (火)

住宅過剰社会の末路-3 宅地拡大のデメリット

宅地開発の風景を見ると人口増加でイイなと思うこともあるが、そんな単純な話ではない。

老いる家、崩れる街…自分の街を見回そう
 住宅過剰社会の末路-2タワマンとサブリースそして近所

本書で驚いたのは、新築住宅がインフラ(道路、小学校、公園)の整わない区域でも野放図に続けられ、居住地の拡大が止まらないという指摘だ。その結果、公共施設や道路、防災対策やゴミ収集エリアの拡大を迫られて行政負担が増すという。

土砂や津波、高潮、災害危険区域という指定があっても、或いは活断層があってもマイホームを建てることは可能というほど新築規制は難しいらしい。地方都市では農地エリアにまで住宅がバラ建ちし、人口密度の希薄化が進むという。これらは各自治体の都市計画における規制緩和合戦の結果だという。国も不況対策として住宅建設を煽ることを繰り返してきた。

既存の家を壊してそこに新築するという再建築率は10%程度と低い。相続しても子供世代は他所に住んでいるから、そうなるのだろうか。

●上尾市の足元の景色

「空き家=住民の高齢化」だから、古い住民が多い中心部や早くに宅地開発された郊外地域に空き屋が目立つのは当たり前だ。三井住宅や向山辺りの分譲地にも空き家がチラホラみられる。わが近隣で目にするのは、死亡→相続→更地売却→ミニ分譲というケースが多いが、なぜか売れ行きが悪い。

Ss図は上尾市の区画整理事業の全体。スプロール化(虫食い状態)を防ぐためだがほとんど完了しており、後は大谷北部第二・第四が施工中だ。行政が懸念するのは推奨場所以外でパラパラ家が建ち外側に居住面積が広がりながら街のスポンジ化(本書の表現)が進むことなのだろう。

本書では触れていないが、空き家の増加は自営業の廃業が大きいと思う。洋服屋も八百屋も魚屋も肉屋もクリーニング屋も文房具屋も駄菓子屋も食堂も床屋も『個人商店が成り立たない経済構造』になったからだ。

例外的にFC加盟でやれる業種もあるが、一部だ。昔より増えた店は税金(医療や社会保障)が支払い手となる分野だ。なお上尾駅周辺で美容室が増えたのは女性雇用数の増加と思う一方、塾は少子化で既に減っている。

対策の妙案は乏しい。今ある居住地の再生や更新を重視せよと言う。例えば、空き家をリノベーションして公民館に替わるコミュのティの居場所にする。その収益は固定資産税を払える程度にすれば低賃料で利用できる。焼け石に水みたいだ・・・それほどこの問題は既に大きくなりすぎていて大変なんだと思う。

規制緩和が良い事ばかりではないという大問題を知った。街づくりにはむしろ規制が重要のようだ。


2018年4月 4日 (水)

住宅過剰社会の末路-2 タワマンとサブリースそして近所

老いる家、崩れる街つづき

たまたま日経が土日に最近のマンション事情を報じていた。市況が低迷しているらしいが本書の内容を裏付けるようにタイムリーだった。

東京都心だけは人口増加を独占しているがそれは喜べないよ、というのが3/31の記事。タワマン乱立、児童あふれ小学校悲鳴・東京湾岸地区

Photo 過度な集中は弊害をもたらすという当たり前の話だ。ピーク需要に合わせて小学校建てても数十年後には高齢者の街になることはニュータウンで周知のことだが、全体計画のないタワマン開発は初めからコントロールが効かないらしい。
 記事では、最近10年間の学校建築費が以前の22倍だとか、危険なので学年別に休み時間の遊び場を指定する学校もある。最寄りの地下鉄ホームが過密で危険だとか。人気の武蔵小杉では朝の改札で通勤客が駅からあふれて行列するとも聞く。

自治体は住みよい街づくりを通して人口の奪い合いをするが、住みにくくても人が集まると言うことは、この国の有り方に問題があると思う。規制緩和がもたらした都心乱開発である。

