社人研の人口推計と人口オーナスへの覚悟
日本人よ、生産年齢人口の減少(人口オーナス)を、外国人に依存する覚悟があるのか?
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4月に発表された社人研の新推計は、日本の凋落みたいな話しなので、一日でスルーされた。その将来推計人口(令和5年推計)は、20年度の国勢調査の確定値を出発点として2070年まで推計している。プレスリリースはここ
そもそも、WW2後の人口急増が平和の配当と言うように特異現象なのだから、今、多死社会に入ることは分かっていた。一方、先進国の少子化は今の共通現象であるが、70年代は「人口爆発」が問題視されていたので、真逆の感がある。
しかし、増加国は部分的なものとなり、世界は少子高齢化が進み、デフレからインフレに切り替わるという予測もある。子供や老人が増えて労働人口が減ると、生産よりも消費が増えて物価上昇になると言うロジックだ。世界の人口構成の大逆転が、近い将来に金利上昇を引き起こすという。※
まぁ、それはともかく、推計では、出生と死亡のそれぞれを低位・中位・高位の3つから9のシナリオを作っている。「未来予測では人口統計ほど信頼できるものはない』と言われるが、本邦2070年の姿を実現性の高い中位推計からまとめた。
総人口は3割減って8700万人、出生は50万人(外国人含む)であり、去年の80万人割れで驚くレベルではない。平均年齢は今の48歳が54歳へと老け、高齢化率は約4割(38.7%)となる。出生率は1.36。平均寿命は、男 85.89年、女 91.94年と想定される。
ところが前回推計(H29)よりも総人口が増えているのは、外国人を940万人(9人に1人)と推計したためだ。そこで日本人のみをみると、7760万人、出生45万人、高齢化率41%となる。 実は 2120 年までの参考推計も付属している。人口5千万人を割って大正時代より前になり、その時期は令和102年とあった。間違いなく、年標記は外れている。 |
ネガティブ数字のオンパレードだが、実は今年の1-3月の出生数の速報がでている。前年比▲5.1%は、新推計の23年値をも下回った。
理由は、コロナ禍の婚姻数激減による。一般に婚姻から二年半のタイムラグがあるため、さらなる少子化が続くだろう。それでも、票目当てに子育世代にバラ撒き、負債を将来世代に残すのだから救いようが無い。
不確実性の高い外国人を多くした甘いシナリオ?
外国人940万人とは社会増減のことだ。国内の自治体でも、引越して来る人と引越す人の数を長期予想するなんて難しいことだ。しかも国際移動となると更に不確実性が高いが、前提は、入国超過数を前推計の7万人から年間16万人へ引き上げて長期に続くとした。
だから、下図のように、生産年齢人口は前回よりもやや上を行く。しかし、国際政治はもとより、円安が進めば外国人材は他へ流れ(例えば、他のアジア成長国へ)、来ても質は低下する。日本人だって自国通貨を売りたくなるのだ(家計の円売り)。
- 人口オーナスの問題
人口問題の一番は、生産年齢人口(15-64歳)の相対的な減少であり、人口オーナス(重荷)と呼ぶ。平たくと言うと、福祉のお世話になりたい人ばかりが増え、それを担う余裕のある人が減ることだ。その反対が人口ボーナス。
その結果、人手不足、社会保障制度の持続不全(例、年金不足や介護の人手不足)、インフラの維持不全になる。人手不足は、民間だけでなく教員や地方公務員、さらには警察や自衛官にも及ぶが賃金インフレももたらす。それらをお金で解決しようとしても、既に日本は財政赤字が巨額なので難しい(通貨安になる)。
扶養負担の度合いとして最も分かりやすいのは、一人の老人を何人の現役が支えるかという値、潜在扶養指数という。生産年齢人口÷老年人口で求める(別式もあるが社人研はこれを使う)。
それだと、2020年で 2.1人、70 年に1.3 人となる。大勢で担ぐお神輿型から三人の騎馬戦を経て、今は二人であることに驚くが、50年後はほぼ「おんぶ」、ロボットスーツの出番になりそうだ。この指標は次記事で市町村別に出した。
さて、70年の総人口は9人に1人が外国人との推計だが、外国人のみの数表は無かった。そこで、Excelで公開されていた表から逆算したら、(当然だが)外国人は若い人が多く、生産年齢の15%になる。つまり6人に1人、多い街なら3人に1人かもしれないし、通勤電車の風景がそうなるのかもしれない。
しかし、本当にそんな光景に、この国が染まるのだろうか?
本当に、人手不足を外国人に依存する覚悟が日本人にあるだろうか?
※ 人口大逆転 チャールズ・グッドハート (著) 日経BP
つづく
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