 4/1 新築マンション「将来価値」トップ30  タワマンは2016年に⾸都圏で8000⼾弱が2020年に15000⼾へ増えるとある。

 増える理由は、同じ面積なら住戸を積み増しできるから業者が儲かるためと言う。都心の話だが、プロの視点で遠慮なく書いてあった。用地は駅徒歩『8分が限界点』。1分離れるごとの㎡単価の下落が最近激しいとか、『将来価値』への最大のポイントは駅距離にあるなどだ。

ところが本書はタワマンに否定的な見方をする。「眺望の陣取り合戦から値崩れへ」と書くが、修繕や維持コストが高くつくことや災害時の弱さについての指摘が目についた。エレベータが停電になると下へ降りられない・上の住居に戻れない高齢の住民を「高層難民」と言う。また上・中・低層という住む階の違いが所得階層の差になり、維持管理の合意形成が難しいと指摘する。

そう思う。直下型地震を経ないと本当の評価はできないだろうし、そもそも日本には適さない建物だと思う。つい先日スーパー台風の高潮被害で東京湾岸部の浸水予想が出ていた。地下機械室が完全防水とは思えない…

上尾市にもタワーマンションができた。長く販売したわりに完売できなかったようだ(賃貸が数十件ある)。不動産サイトに行くと十数件もの賃貸や売却物件がゾロゾロ出ている時もある。流動性が高いことは良いのか悪いのか知らないが、賃貸20万円が多かったのに最近15万円を見かけた。最初で最後のタワマンかもしれない。体裁は西口のライオンズタワーの方が立派に見えるんだが…。

本では住宅過剰の一つにサブリースのアパート建設も指摘している。近所でも大きい家を建てるなと思っていたら、アパートだったという事が何度かある。昔の家は100坪くらいの敷地があるからアパートに向くのだろう。その結果、駅から遠くて古いアパートは競争に負けて空き室になる。安いから外国人が入居することもあるようだ。

軽量鉄骨系の二階建てアパートが多いが、近くに三階建て鉄筋コンクリートがあって未入居が目立つ。サブリースの物件では業者は子会社等に建築させてそこで利益を取るらしい。実需なき住宅建設がうまくいくわけはない。

写真はイメージです。本文とは関係ありませんが、アパートになった・・

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つづく

2018年4月 2日 (月)

老いる家、崩れる街… 自分の街を見回そう

本の探索は時代と共に変化する

自らの目で資料を見つけページをめくり読みながら探すという図書館ならではの醍醐味(上平移転のための基本構想案p2、2014/11)、という時代遅れな探し方をしている市民はとても少ない。というかITオンチを言い繕ったに過ぎない

最近のスタイルはネットサーフィン中に「読んでみるか」と目に留まった(書名の)文字列をマウスでドラッグ選択し、そのままグーグル検索をする。署名による検索は検索インデックスの一位にアマゾンが表示される。入るとブラウザーに組み込んだプラグイン『その本、図書館にあります』が働き、登録した図書館を検索して蔵書の有無が分かるから「予約する」をクリックして上尾市図書館HPへ入り予約をする。

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もちろんアマゾンサイトで本の概要やベスト・レビューを眺め、読む(時間をかける)に値するかをスクリーニングできるから、空振り確率は減る。

その後、本が用意できたとメールで知るわけだが、上のプロセスでは一度も書名を書く(入力)をしてないから、予約期間が長いと忘れてしまい『その本、私が予約したんですか』ってなる

そのトホホな本の感想…。

老いる家、崩れる街 野澤千絵著/講談社

 本書は空き家問題を広く深く扱っている。820万戸(2013)1400万戸(2023)、空き家率21%と予想するが、自分の住む街で見かける風景とタブらせながら読むとリアルになる・・・

タワーマンション
 賃貸アパート経営(サブリース)
 焼き畑状態に増える新築
 中心部から増える空き家

つづく

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